愛は幸せの味がする。
社会人になって初めて、誰かにお弁当を持たせてもらった。
私がまだ布団でもぞもぞしている間、
キッチンでは恋人が調理を始めていた。
お弁当を作り終わり、二度寝を試みるのと交代で、アラームに起こされる私。
その日の朝ご飯は、お弁当の残りで
いつもテキトーにすましている私からすれば
豪華な朝食であった。
「お弁当ありがとう」
確かな重さのあるお弁当箱を、通勤かばんに入れる。
大切に、ワクワクしながら。
午前の勤務は、お昼が待ち遠しくて仕方がなかった。
そういう日に限って電話当番だったりする。
13時過ぎ、食堂で嬉々としてお弁当箱を開ける。
チャーシュー、小松菜のおひたし、だし巻き卵、きんぴらレンコン、おかかと高菜。
おいしい、嬉しい。しあわせお昼ごはん。
食堂に集う人々に自慢して回りたかったが、グッとこらえ静かに箸をすすめる。
恋人にめちゃくちゃ感謝するとともに、
高校生時代に毎日お弁当を作ってくれた祖母に思いをはせた。
ひしひしと感じる、愛。
噛みしめてます、今。
愛は幸せの味がする。
社会人デビュー当初に百均で購入したお弁当箱は
小さく見えるが、食べきればお腹はぱんぱんだ。
空っぽになったお弁当箱に、ごちそうさまでしたと手を合わせる。
新しいのを買おうかなあ、と考えながら
お弁当箱を洗うその時間まで、幸せの後味がした。
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