なぜ今インパクトスタートアップが面白いのか?〜投資家から見るSHEの成長可能性〜【イベントレポート】
SHEは「学ぶ」と「働く」の循環型プラットフォーム構築に向け、総額18億円の資金調達を実施しました。単なる女性向けキャリアスクールの運営ではなく、社会課題を解決するインパクトスタートアップとして本格的に舵を切っていきます。
調達した資金はプロダクトを支えるCPO候補プロダクトマネージャーや戦略PRリード、BtoB新規事業責任者ほか、様々なポジションでの採用強化やプロダクト開発に充てる予定です。女性のキャリア課題を皮切りに、不均衡の是正に本気で取り組み続けていきます。
今回の資金調達を記念し、SHEは全3回の特別イベントを開催。第1回目は、出資いただいたMPower Partners Fund様・ANRI様をお招きしました。テーマは「なぜ今インパクトスタートアップが面白いのか?」。
どのような点でSHEに成長可能性を感じ、投資に至ったのかをはじめ、現在のスタートアップ市場を投資家の皆様はどう見ているのか伺いました。本記事ではイベントの一部をお届けします。資金調達を検討している方はもちろん、スタートアップへの転職を検討している方にとって、変化が目まぐるしい今を乗り越えるヒントが詰まっています。
登壇者紹介
MPower Partners Fund ゼネラルパートナー/キャシー松井さま
MPower Partners Fund パートナー/深澤優壽さま
ANRI ゼネラル・パートナー/河野純一郎さま
SHE株式会社/代表取締役CEO/COO 福田恵里
SHEの成長可能性は、予測ではなく確信
―福田:
ANRIさんは前回のシリーズAから、MPowerさんは今回のシリーズBからリード投資家として出資いただきました。始めに伺いたいのは、ずばり「SHEの何を評価し、どのようなところに期待して投資に至ったのか」です。
―河野(敬称略):
私達は、SHEさんの成長可能性と経営チームに期待して投資しました。
「コミュニティの熱狂」という非常にふわっとした、定量指標で測りにくいものを経済価値に変換して測ることができれば、さらにおもしろい会社に変貌するのではないかと。成長可能性を予測というより、確信できたのが大きな理由です。
投資を検討する時に面談しましたよね。直接話を聞く前に、SHEさんはどんな会社なのか、どういう人が受講されているのかを私なりに調べていました。すると「SHEに出会えてよかった」「SHEで人生が変わった」と、ユーザーさんの熱量高いコメントの数々を目にしまして。サクラでは?と疑いそうになるくらいにコミュニティの熱狂を感じました。
また経営チームも魅力的。まず福田さんは自分のすべてを開示し、自分の夢とメンバーの夢を重ねながらオーセンティックなリーダーシップを体現されています。そして五島さんなどの経営メンバーが揃いつつあると知り、「女性のためのキャリアスクール」に留まらない、「不均衡の是正」という大きな社会課題を本気で解決しようとしていると感じました。絶対に投資しようと思いましたね。
―深澤(敬称略):
コミュニティの熱量の高さは、私も印象的でした。投資前にSHE BEFORE AFTER AWARDなどのイベントに参加し、そこに集まる何百人のパッションを肌で感じたんです。社員も受講している方々も、非常に思いを持って取り組まれていると実感しました。
また熱量だけではなく、エコノミクスも意識しながら成長を続けていらっしゃいます。私は前職のVCにいた時から福田さんの話を直接聞いていましたが、約2年経ち、当時語っていたことを有言実行して、数字の結果も伴って成長されていたので素晴らしいと思いました。
―キャシー(敬称略):
VCにいると、「日本の成長性はどこから来るのか」という厳しい質問をいただきます。その度に私の脳裏に浮かぶのは、身近にいた仕事復帰が叶わなかったママ友たちなんです。
私自身は4ヶ月の産休を経てフルタイムで仕事に復帰しましたが、なぜか叶わない人もいた。すごくもったいないと考えていたんですね。目の前にいる優秀なタレントをフル活用できれば、日本経済はもっと元気になるというコンセプトとして掲げたのが「ウーマノミクス」※でした。
SHEがミッションとしているのは、まさにポテンシャルのある人材の自己実現を叶えること。単なるキャリアスクールではなく、学ぶことから雇用に結びつくコミュニティである点は他のビジネスと全然違います。大きな社会課題を解決しようとしているインパクトスタートアップそのものだと感じ、投資に至りました。
冬の時代こそ、画期的なビジネスモデルが生まれる
―福田:
スタートアップの投資環境は、すごい勢いで変化していると感じます。実際はどのような状況なのでしょうか。
―河野:
みなさん感じている通り、日本を含めて世界はかなり不確実な状況です。スタートアップファイナンス業界においても、冬の時代と形容される厳しい時代になっています。
これまでは先行KPIが伸びていれば、次から次へと資金が集まる右肩上がりの状況だったけれど、今はその動きが落ち着き、調整局面にいるのかなと。「売上はどうか」「利益は創出できるのか」が注目され、スタートアップを見る目は変わってきています。
ただ、「皆に等しく冬か」と言われると、必ずしもそうではないと思っていて。投資先は確実性や将来性が高い会社に一気に向かっているので、集まるところには集まり、集まらないところには全く集まらない。二極化しているのが今の資金調達環境だと思います。
―深澤:
今はピュアなベンチャーキャピタルではなく、コーポレートベンチャーキャピタルと言われるような企業に投資が集まっている印象です。
中長期的に取り組むテーマを掲げ、KPIや売上など分かりやすく確実に成長をしているところであれば、これまでになかったような10億・20億といった投資額も増えています。まさにSHEさんのような企業です。冬の時代である一方、日本のスタートアップ界にとってはいい流れもあると思います。
―福田:
シリーズBやシリーズCには資金が集まっている印象ですが、シード投資はどのような文脈ですか?
―河野:
ANRIとしては事業が形になるのに7年くらいかかると考えていますので、むしろ長期的な目線になっている今がエントリーのタイミングとしてはいいかな、と。加速するわけでも縮小するわけでもなく、淡々と種を蒔き続けています。我々だけではなく、多くのシードVCは同じような状況ではないでしょうか。
ただ種を蒔いても、芽が出にくい状況もあります。例えば、投資額を使い切るタイミングで市場の状況があまり良くない場合。今まで以上の厳選投資になるので、「追加投資する代わりに新規投資は抑えよう」など多少の調整は出てくると思います。
―福田:
グローバルにおける資金調達のトレンドや変化はありますか?
―キャシー:
投資の動きが右肩上がりの時と比べるとショックはありますが、歴史のサイクルを振り返ると当たり前の展開だと思います。
2008年や2009年も冬の時代と言われて、そういう時こそ画期的なビジネスモデルが生まれていたのです。AirbnbやUberはその一例ですし、SHEもその一社になると思っています。
私達が立ち上げたファンドをESG※重視にしたのは、劇的に変化しているマクロ環境のなかでよりリスク管理ができ、よりよい人材を確保できる企業が、持続可能な成長を実現できると信じているからです。
世の中がどうなるかは誰も予想できませんし、パーフェクトな企業もないわけですから、我々としてはESGの要素を重要だと思っている企業とゴールをセッティングし、伴走していく。それがSHEさんはじめ、投資先のスタートアップと我々のパートナーシップの在り方だと考えています。
―福田:
非常に勇気が出る話をありがとうございます。ANRIさんもディープテックやGREENファンドを立ち上げるなど社会課題には関心があると思いますが、スタートアップのインパクトへの向き合いはどのくらい重要視されていますか?
―河野:
私達は、社会課題を解決するためにVCという仕組みを使っています。むしろANRIの存在意義は、インパクトに向き合えることだと思うんです。
と言うのも、ファンドは通常10年のサイクルで投資・イグジット・分配を行いますが、私達の取り組みは10年の枠組みに当てはまりません。儲かるかどうかではなく、20年・30年後の未来に必要か必要でないかを見て投資を決めているからです。また成果も、20年・30年後に必要な方向に向かって変化しているかを見ています。このような長期的な投資はANRIだからできると思っているのです。
ただし、社会的意義だけを見ているわけではないですよ。お金を預かって投資している以上は経済合理性を考えて投資しています。
成功の糸口は、ビジョンと財務面の両立&チームの総勢力
―福田:
最後に、事前にいただいていた質問を。「インパクトスタートアップ投資やESG投資の際に、財務面での成長をどの程度重視されるかお聞きしたいです」。
―深澤:
スタートアップはこれから成長していく段階ですので、現在の財務的な成果や課題は投資前に細かくインタビューさせていただいています。
ただ私達としては、ESGに取り組んで社会課題と向き合い、インパクトを出せば出すほど財務面のパフォーマンスも大きくなると信じている立場です。財務的な成長を重視している一方で、ESGや社会的インパクトへの優先度が低いと我々のビジョンとは合致しません。
SHEさんは財務的にも着実に成長していますし、ビジョンにも非常に共感しています。その点で我々と同じ方向を向いていると感じたので、ESG観点でもっとインパクトを出せるようにと投資させていただきました。
―福田:
財務面で妥協できない、ビジョンを掲げて取り組めばいいという甘い世界ではないと、今回の資金調達で強く感じました。
では続いて、「スタートアップに成功する女性経営者とうまくいかない女性の違いについて、お聞きしてみたいです」。
―キャシー:
お答えする前に、弊社の分析をご紹介します。2020年から2021年にIPOをした231社を女性起業家と男性起業家に分けてみました。IPO前までに資金調達した額1円に対する、IPO陣の時価総額平均は、男性よりも女性が創業した企業の方が32%上回っていたんです。またIPOした年の売上高も、女性創業者の方が平均2割アップしていました。
図らずとも弊社が投資している10社のうち、4割強が女性またはマイノリティの起業家が創業した会社です。ポテンシャルの高さにジェンダー差はないと、データで明確に証明されています。
そのうえでいただいた質問にお答えすると、成功する・しないの違いは「しっかりとしたビジョンを実現するためのリーダーシップだけではなく、優秀な人材を採用できるリーダーであること」。そうでないと持続可能な企業にはならないと考えているからです。
福田さんのチームは福田さんの熱意だけでなく、チームの総勢力や実行力をものすごく感じます。また福田さん自身が資金調達と同時に2人目の出産と、様々な障壁があるなかで夢を実現していく力を非常に感じました。福田さんは成功する経営者になると思っています。
―河野:
ジェンダー関わらず、私は仮説で2点思うことがあります。ひとつは主語が「私」ではなく「私達」であること。「私達」と複数形で語るのは、ベクトルが自分ではなく社会に向いている証ではないかと思います。
もうひとつは、女性による女性のための事業ではないということ。ビジネススタートとしてはいいですが、「女性」に限定してしまうと大きい成功は手にしがたいかもしれません。
逆説的に言うと、SHEさんはそうではないから成長可能性を感じたんです。不均衡を是正する最初の焦点が女性なのであって、女性だけを救いたいわけではない。そこにSHEさんが成し遂げたいインパクトがあるということで、今後も伴走できたらと思っています。
―福田:
SHEの社員ではなく、株主の方々が私達の目指したい未来をこんなにも解像度高く語っていただけたのは本当にありがたいなと思います。本日はありがとうございました!
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SHEはVCの皆様の支援のもと、「学ぶ」と「働く」が循環するキャリアプラットフォームを目指し、その先のインパクトフェーズへと進んでいきます。
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