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「フランス流“愛のカタチ”」


「愛」の国フランスと言われていますが、今回はそんなフランス人の愛の形についてお話します。

そもそもフランス人は日本人と違って人の“年齢”や“職業”をあまり気にしません。
若い女性が大好きな日本の男性とは違って、フランスではむしろある程度の年齢に達している女性の方が魅力的とさえ言われているのです。
という事からフランスの女性は幾つになっても恋愛を楽しむ事が出来る。
“自由でいたい”という思いがやはりフランス人にはあるのでしょうか?
そういう思いがあるのかどうかは分かりませんが、フランスには結婚という形式は取らなくても、パートナーとの共同生活を営み、それでいて結婚と同じ権利を得られるというお得感満載(?)のPACS(パックス)という制度が存在しています。

ざっくり言うとこのPACSという制度は
◇ 相手の苗字になるわけではない
◇ 市役所の管轄ではなく裁判所が管轄となる(この点が同棲とは違っています)
◇ 別れる時は片方が申し出れば解消となる(普通のお付き合いと一緒です)
◇ 結婚のように“永遠の愛”を誓い合うというわけではない
これを見る限り、多くの人がイメージするだろう結婚=ロマンティックという感じは全くしません。あくまでもPACSは形式のみと感じてしまいます。

ではなぜこんな制度が生まれたのでしょう?フランス人が合理的だからでしょうか?
 最初この制度が出来たのはフランスでも多い同性カップルの権利を拡大するためだったようですが、現在この制度を利用しているのは主に男女のカップルです。
フランスでは離婚する時には弁護士を雇わなければならないため多額の費用がかかります。
その上で裁判となると結構な月日もかかる。そのため一度、結婚という形をとってしまうともう後戻りは出来ません。
でも、好きになった人とカップル=夫婦という形もとりたい・・・そんないいとこどりから生まれた制度と言ってもいいかもしれません。
最初はPACSから入ってみてうまく行きそうだったら結婚する。
実際にそんなカップルもいます。

私の友人であるマリーヌとエリックもこのPACSカップル。
なぜ普通の結婚という形式ではなくこのPACSを選んだのか、彼らに聞いたことがありました。
彼らは「まずは一緒に住んでみてお互いの必要性や相性を確認して、入れるんだったら籍を入れたい。今は愛し合っているけれどもこれから先は他に好きな人が出来てしまうかもしれない。お互い仕事を持ってもいるので縛られることなく自由に生きたいから」という答えでした。
彼らにも普通のカップルのように紆余曲折があるようですが、今現在のところはPACSカップルとしてうまくやっているようです。

ただず~っと結婚しないでPACSのままというカップルも存在します。
このマリーヌ達のように先の事は考えずに「今」の事だけを考えて、好きだから一緒にいる。つまりPACSは“結婚”の前段階の「婚約」とも違うのです。
又“結婚”という制度はキリスト教が基盤になっている。
自分はキリスト教徒ではないために結婚をしたくないというフランス人もいるようです。

フランスの確定申告等の書類では「パクセPACSE」(独身世帯ではない)かどうかが問題視されることがあるため、このPACSはちゃんとしたオフィシャルな関係と言えます。

ではフランス人はこのお手軽な(笑)PACSを選ぶ人が多いのでしょうか。
・・・とばかりも言えないそうで、普通に結婚という形式をとるカップルは大勢います。
調べてみたところフランス人は意外や意外70%以上のカップルが普通の結婚という形式をとっている事が分かりました。
その理由として
「結婚はやっぱり一種のけじめ」 「家族という選択をしたことにより、周囲にもそれを知らせる必要がある」 「PACSでもいいけど歳をとった時の遺族年金の事を考えるとやはりちゃんとした形式をとっておきたい」
そして一度でも結婚したことのある男性・女性は一回は誰かから選ばれた人であり、例え離婚したとしても過去にはそういう人がお互いにいたということになります。
「独身貴族」などと言う言葉はフランスでは通用しないのかもしれません。

私の知り合いのフランス人。奥様は日本人なのですが、最初、彼の生活が落ち着くまでPACSのような形を取ろうとしていました。ただ彼女の方が異国の地フランスで暮らしているという不安からか、PACSという不安定な形よりもしっかりとした結婚という形式を望んだと言うことでした。
「ちゃんと結婚もしないでPACSのままなんて本当の“愛”ではないのよ」と彼女のご両親にも言われたことも大きかったかもしれません。
やはりどういう形式をとるかはその人、その人の価値観なんでしょう。
お互いがフランス人同士だとこのPACSもうまくいく可能性がありますが、彼らのカップルのように異国人同士だと日本にはない制度だけに理解し実践していくのは難しいのかもしれません。パートナーとの十分な話し合いが必要不可欠となってきます。
自分がそれを取り入れていくのであれば、事前にこの制度のメリット・デメリットをよく調べて不安なことは相手に質問してみる。これは大事な事と言えそうです。

愛の国自由の国フランスでもPACS婚だと貞節が感じられない。普通の結婚だと生涯をかけて一人の人と寄り添っていく=貞節が感じられる。
なんとも堅実な答えではないでしょうか!

フランス人がこんなにも堅実だとは思ってもいなかったのが正直な感想です。

ではこのPACS婚をしたカップルに子供ができてしまった場合はどうなるのでしょう?
なんと驚くなかれフランスの子供たちの半数以上が“婚外子”なんだそうです!多くの子供がそうなため、日本で騒がれるように婚外子の子供でも「それがなにか?」みたいな感じでそれほど注目されることにはならないようです。つまり、子どもの権利は父親の認知があれば、PACSだろうと同棲だろうと普通の結婚の場合となんら変わりはない。例えば最初はPACS婚だったカップルに子供ができた場合、その子供は婚外子となりますが、PACSを経て結婚という法律婚をした場合、その子供は婚外子から婚内子へとチェンジするんだそう。婚外子→婚内子の数も相当数いる事になります。

あのフランス元大統領のオランド氏。フランス国立行政学院在学中に知り合った“セゴレーヌ・ロワイヤル氏”と30年近く事実婚状態でした。その間に4人もの子供をもうけたのですが、彼らはずっと婚外子のままなんでしょう。
私自身もシングルですが、このPACSという形式は以前は興味がありました。
なぜなら、結婚してしまうとつい胡坐をかいてしまい、自分自身を磨くという事を怠ったりしてしまいそうに思ったから。

PACSと言ういつどうなるかわからない関係であれば、相手に依存することなく自立した自分自身を持つことで、ある意味、緊張感のある関係でいられるのではないか・・・と思っていました。
でもこれを実行するには自分自身が色々な意味でしっかりと自立をしていないと成り立ちません。それも長い人生を生きていくうえで大変かなと最近では思うようになりました。

フランス人は愛から愛へと自由に飛び回る。(ように思う)だから縛られることのないPACS婚なんてものが存在し、多くのフランス人が法律には惑わされたくないんだなどという考えは見事に吹っ飛んでしまいました。
愛の国・個人主義の国であっても、そこには恐ろしく堅実なフランス人たちの結婚観がありました。

私個人の感想としては、フランス人(特に女性)にはパートナーを頼ることなくいつでも嫌になったらポイっと捨ててしまうくらいの、幾つになっても自立しているマダムでいて欲しいと思います。
だからこそ自分もオシャレに気を使い、お肌の手入れをし、魅力的でいるように努力をする・・・そんなアクティブなマダムであって欲しい。“自分は自分“をしっかりと持っていて欲しい。

でも残念ながらフランス人も特別ではなかったようです。

どんな人種であっても何か「証」=確固たる人との繋がりのようなものが欲しいのでしょうか。
最後にシモーヌ・ド・ボーヴォワールの沢山ある金言集から一つの言葉を。
『結婚は個人を孤独から救い、彼らの家庭と子供を与えて空間の中に安定させる。生存の決定的な目的遂行である』

#コラム #フランス #フランス人 #愛のカタチ #恋愛

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