
マンガは読ませないほうがいいでしょうか?
マンガはエンタメであり、勉強には関係ないものであり、出来るだけ読まないほうがいいというイメージがあると思います。マンガなんかより「本を読まなければダメだ」という意見の方も多いでしょう。
確かに、マンガばかり読んでいて全く勉強しない、目が悪くなる、過激で暴虐的描写のあるマンガの存在などのデメリットもあります。
いったいマンガとどのように付き合わせればいいでしょうか?
私はマンガ擁護派です。
いいマンガを選び、制限時間を守り、暗いところで読まないなど気をつけるべきことはありますが、おおいに読んでいいと考えています。
そのそも本とマンガは別のメディアです。似ていても自転車と自動車、テレビと映画に違いがあって使い分けるように、本とマンガは別であるという考えです。つまり用途が違うため、マンガと本のどちらがいいか、と比べること自体ナンセンスという意見です。
フランスでは、マンガ(バンド・デシネ)を第9の芸術としているそうです。
もちろん本を読むよりマンガを読むべきだというつもりはありません。本を読むにこしたことはありません。その前提の上で、なぜマンガを読んだ方がいいと考えるのかを書いてみたいと思います。
1. 漢字や言語表現に慣れることができる
全く本を読まない子がいたとします。いくら本を読むように言ってもなかなか読まないとします。
もしそうであればマンガだけでも読むといいでしょう。
マンガとはいえ文字を読みます。全く読まないよりは文字に親しむことができます。1冊あたり、だいたい本の4分の1程度の文字数です。しかし20冊読んだら、1冊本を読む文字数の5倍の読書量です。
さらに、何度も読んでいれば出てくる漢字の読み方なども覚えてしまうことでしょう。
例えば小4のうちの子などは「鬼滅の刃」を読む中で、”水面斬り”、”霹靂一閃”などの難しい漢字を読めるようになっています。
2. イメージ化の練習になる
本を読むことのメリットの一つは、文章から想像を膨らませるイメージ化の力がつくことです。
しかし本ほどではないですが、マンガでもイメージ化の練習にはなります。コマとコマ、絵と絵の間を補う必要があるからです。
3. ストーリー性を身につけられる
いいマンガであれば、いいストーリー構成で書かれています。
「OnePiece」などを読んでいると、最初の頃に出てきた伏線をあとで回収するというようなことがたくさん出てきます。さまざまな神話を勉強し、さまざまな知識の背景があって構成されている壮大なスケールの物語です。
何度も読む中で自然といいストーリー構成が身につくと考えます。
4. 知識も得られる
本ほどは情報量が多くないですが、いいマンガからはさまざまな知識を知ることができます。
「ドクターストーン」というマンガがあります。
その中では、例えば砂鉄を鉄にする製鉄の工程が描かれています。1500度に熱し、酸化されている砂鉄から酸素を取り除く工程です。中学の理科では「還元反応」と習います。
またヤマト王権は、鉄を得るために朝鮮半島とのつながりを強め、各地の豪族を支配し強大になっていきました。今は何気なく使われている鉄ですが、その時代どれだけ重要だったのか中学の歴史で学びます。
「ドクターストーン」から鉄の有用性、製鉄の方法やその工程の大変さが実感をもって理解できるのです。
5. 概要をつかむのにいい
当然のことながら、本に比べマンガは非常にわかりやすいです。
新しい分野の勉強をする前に漫画版を読んでおくと全体像がつかめます。その後本を読めば内容を理解しやすくなります。たとえ大人であっても、漫画で概要をつかんでから本を読むのは非常にいいやり方と思います。
6. 他人の感情を知る
最近は昔の漫画に比べ勧善懲悪モノが少ない気がします。
「鬼滅の刃」などでは、人食いオニという悪者であっても、そうなってしまう理由や背景があるのだ、ということを生い立ちからしっかりと描写するのです。
他人の痛みを知ることは、他人に優しくなることにつながります。それは自分に対しても優しくなることにつながってきます。自分にオッケーを出すことは自己肯定感を高めるためにとても重要と考えます。
7. 価値観や道徳性を学ぶ
実はマンガのメリットとして私が最も価値をおくのは、価値観や道徳性を学べる点です。もちろんいいマンガであることが前提です。
例えば「宇宙兄弟」というマンガがあります。私の好きなマンガの一つです。
「宇宙兄弟」の良さはいろいろあります。例えば、さまざまな困難に直面した時に、主人公がどのように立ち向かうかが描写されています。
ヒビトが月面でクレーターに落ちた同僚を助ける際、どのように考え、どのように行動するか?
月行きが絶望的になる中でムッタが取った行動は?
SNSで心ない誹謗中傷を受け、ALSの試験の継続が絶望的になる中でせりかはどう考え、どう行動したか?
誰でも人生でたびたび訪れる逆境において、どのように考えどのようにふるまうのか? 何も問題が起こっていない小学生・中学生の時点で、その問題への取り組み方や考え方を家庭や学校で事前に学べることは非常に少ないと考えます。もし伝えたとしても、実感を持って理解してもらうことは困難です。
子供が大きくなった時に何かのトラブルに巻き込まれたり、どうしようもない逆境に直面することはあるでしょう。
その際、親御さんがそばにいればまだ助けてあげられますが、そうでなかったとき、そして周りに助けを求められる人がいなかったとき、どうすればいいでしょうか?
「こういう時は誰かに助けを求めるのだ」という感覚すらない、何か拠り所となるものがないと、本当に困窮することになるかもしれません。
私は塾を始める前は20年の産業界での仕事人生の中で、複雑な状況でにっちもさっちもいかず心が折れそうになったことが何度もありました。しかしそんなとき思い出したのが漫画の登場人物の言葉でした。例えば以下のような。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」ー安西監督ー
これからの時代に備えて
ここ数年で目に見えない未知の脅威に対して人類がどれだけ脆弱かというのが明らかになりました。
このような未知の脅威や大きな変化に直面した時に生きてくるのは、知識や情報ではなくそれらを使いこなす知恵ではないでしょうか?
そして普遍的に通用する考え方や価値観、フィロソフィでしょう。
また、AI時代はむしろ計算力や論理、情報処理力ではなく、”遊び”や"エンタメ""心や感情"がクローズアップされてくる時代と思います。
漫画だから、と毛嫌いすることなく、いろいろなものから貪欲に学べたらいいのではないかとあらためて感じています。
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