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『30女の思うこと〜上海女子物語〜』は勇気をくれる作品だった。

中国総再生回数71億回を突破したと言われる、
上海を舞台に目まぐるしく動く3人のアラサー女性の物語(2019年)。

43話まであるので「いつ見ようか…」と尻込みしていましたが、結論、とても良かったです。
ストーリーはテンポ良く進み、最後の最後まで怒涛の展開。アラサー世代を描いたドラマの中で、個人的には一番好きな作品になりました🌷
中国語の勉強にもなって一石二鳥、中国に興味がなくても楽しめる一作だと思います。

以下に感想を書いてみます。
(写真はLala TVより)


あらすじ

高級ブランドショップで働き、管理職を目指しているワン・マンニー。元キャリアウーマンのグー・ジアは、妻としても母親としても完璧に役目をこなす。お見合いで結婚したジョン・シャオチンは、仕事も結婚生活もマイペース。3人はそれぞれに変わらない毎日を過ごしていたが…。

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30歳が近づくとメンツが気になり出す

原題『三十而已』は、「まだ30歳ですけど?」といったニュアンスを含む言葉。

「三十にして立つ」という言葉があるが、20歳の頃とは違い、自分はどんな人間であるのか、自分はどう考え何を選択するのか、色々な経験を通じて自己認識が高まってくる頃だと思う。

一方で社会的なイメージも気になってくる年頃。
ドラマの中ではキャリア志向の娘を支援する母親が出てこなかった。これが中国の一般家庭の姿、とは結論づけられやしないが、親の期待と職場の期待はなかなか比例しないものなのかもしれない。自分自身がピアプレッシャーを感じている親は、結婚、出産に関して子への干渉がしつこくなる。一方で、会社で置かれる立場については、こんなセリフが出てきた。

職場の雇用差別の連鎖について、
連鎖の最下層は子どものいない30代既婚者(女性)。
理由は産休を取る可能性が高いため。
既に子持ちでも2人目を許された今は高リスク。
2人子どもがいる女性は定年までそう長くない。
40代で平社員なら定年まで勤められる保証はない。
子どものいない30代独身(女性)が一番の有望株。

ジョン・シャオチンの目線

周囲の期待に応えたいが、自分の想いも大事にしたい。
その葛藤が、一つの大きなテーマになっていると感じた。


中国で一番共感が多かった女性像は、独身アラサーのワン・マンニーだそう(参考:李姉妹ch)。
地方から上海に働きに出て8年。この街で生き残れるよう頑張っているけど、まだ根付けずにいる。給料の半分は家賃に消え、貯金もままならない。でも、翌月節約生活になったとしても、時には贅沢にも惜しみなく出費したい。
この金銭感覚や、地方から上京する事が他国に移住する並みに苦労が多いと思える点は、日本にはあまりない感覚かもしれない。


困難に陥っても復讐劇に走ることはなく、愛のあるストーリーだったのが良かった

主人公たちには様々な困難が降りかかるが、それによって誰かを憎んだり復讐したり、といったストーリーにはならない点が良いと思った。

激しい口論の後も、何だかあと腐れなくサッパリしている。間違ったときは素直に非を認めるし、周囲の人達に対してはもちろん、何より自分自身を大切にしながら物語が動いていくので、清々しい気持ちで見ていられた。

なかでも個人的に好きなキャラクターは、専業主婦のグー・ジア。
「これが30手前の女子の生活?」と驚いてしまうくらい、裕福で家庭円満、非の打ちどころのない人物なのだが。

彼女がすごいのは、その問題解決能力。感情が荒んでも、まずは相手の主張を聞く。そして目の前の難題を一つ一つ対処していく。「今自分がすべきことは何か」を捉え、マインドフルな状態で決断を出していく姿は、家庭でも職場でも、沢山の人の参考になるのではないか。

また主人公3人が恨みつらみに走らなくて済んだのは、「何があっても味方でいてくれる存在」があったからだと思う。
人の心はそんなに単純なものではなく…その人の為に正論を言ったところで響かなければ、問題の解決にはならない。

「あなたはどう思うのか」、そして「あなたが出した結論を私は全力で支持する」、そんな女子3人の友情が素敵だった。
信頼できる仲間の存在はやはり大きい。


家族になるということは運命共同体であるということ

とはいえ、相手にとって耳が痛い事を言わなければならないときもある。

例えばそれが夫婦間の場合。
相手のリスク管理の甘さを指摘したいとき、どうする?

軽傷ならば口論程度で終わるかもしれないが、夫婦で連帯責任を負わなければならない場合もある。社会的には、家族は一単位として見られるのが普通。
その時に「私は悪くない」と言って逃げられるものでもないし、逆に「私が責任を取るから」ということが出来ない場合だってある。

夫婦の過ちは私の過ち。

日々会話することの大切さ。日頃から相手への思いやりを忘れないこと。
どちらかが我慢を強いられる関係が続けばどこかで綻びが生じること。

改めて、この点は身が引き締まる思いがした。


ただのラブストーリーではなくビジネス要素も盛りだくさん

最後まで飽きずに見れたのは、ただの恋愛ドラマではなかったから。

起業、事業投資、営業、マーケティング、債権回収、倉庫やモノづくりの現場が出てきたり。私にはこれが結構面白かった。

色々な苦難を経験し、憑き物が取れたように執着を手放し、自分の人生を生きようとする彼女たち。
ゼロから出発する勇気ある姿も見て、

いつ何どきも、新たな選択が出来るのは勇気ある行動

そんな風に思った。

何かと結果を求められがちな世の中だけど、昇進、結婚、子育て、それだけが未来ではない。
そもそも不本意ながら手にしたものに、どれだけの価値を見出せるだろうか。

今後も彼女たちには試練が舞い込むだろうけど、それこそが人生の醍醐味なのかもしれない。

特に歳を重ねるほどに、現状を変えることに二の足を踏んでしまうこともあるけれど。
何を選択してもどのみち試練があるなら、可能な限り自分に正直な選択をし続けたい。
このドラマを観て改めてそう思えたし、勇気をもらえた。

お勧めできる一作です。


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