貧乏怖い

祖母から電話がかかってきた。

数年前に、失恋して大泣きしながら電話をかけて以来
毎週電話をかけてくれるようになった。

たわいもない話をして、ほんの数分で電話はおわる。
今日もそうだろうと、思っていた。

「ばあちゃんの、病院行くのにお金がないんで、ちょっと貸してもらえんかのう」
おばあちゃんは、とても申し訳なさそうに、言った。
声が震えているようだった。
私は悲しくなった。苦しくなった。

「〇〇(私)にばかり、頼ってしもうて情けないけど、薬は飲んどかんといかんけんの…」

お金がなくて、病院に行けない。そんな人が、こんな身近にいるなんて。

いや、実家が貧乏だということはずっと前から分かっていた。
学生の時代から、ずっと。

買い物をするお金がないからと、私のお小遣いを貸したときも
弟の学費の支払いができないからお金を貸してくれと頼まれた時も
生活費がないからいくらか振り込んでと言われた時も
あった。わかっていた。

でもここまでギリギリだとは思わなかった。
ショックだった。

「いいよ、振込でいいよね、月曜日でいい?」
何でもないように私は応えた。
申し訳なく思わないで欲しかった。
おばあちゃんには長生きしてほしい。大好きだから。

返ってこないお金と、毎年の学費の振込に納得がいかず
「お父さんいつ返してくれるの?いくら借りたかちゃんと覚えてるの?」
って怒ったくせにね。

浪費しているわけでも、働いていないわけでもないのに、貧乏で
私を苦しめようとしているわけでもない。
余計に辛かった。

頑張って働いているのに、貧乏なのだ。どうしようもない。

私は進学を考えなかった。
高卒で就職し、働きだして7年目。
地方OLの私の月の手取りは約10万円だ。
家族を、助けられるほどではない。
私では助けてあげられない。

なんてことを書きつつ、私は私の生活を楽しんでしまっている。
今日は眉サロンに行ったし、360円のエッグサンドを食べた。

おばあちゃんとお父さんは、もやしとウインナーの炒め物で過ごしているらしいのに。

本当に助けたいと思っているんだったら、私は…。
私は、自分の人生を楽しんでいたらいけない気がする。

「いくらくらい、貸してもらえるかの、15日には年金が振り込まれるけん
 必ず返すけんの」
「…いいよ、いくらでも、いくら必要なの?」
「じゃあ、3万円くらい振り込んでもらえるかの」
「…うん、じゃあ月曜日に振り込むね」
「本当に申し訳ないわい、ありがとう」

おばあちゃんそんな泣きそうな声でお願いしないでよ。
本気で助けようとできなくてごめん。
いつ返ってくるんだろうって、いつまでお金の心配しなきゃいけないんだろうって思ってるのに
申し訳ないと思わないでなんておかしいよね。
苦しいな。

3万円じゃあ、みかん代が入るまで生活できないでしょう。
私もたくさんお金があるわけじゃないし、口座からお金が減ることにすごく不安になるけど、20万円くらいは振り込んだほうがいいかな。
今預金残高はいくらだっけ。

お金がないということは、私にとってはものすごく不安なことだ。
もう貧乏になりたくない。
怖い、ずっと不安だ。
大金持ちになりたいわけじゃない、贅沢な生活を毎日送りたいわけじゃない、
ただ、お金のことに不安を覚えず、安心して生活を送りたい。

お金がなくて、生きていけなくなったらどうしようっていう不安がある。
私が自分で稼げなくなったら、頼る場所はどこにもない。

貧乏怖い。

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