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こりゃ楽しい!音と映像、そして自分の身体が同期する体験型アートを見に札幌まで行ってきた

吾輩は乗り物が苦手である。
特に苦手なのは飛行機だ。まあこないだのフェリーもキツかったが。
世界中をさすらう、「さすらいプログラマー」である吾輩が、飛行機が嫌いだとか苦手だとかいうと「嘘つけ」と言われるのだが、本当に苦手である。

そもそも飛行機が吾輩を攻撃してくるのだ。
ある時期から、飛行機の着陸時に機体が降下を始めると強烈に眼球が飛び出すほど痛くなる現象に悩まされ始めた。

何回かに一回だったのが、だんだん毎回になり、「今度こそ俺は片眼を喪うのか」と恐怖しながら、世界中をさすらっていたのである。さすらいは犠牲なしでは成り立たないのだ。

ある時、友達がJALの客室乗務員と結婚して、彼女に「実はこういう悩みがあるんだ」と相談すると、「それは副鼻腔炎ね。なる人いるよ」と初めて病名を認定された。

「飴なめれば大丈夫よ」

なんと!
飛行機でやたらと客室乗務員がアメをくれるのは、大坂のオバチャン的なやつではなくて、こういう症状の対策の意味もあったのか!!

それから、飛行機に乗る時には必ず飴を持っていくことにしたが、それにしても眼球が痛くなってから飴を舐めるというのは避けたい。かといって、眼球が痛くもないのに飴を舐めるということは、糖尿病リスクが高まる。

それでまあ国内線は毎回のように眼球が痛くなるのを待ってから飴を舐めていたんだけど、今回は本当に地獄のようだった。朝早く出たので頭がはっきりしておらず、うっかり寝てしまっていた。

すると寝ている間に眼球がぎゅーギューぎゅーーーーっと締め付けられるような激痛が走って目覚め、慌ててアメを口に放り込んだ。

飛行機が俺を殺しにくるのである。俺が飛行機はできれば避けたいと言った理由をご理解いただきたい。

そんな思いをしてまで今回飛行機に乗った理由は、落合陽一先生の新作を見にいくためだ。

千歳空港から電車に乗り換える。IVSに行くのを辞めてから10年くらい経つ。この電車に乗るのも久しぶりだ。まあそのほかにも夕張映画祭とか行ったりしてるから厳密にはそんなに久しぶりでもないけど、少なくともコロナ前までしか飛行機に乗ってない。

新札幌駅に13時くらいに着いて、落合先生の展示を探すと、そこには衝撃的な事実が書かれていた。

絶望とはこういうことを言うのだろうか

17:00-23:00の展示ってなんだよ!!!
あと4時間、どこで何をして過ごせと言うのだ。

しかし、落合先生は何も悪くないのである。ちゃんと調べて計画を立てて来なかった俺が100%悪い。

本当は帰りは電車で帰ろうと思って、函館のホテルを予約してあった。
1時間くらい落合先生の作品を見て、そのまま特急北斗で函館まで移動するつもりだった。なんなら函館でうまい寿司でも夕飯に食べるか、くらいに思っていたのだがこれで全ての予定が狂った。

まあしかし、どう考えても悪いのは100%予定を立てる時に何も考えてなかった俺だ。

流石の俺も自分の無能さに絶句せざるを得なかった。
仕方ないから、札幌駅に移動して、石井裕先生の母校である北海道大学でも見物するか、と思ったりして札幌駅に移動する。

途中、すごく綺麗な虹が見えた。

虹って凄いよなー

札幌駅に到着すると、雨が降っていた。
ただでさえ軽装で来てしまって北海道の空気が冷たいのに、雨降ってる中わざわざ北大に行く必要があるのか?

しかも俺、北大、昔も来たことあるし!

途中で馬鹿馬鹿しくなって、札幌名物の地下街をぐるぐる散歩することにした。

つくづく、さすらいとは暇との戦いだと思い知らされる。まあ計画立ててから来るべきだったんだろうけど、俺はワルの中では段取りの悪いワルなのでこの性格はどうも直りそうにない。

段取りのいいワルと段取りの悪いワルの違いについて知りたい人はこちら↓

しかし、一時間くらいしか暇を潰せなかった。
もうやることないしカフェでエンドゲームでトニー・スタークがやりたくないのにスパイダーマンのことを思い出してタイムマシンを発明しちゃうシーンを見返して一人で涙を流した。

それから新札幌に戻るかあ、と思って札幌駅に行くと、とんでもないものがあった。

まさかの駅弁自販機

吾輩は毎年京王百貨店で開催される全国有名駅弁大会には欠かさず参加する駅弁者エキベニストである。

しかし駅弁の自販機というのはついぞ見たことがなかった。というか、北海道は色々と東京で見たこともないものがある。

新札幌に戻って色々な施設をウロウロして時間を潰す。
コジマとビックカメラがまさかのコラボをしていた。

どういうこと?ライバルじゃないの?

しかもコジマのほうがロゴが大きい。
どういうことなんだ。

そしてようやく17時になったので落合先生の展示が・・・始まらねえ
直前までレースゲームのイベントをやっていて、その片付けがなかなか終わらないし、落合先生のタイコみたいなもののセッティングがなかなか決まらないらしく、17時をとっくに過ぎているのに全然始まらなかった。

最初は係員さんが太鼓を小さく叩いたりして画面が変化するのを確認している。これがなかなか終わらない。

スマホをちょこちょこいじって、太鼓をちょっと叩いて、またスマホをいじる。

「いつやれるんだよ」

時間潰してんのかな、と思ったらスマホの画面が見えた。LINEだ。
誰かとLINEをしてる。きっと手順の確認とかしてるのだろう。

それから30分くらい見てると「やりますか?」と聞かれた。「やりますやります」と二つ返事で答えて、ついに落合先生の最新作を体験することに。

「ちょっと調整が難しいんですが、手前の太鼓はよく反応します」

まあリアル展示あるあるだ。

「浮遊する追憶:重力の反転する音と機械」と名付けられたこの作品は、天井に大きく広がるモニターと、ボンゴのような太鼓を叩くと画面が変化するらしい。

やってみるとわかるが、これは結構楽しい

 落合作品とインタラクティブに体験できるぞ

ただこの太鼓、叩くのが異常に難しい。
うまくやるといい音が出るのだが、下手にやるとペシッペシッと音が出ない。あと、太鼓のくせに場所によって音階が変わるもんだから、ただの太鼓とはまた違う演奏の難しさがある。

適当に叩いていたら、だんだん面白くなってきて一心不乱に太鼓を叩く。普通のショッピングモールみたいなところの真ん中で太鼓を叩いているから、なんか人からも見られるしテンションも上がる。

高さが違う太鼓が三つあって、叩いていたら小さい女の子がやってきて「叩きたい」と言い出したのでセッションする。太鼓の音色にしたがって画面の動きがリアルタイムに変化する。すごい。凄いよこれは。超大画面でまさに自分が落合作品の一部になったかのような錯覚を覚える。

だんだんトランス状態になってくる

これ酒飲んでやったら最高だろうな
真のアートは、酒飲んで鑑賞した時に最大限の効果を発揮するものだ。

ジャズクラブで酒を飲むのは、それが真のアートの正しい鑑賞方法だからだ。

あーこれを叩くために苦手な飛行機も乗ったし、4時間の暇つぶしもできた。楽しいなー。楽しいじゃないか。落合陽一先生!

太鼓の下にマイクがある

仕組みは割とシンプルで、太鼓の音をマイクで拾って、それが画面にエフェクトとなって反映される。

この画面のエフェクトも、もはやメガデモ。さらっと凄いことをやってる。
河口洋一郎先生が切り開いたメディアアート、ジェネラティブアートの世界を継承し、生成AIと組み合わせて見事な融合を果たしている。そういえば河口洋一郎先生もタイコ使った作品作ってたな。

いつものような、説明を聞かないとさっぱり意味ナラティブがわからない落合作品に比べると、太鼓を叩けば楽しい音が出て、イケてる映像が切り替わるというシンプルな面白さがあるので説明がいらないし、子供でも大人でも楽しめる。すげえ、すげえよ落合先生。

問答無用で楽しい。本来だったら、多分天井のアレだけでも作品として成り立ってしまうはずだが、そこはさすがサービス精神の塊である落合陽一先生、ただ画面を出すだけではなく太鼓とのインタラクションでコンピュータでリアルタイム合成させるという、全く新しいカスタマージャーニーを作り出した。

これポイントはいくつかあって、まず相手が太鼓であること。
太鼓は、誰でも叩ける。

ここが重要ね。
だから大人でも子供でも参加できる。

次に、この太鼓は、実はメロディを奏でることもできる。
つまり上級者ならもっとイケてる使い方ができる。

さらに、この太鼓は、普段あまり使われない楽器である。
つまり、誰であってもこの太鼓とは初対面であるため、「上手い下手」の区別がない。もしもこれがストリートピアノやギターの形をしていたら、明らかに「上手い下手」がわかってしまうので楽しめる人は限られてしまう。少なくとも子供はやりたいと思わないだろう。

これだけ難しいことを、誰でも体験できるレベルにまで下げてデザインする。
なかなかできないよ。

要は、サントリーホールとかで上演する「変幻する音楽会」とかでは、「リアルタイムで映像のスイッチングやってエフェクトかけてるんですよー」とか壇上で落合先生が言っても、「まあどこかで人間がやってんだろうな」と勘ぐれてしまう。

しかしこの作品は100%、全自動。インタラクティブだから誤魔化しが効かない。そして、これが作れるんだったら、多分サントリーホールのやつも同じことやってるよなあ、と腹落ちする。

11/8まで新札幌BiViで公開中。無料。

いやーしかし
ここ数日、虚脱感というか、まあ疲れてたのよ、長岡主張とかで。
その話も明日書くけど、まあとにかく神経が参ってた。他にも色々、とにかくエモい話が一挙に押し寄せてきてどう対処すればいいのかわかんなくて困ってた。

でも天井に広がる落合陽一ワールドを見ながら

「落合先生も頑張ってるよなー 俺も頑張るかー」

と勇気をもらっていた。
こんな場所で、こんな凄いものをさりげなく展示する。
これに触れた子供が、AIがなんなのか、アートがなんなのか
たとえその時は分からなくても、何年も経った後で「あれはそういうことだったのか」とわかる日が来る。それが確実に、日本を前進させるだろう。

偉い。偉いよ。落合先生は。日本を変えてるよ。心底尊敬する。地道だけど着実に日本をいい方向に導こうとしているる。

それに引き換え俺は、なんか燻っちゃってるよ。
最近、特に事件らしい事件も起こしてないしな。昔はよく「事件を設計しろ」とか言ってたのになー。プレスリリースもなんも出してないし。

まあしかし、流石にこんな誰もいない場所の調整は、落合研かピクシーダストか、とにかくなんかスタッフがやってんだろうなー。お疲れ様です。

そんなことを呟いて俺は特急で函館に向かった。
飛行機には乗りたくないからだ。

函館に向かう途中、Facebookにこんな書き込みがあった。

自分でメンテしてるとか真面目すぎるだろ

落合先生
やりすぎだよ。やりすぎ。
誰か学生とか弟子とか
君のところにはいっぱいいるでしょ。やってくれる人が

自分でやってんのかよ。
お前は俺か。

つうか係員さんとLINEしてたの落合先生かよ。
どこまで真面目なんだ。
俺が行くとか一言も言ってなかったのに。

つまり落合陽一は、誰が見るとか見ないとかで手を抜くような半端な人間ではないのだ。

泣かせるなよ。
なんて凄い男なんだ、君は。
やらんだろ、自分で調整は。いや、それをやるのがアーティストなのか?
でもこれデバッグというより本当に微調整だよね?

本当に血の通った展示をしてるのか。
何度俺を驚かせてくれるんだ。

落合先生が基調講演を行うAIフェスティバル2024も11/8と9に開催。
って軽い宣伝の気持ちで書こうと思ったけど、もはやエモすぎて落合先生が基調講演で何を話してくれるのか期待しかない。

お陰様でチケットがめちゃくちゃ好調に売れてるらしいのでそろそろ終売するかも?