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神様(川上弘美)

神様(川上弘美)

川上さんの本は「センセイの鞄」を最初に読んで、綺麗な言葉と文章にすっかり魅了されて、そこから本を読む頻度がぐっと上がったように思う。

他の本も読んでみると、川上さんの本はどちらかというと現実離れしたおとぎ話のような世界(川上さん曰く「うそ」の国)が多い。
だけど、そこは現実との境目が淡くて、気づけばそこにいるように、すっと連れて行ってくれる。
だから川上さんの「うそ」の国は、とても居心地が良い。

『星の光は昔の光』

かぜ?と聞くと、
「違うよ、少し泣いてるんだよ」えび男くんは答えた。

_______「昔の光はあったかいけど、いまはもうないものの光でしょ。
いくら昔の光が届いてもその光は終わった光なんだ。だから、ぼくは泣いたのさ」と、しっかりした声で言った。

『春立つ』

はあ。好きだったんですね。その、男の人っていうか、あの。

「雪が溶けるころにいなくなっちゃう、そういう存在のものをね」

存在。

「そう、存在」

その、存在を、カナエさんは、好きだったんですか。

「まあねえ、そのときはね」
カナエさんは少しの間目をつぶった。

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