新しい資本主義について首相「説明バージョンアップ」

「新しい資本主義」の意味がわからないという声が内外で多い中、岸田首相のご説明がバージョンアップされたと思います。場所がロンドン・シティという外国人狙いも良かったです。

一方で、マスメディアにおける新しい資本主義の「カバレッジのバージョンアップ」も求めたいです。新しい資本主義実現会議に参加しているメンバーとして、メディアやコメンテーターが焦点を当ててくれない大事な要があると思っています。

首相は文藝春秋2月号の「新しい資本主義グランドデザイン」寄稿でも示されています。

「 市場の失敗がもたらす外部不経済を是正する仕組みを 、成長戦略と分配戦略の両面から 、資本主義の中に埋め込め  資本主義がもたらす便益を最大化すべく 、新しい資本主義を提唱していきます 。」

今回の講演でも、資本主義にバージョンアップが必要な理由は以下の現代的な課題を解決するためであると、はっきり表現されました。

「1つは格差の拡大、地球温暖化問題、都市問題などの外部不経済の問題だ。グローバル資本主義は成長をけん引し人々を豊かにした。功績は正当に評価されるべきだが負の側面ももたらした。」

キーワードは「外部不経済」です。今までの資本主義・資本市場が軽視してきた(なぜなら簡単なモデルや説明が求められる中、複雑化が増すから)「外部不経済」に光を当てて、その解決を資本主義に求めることです。ここに、カバレッジの焦点をもっと当てるべきだと思います。なぜなら、これを実現できれば、それは「新しい」資本主義と胸を張って言えるからです。

この外部不経済の課題解決の一つに「インパクト投資」があります。環境的・社会的インパクトを意図としながら、経済的リターンも求める投資です。私のご先祖様が唱えた「論語と算盤」の現代意義であります。

この投資のカギは「意図」です。経済的リターンのオマケで環境や社会に良いことをしてますね~というマーケティング的なワォシングではなく、課題解決を主としていることです。

そして、どのように「意図」を表明できるかというと、それはインパクトのメジャーメント(測定)です。目標設定のためにメジャーメントをしていないインパクト・ファンドはフェイクと言っても良いでしょう。

インパクトの測定、ターゲットの設定は「ポストESG」とも言われ、企業の非財務的な人的資本など「見えない価値」の可視化へにもつながる概念で、私から新しい資本主義実現会議で紹介しています。今年の2月には内閣府の下で「非財務情報可視化研究会」が発足しています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_konkyo.pdf

また、グローバル展開するインパクト投資を官民連携で組成すべきと実現会議で何回か提案しており、4月に開催された第5回と第6回では「外部不経済の是正と経済成長を目指す」投資として、アフリカ向けの官民連携のインパクトファンドの組成を今年のTICAD8(アフリカ開発会議)で発表できることが重要だと考えています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai5/shiryou6.pdf

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai6/shiryou7.pdf

岸田総理は今回の訪英中の講演で下記を明言していただきました。

「「or」ではなく「and」でつなぎ官民連携で新たな資本主義をつくっていく。官はこれまで以上に民の力を最大限引き出すべく行動し、これまで官の領域とされてきた社会課題の解決に民の力を大いに発揮してもらう。」

渋沢栄一は、「か」ではなく、論語「と」算盤を唱えました。この「と」の力によって、社会変革を起こすために、資本主義の原点である「合本主義」を日本へ導入したのです。現在の資本主義の「バージョンアップ」も同様に、社会変革を起こすことを目指すべき、と思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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