企業の「粘土層」に激震が走る?

ちょっと驚いたニュースでした。記事にも指摘されているとおり、問題や経営不振があった企業に外国人経営者が抜擢されたケースと異なるからです。日本企業の名門でも、もはや内部から経営トップを育てることができないのかという嘆きもあったかもしれません。

しかし、これから10年を見据えて、企業の新陳代謝を高めるという側面から極めて興味深い長期戦略に腹を決めたと思いました。

私は以前から思っていることがあります。たった3つの言葉を使うことをこれから絶対禁止すれば、日本の企業(官庁、大学、全ての組織を含む)は今後の10年で、かなり良い状態になっている。

①「前例がない」 10年の組織の状態を考えたときに、今から前例をつくることが不可欠ではないでしょうか。

②(自分は良いと思ってるけど・・)「組織に通らない」 良いと思っているのであれば、組織に通すことが自分の仕事ではないでしょうか。

そして、③「誰が責任とるんだ」 それは上司でしょう。経営者でしょう。

この3つの言葉に、自分の組織で「あるある」と思った読者が多いのではないでしょうか。組織の様々な層で聞こえてくる言葉だと思います。

また、この言葉が聞こえてくる回数が特に階層があるかもしれないと推測しています。それは、会社で一番、人数が厚い層。多くの大企業の場合、これは「バブル入社」でありましょう。現在、50代前半の年齢の層です。

日本の終身雇用、年功序列の慣習でバブル入社組は、もうちょっとこのまま行けば、部長、本部長、役員が見えているはずです。ならば、いまのままで良い。ここでつまづいたら、今まで会社に勤めた年月をドブに捨てることになる。つまり、①②③の言葉をもっとも発しやすい層です。

もちろん、これは一般論です。有能で優秀なバブル入社の方々はたくさんいます。

ただ、関西のオーナー系大企業の経営トップと雑談しているときに、この話をしたところ、「あ~ わかるわかる。粘土層ね」とおっしゃいました。

粘土層ですか?と聞き直したところ、「上から水を注いでも下へと流れない。下からも水が沸き上がってこない」というご説明をいただきました。名言です。

このような粘土層を抱えている企業として更に厄介なことは、年齢的にも給料が最も高いということもあります。

しかし。これから10年先。SDGsが達成を目指す2030年。日本企業の風景は大きく変わっているでしょう。現在の「粘土層」の数名は会社に残って役員や経営トップになっているでしょう。そして、他は会社から去っています。

ということは、社内の水通しが良くなっているだけではなく、人件費の構成を大きく改善します。

このような未来を見据えて、現在から様々な側面で働きかけている日本企業はかなり良い状態になっているはずです。今から人事面等で色々と仕掛ける会社と放念する会社の10年後の状態の格差はかなり拡大しているのではないでしょうか。

ギルソン氏の社長任命は社内の「粘土層」に激震を送ったはずです。同氏は①前例をつくるために就任すると思っているでしょう。様々な変革を②社内に通すために就任すると思っているでしょう。そして、何かあった場合、③自分が責任とるという心構えで就任されるでしょう。

三菱ケミカルの10年後がどうなっているのか。楽しみが増えました。

#日経COMEMO #NIKKEI

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