【感想文メモ】イエローでホワイトでちょっとブルー

【ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読了感想】


確かに話題になる理由が分かるなっていう面白さだった。

この作品は、作者の息子が通う中学校を中心として色々な社会問題や制度、昔からある階級などの問題が出されながらも息子くんの成長と共に理不尽的とも思える数々の問題を乗り越えていく話。


この息子君、正直数ページ読んだ段階で地頭がいいというか、冷静でちゃんと周りを見て自分の意見を持っている子なんだなと感じた。


息子君は、作者(日本人)と配偶者(アイルランド人)との子供で、小学校まで熱心なカトリック学校に通ってたの
でも中学に上がる段階で地元の元底辺学校に入学して、カトリック学校(いわゆる優秀で安全でまあまあ上の階級の人が通う学校)との沢山の違いを目の当たりにするのね。

でも人間関係の問題に真っ向から向き合って時には喧嘩とかもして、自分で解決や折り合いの道を見つけるの。
あーこれ純日本人には無い心かもなあって感じた。
もちろん日本人でもそういう人いるだろうけど、何となく真っ向勝負よりも陰湿勝ちみたいな所あるじゃん。

それから、学校の方針も面白かったな。
生徒に好きなことやらせる
授業に取り残されている生徒がいたらちゃんとフォローする体制を整える
とか、日本じゃそんな考えられない。

生徒に好きなことやらせるにも日本は限度があるし、クリスマスにラップやったり、音楽部の発表の場で要らんやろレベルの楽器の数で演奏したりはしないよね。
日本ってバランス重視、規律重視だし。

あと勉強についていけないならそのままにしないってのも良かった。
私も通いたかったなそれならって思う。
苦手な教科って理解する前に進んじゃうんだよ。わかんない所聞いたら白い目向けられて、できるのが当たり前みたいな空間にいたから誤魔化し誤魔化しやりまくって結局全然分かんないまま私学校卒業しちゃったし。
なんで出来ないの?っていう目を向けられたくなかったし私一人のせいで授業止めるのが嫌でスルーしちゃってたけど、息子君の底辺中学校は、ついていけない子を廊下でマンツーマン指導してくれるらしく、うわーめちゃめちゃ羨ましいそれって思った。

やりたいことやっていいし、大変だったらフォローするがちゃんと出来てる学校ってすごい魅力的だなって感じた。


あと、作中の中で、階級層で貧困度合いが違かったり、人種差別だったり、社会体制みたいなのもよく書かれてたのも印象的だった。

日本は日本人しかいないから人種差別ってそこまで日常的に目の当たりにする人少ないと思うけど、英国は色んな人がいるから、やっぱり色んな思想や文化があるんだよね。

アフリカから来た女の子の話や、演技が上手い同級生の差別的男の子は結構衝撃的。
でも読んでみると、同級生のその子達は超超超悪い!って訳ではなくて、どちらかって言うと親の思想が強かったりしてるんだなあって思える。
全部が全部批判的に行動したり尖ったりしてる訳じゃなくて、普通に接したら礼儀正しい子じゃんって思ったり。

あとはプールの話かな。
息子君泳ぎ上手くて学校の代表として、学校対抗の水泳大会みたいなのに出ることになるんだけど、それが階級差別の色濃いこと。
私立と公立でレーンが分かれていて、私立側はのびのびと泳げて、公立側は人ぎゅうぎゅうでプールサイドに待機しなきゃならない。

レースの結果、私立側の生徒が表彰台独占するの。
私立だから通っている人はある程度お金もってる家の人たちで普段から水泳習ったり、選手になること見据えて練習しているからめちゃめちゃ速い。
対して公立は、貧困層が多くて、学校では速い方ってレベルが集まるくらいだから技術の差は歴然なんだよね。

私は水泳とか個人競技系やったことないから日本の学校がどういう形で大会開催してるかは分からないけど、階級の差ってこんなハッキリと出されるものなんだ…って思ったな。


学校以外でも、ホームレス支援した話や日本に帰省した際の話なんかが書かれてて、
人間、なんでもコミュニティ外の人に対する辺りの強さがあって、逆にコミュニティ内に対する優しさがあるんだなって。

息子君が言ってた、自分は日本人でもないしかといって英国系の人でもない。どっちの血も入っているし、英語しか話せないし、コミュニティはどこにも属さないって発言が結構なるほどなって思った。

純日本人だから分かんないけど、どっちの血も入ってるって羨ましがられると共に居場所もハッキリ出来ないってことあんのかって思うと、その場所や地域にしか住んでない人なりの観点があって、関わる人によって色々なもの吸収されていくんだなって。

やっぱそうなると日本って閉鎖的感あるよね。
移民とかあると色々変わっていかなきゃいけないこともあるけど、価値観のアップデートや文化の違いからの新しい発見ができるから色々な国の人と関われる方が人間としては充実なものになりそうだなあって考えちゃう。


こうやって英国の貧困層の現状が日常的な観点で書かれた本って初めて読んだから、凄く新鮮で面白くて、へ〜!って何回も言っちゃった。

息子君のキャラも良い味になっているし、その友達も皆キャラ濃くて、ハッキリと自分の考えとか持ってるから人間性もよりいいものになってんのかなって。
日本って同調の力大きいなってよく感じるし。


なんか留学したくなる気持ちが再来しそうな1冊だったなあ

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