アフターコロナ時代を導くパーパスを示す企業

7月中旬にベネッセ・アートサイト直島から『今、瀬戸内から宇沢弘文 ~自然・アートから考える社会的共通資本~』というオンラインフォーラムで総合モデレーターを務めました。

宇沢弘文先生はノベール経済賞に最も近い日本人と云われており、米国から帰国した1968年以降は、日本の高度成長時代の様々な問題に着目され「社会的共通資本」論を展開されています。

「人間の心があって初めて経済は動いていく。」(自然のように)「豊かな社会に欠かせないものは金銭に換算できないし、ましてや利益を貪る対象としてはならない。」という宇沢先生のお考えは30~50年ぐらい早かったと言え、やっと世の中が追い付いてきたようです。

ダノン社は、2019年の法改正により施行された ‘Entreprise à Mission’ -purpose driven company (使命を果たす会社)へと定款変更が6月の株主総会で99%の株主の賛同によって認められました。「定款にESG(環境・社会・企業統治)に関連する新たな4つの目標を盛り込んだ」とCEOは胸を張っています。

シェアホルダー(株主)資本主義からステークホルダー資本主義を意識した素晴らしい動きです。

ただ、スイスのネッスルは2008年から定款で「事業パーパスは、長期的な持続可能な価値創造」と示してありますので、正確にいうとダノンは国家の新しい法律に基づいた初上場企業ということでありましょう。

また、日本では‘Entreprise à Mission’ の様な会社法はありませんが、コモンズ30ファンドの設定来からの投資先であるエーザイは定款で「本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア (hhc) 企業をめざす。」と示しています。

確かなことは、世の中の企業の「存在意義」が問われる時代になっており、それを応えようとしている先駆者は、定款という会社の「憲法」から改正しています。

この「存在意義」を英語で表現しますと、従来では「ミッション」という言葉が一般的でした。ただ、最近では大中小と企業の規模に関わらず、先駆者は「パーパス」という言葉が使われている傾向が目立ってきました。

では、「ミッション」と「パーパス」の違いは何か。数年前に見つけたハーバード・ビジネス・レビューの記事がわかりやすく特徴を捉えていました。

「ミッション」とはWhat We Do
「パーパス」とはWhy We Do

つまり、ミッションとは「上」から与えられたものを忠実に果たすこと。それが、宗教における神であろうと、軍隊における上層部であろうと、企業における経営者・株主であると。

一方、パーパスは、経営者・従業員の自分コトになります。なぜ、そもそも自分がここで働いているんだっけという問いに応えることです。

ボストン コンサルティング グループ編著の『BCG 次の10年で勝つ経営』(日本経済新聞 出版)がわかりやすく、パーパスとミッション(そして、ビジョンやバリューなど)の違いを説明していましたので一読ください。

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アフターコロナの時代となる2030年までの次の10年で勝つ経営は、パーパスをしっかりと定めることが大事。そのパーパスとは、良き社会インパクト「と」経済的リターンの両立。つまり、「日本の資本主義の父」と云われた渋沢栄一の『論語と算盤』の現代意義です。そんな時代に入っています。


#COMEMO #NIKKEI

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