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LONDON CALLING ~凍える風の中で~

名盤

記念すべき初投稿で今回紹介するのは、UKパンクバンド・クラッシュの「LONDON CALLING」だ。おそらくロック好きならば誰しもが知る名盤中の名盤であり、自称音楽評論家が日々熱い議論を交わすインターネットで、今更私が語る必要も特段ないであろう。

日々ロックをひたすら愛聴する私だが、このアルバムには特別な思い出がある。ジョー・ストラマーの叫びは私の心に今でも酷く共鳴するのだ。

高校一年の冬、恥ずかしながら高校をクビになった。特別とんでもないことをやらかしたわけではないのだが、心底社会不適合者の私は、行きたい人のみが通う高等教育において、非常に不必要な存在であった。行かなければいけない小学校中学校とは違うのだ。ルールが守れず、周りの歩幅に合わせられない人間は必要ない。

3回目の停学明け、早速他人の陰部に消火器を乱射するなどの諸問題を起こした私に4回目の停学が待っているはずもなく、後日保護者同伴の会議にて退学(正確には自主退学勧告)が言い渡された。父は呆れてそそくさと帰り、母から20分ほど廊下で叱責され、生活主任からは「これから頑張ってくれ」と心にもないことを言われた。誰からの見送りもない校門を出た私は一人帰路についた。普段原付で通っていたが親と車で来たためその場にあるはずもない。バスか電車に乗るのが本来最善の選択だが、なんとなく私は歩いて帰ることにした。「LONDON CALLING」を聞きながら。

ひどく寒い日だった、時刻はすでに18時を回りあたりはすっかり暗くなっている。マフラーをきつく巻き一人ひたすら歩いた。自分が悪いなんてことは誰に言われることもなくわかっている。ただ言語化するのができない漠然とした不安と社会への反発心だけが心を駆け巡った。イヤホンから流れるクラッシュのメロディは私の眼光を何倍も鋭くし、いつもになく速足にさせた。
ジョーの叫びがまさに私の心を代弁するかのように鼓膜にこだましていた。勉強ができないわけじゃない、むしろできる方、高校も自慢ではないがそれなりの進学校だ。文学の素晴らしさは言うまでもなく、歴史なんかも大好きだった。友達もたくさんいたし、家族とも仲は良かった。しかし時に言いようのない孤独感に襲われる。そんな時は決まってロックンロールを流すのだ。いつだって海の向こうのロックスター達は私の味方だった。

突き抜ける様な凍える風に吹かれ、騒がしい街を睨み、湿った地面を踏みつけた。街灯は私だけを照らしているように感じた。
今も「LONDON CALLING」を聞けばあの日の帰り道を思い出す。
真冬の寒さの中、ジョーに代わりに叫んでもらったあの夜を。



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