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【詩】your room(春は廃墟のように)
――ここはどういう村なの?
この地上で最後の村だよ、と真実を織り交ぜて答えた。
部屋の隅に、積まれていた本を数えることも、
気が付いたらやめてしまっていた。
紅茶色の木材に映える陽のひかりを
簡単に想起できるのに、
ガラスの窓の向こうは、真夜中がふくらんで、
風船みたいに墨色がくすんでいる。
燃焼を待つ写真のように、
真っ暗な、ガラスの窓に映る、
空洞を抱えられなくなった色彩が、
破裂した。
天使だったじゃないか。
花束嫌いの、大きな翼の、丁寧な珈琲の、
つけっぱなしのラジオの、古びたギターの、
心音の、
春は廃墟のように
ふれられない雨粒の歩幅で、フローリングを叩く足跡は揺れて、
未明のひかりが淡い水色のカーテンを透過して、
狭い部屋を海底に沈めても、
明滅する灯台と霞んで、ずっと、鳴っている。
Base Ball Bear『天使だったじゃないか』によせて
○引用
フリオ・ホセ・オルドバス「来訪者と幻と」-『天使のいる廃墟』、白井貴子訳、p128、東京創元社、2020年
(https://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488011048)
絵:トゥールーズ=ロートレック ≪倦怠≫
(けむり)
○読書会の様子はこちら
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