実際の導引

 導引というのは、古代中華大陸で研究、実践されてきた養生術で、皮膚を摩擦したり、叩いたり、指圧したり、身体を屈伸させたりすることによって体内の気の流れをスムーズにする方法です。気功法やマッサージ、ストレッチの元とも言えます。
 
 紀元前からヨガや道教をベースとして行われており、漢の高祖劉邦の軍師である張良が若いころから亡くなる時まで行っていたと言う説もあります。一番古いもので形として残っているのは三国志演義で有名な華佗が考案した五禽戯です。華佗は、「人体はなるべく動かすのが望ましく、ただ極端になるのを避ければ(激しすぎなければ)、動けば動くほど身体にある穀気(食べ物から得られた気)が消化され、血の流れが良くなるから病気も起こらない。あたかも戸の心棒が動いていれば腐らないのと同じ道理である。だから昔の仙人は導引の法を行い、熊が木登りするような運動や、フクロウが首を回すような運動、あるいは腰をひねって関節を動かす運動などをして老化を防いだ。この導引に当たるものとして、私にも五禽戯という術がある。それには虎戯、鹿戯、熊戯、猿戯、鳥戯の五種がある。もし身体に不快感があるならば、これらの一つを実行すると汗が出てたちまち気分が爽快になり、身体が軽くなり、食欲が増進する。私はこれを行っているために、九十歳になるが、耳目も衰えず、歯も健康である。」と述べている。
 
 導引には大きく分けて身体全体を動かす体操的なものと、身体の局部を動かしたり、手でこすったりするマッサージ的なものの二種類があります。
 体操的なものには華佗の五禽戯や太極拳、易筋経、均斉斎法など、現在残っているものでも数多くあります。導引は体力の増進を図ったり、記録の更新を目的としている体操やスポーツとは違い、身体や気の歪みを矯正することが目的であり、その点が大きく違うことに注意しなければなりません。導引は不要、有害の部分を取り去るのが目的ですから、気多肉少と言われ、外形的には痩せて見えるくらいがちょうど良いとされています。五禽戯や太極拳、易筋経の指導者は優れた方が多く、その点日本でも十分に学べるでしょう。

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