95年生まれZ世代、現在事実婚中。
「結婚しました!」
かねてから進めていた、私たちのパートナーシップのフェーズ移行……つまり、結婚。ついにいわゆる事実婚の最低限の手続きを終え、未届けの夫婦として生きていくことになった。
交際からはや6年半、大学時代の青春も社会人になってからも支え合って生きてきた私たちだが、ここに1つ区切りをつけられたことを幸せに思う。
相当な年数をかけて(私の場合は小学生の時からずっと)、法律上の婚姻状態になるべきか悩んで考え、いろんな勉強をしてきた私たちだが、結局今は事実婚にすることにした。
……ということをTwitterで簡単に報告したところ、同じ東大の学友や後輩から「実は自分たちも同じことを検討している」と相談を受けたため、何かの形で参照できる駄文を残そうと思う。
このnoteは、別々の家庭環境から東大で出会った私たち夫婦が、なぜ事実婚を選んだのか、どんな手続きがあるのか、スケジュールはどう考えたのかなど、「事実婚TIPS」のようなものを書いていくものにしたい。
まずはなぜ事実婚なのか、結婚したら何が変わるのかを書いた上で、大まかな手続き、スケジュール設計について続けたいと思う。夫婦別姓で結婚できるようになっても、同性で結婚できるようになっても、それぞれの退っ引きならない理由で事実婚を選ぶ人はいると思う。私たちは喧嘩もなかったため、コンフリクトへの対処法は少ないかもしれないが、何かの参考にしてもらえれば幸いだ。
1.そもそもなんで名前変えるんだっけ?
あくまで私たちの間での話であり、様々な事情で名前を変えねばならない家や、名前を変えたいと願う人のことは当事者だけが話をして納得したらいいと思う。そこは当然のことなので、断っておく。
私たちの中では、名前を変えて得られるメリットとデメリットを法に照らしながら検討した結果、「名前を変えてまで結婚することは選ばない」という結論になっただけ。
このあたりに関しては過去のnoteにまとめているので、気になる方は参照してほしい。要約すると、過去のnoteでは
(1)家制度
(2)固有名称の保存(夫婦別姓)
(3)対等なパートナーシップ
の3項目それぞれに対して、
(1)機能的価値
(2)情緒的価値
(3)基本的人権
の3つの観点から検討し、それぞれに対してあくまで私個人の考えを述べている。
それら全てを総合した結果、私たちは「仮に永続関係が前提だったとしても、現時点では結婚制度に乗っ取った形で婚姻関係を結ぶことは選びづらい」と結論付けた。
「法律で決まっているから」ではなく、
(1)なぜ制度がそうなっているのか
(2)制度がそうあるべきだとしたら、次に、我々はその法律の認める状態に移行すべきか
(3)移行すべきだとしたら、法的に婚姻関係を結ぼう
という順番で検討を進めた。
それによって、お互いの生き方、結婚に対する価値観が細かくすり合わせられたことは思わぬ成果だった。
2.結婚したら何か変わるのか
まず、2人の関係性から言うと、「特に何も変わらない」。
私たちは念の為1年間の同棲期間を設けた。同棲をうまくやっていくコツなどについては別のnoteに分けようと思うが、たとえこれが結婚手続きをして名前が変わったとしても、2人の関係は変わらないし、変える必要もないと思った。いつものように起きて、朝ごはんを食べ、仕事して、夜ご飯をどうするか連絡して、買い物して、おかえりと言い合って、寝る。たまに将来の真面目な話をする。付き合っている時もそんな感じだったので、行動に変化は起きなかった。
ただ、お互い「結婚したね。将来のことを具体的な目標として話すステージにいるね」という共通認識ができたことはもしかすると小さな変化かもしれない。名前をどうするかという論点がいつまでも残っていた同棲期間から、「変えない。検討をその先に進める」という検討フェーズを進められたのは大きい。多分、結論が出なかったらいつまでも子供とか持つことなんて考えられなかったと思う(今は「いつにするか」だけを考えられる)。
そして、ようやく分かってきたのだが、両家の関係性は「多分変わる」。
付き合っているだけの期間は、正直親からすると子供の恋人の家族はわざわざ会う必要もないし、言ってみれば可逆性を残した関係者であって、特に成人同士で「付き合い始めました!親同士挨拶しよう!」みたいなカップルは現代は少ないのではないかと思う。
しかし結婚するとなると話が変わる。婚姻届には証人欄があり、親がサインする人も多い。そして、法律婚夫婦間では遺産相続がしやすくなる。孫が生まれれば、両家の財産の相続もできる。つまり、利害関係者になるのだ。情緒的にも、子供の家族というものは意思決定に関わってきたり、子供に与える影響が大きくなる。
周りとの関係性も、「ちょっと変わる」。
基本、そんなに変わらないなという印象が強い(多分共通の知人が多いから)。だが、付き合っている時は先ほど同様、「結婚していない=まだ身を固めていない=まだパートナー選定に流動性を確保している」と捉えられがちだ。例え本人たちが事実婚だと思っていても、周りは説明されないとわからない。(既婚者と宣言している人に破綻の提案(不倫)を持ちかけてくる人間はちょっと交友関係を見直したほうがいいかもしれない。あの、結婚て不倫したら裁判で負けるくらいのちゃんとした「契約」なんだよね。)
<結論>
結婚すると、「本人の生活に実質的な変更は生じないが、周りとの関係性は変わるし、見えない『約束』が増える。何かリスクが起きたときに立ち現れるのが結婚という契約だ」というのが個人的な感想。
3.結婚しないリスクをどう捉えたか
私たちはあくまで、自分たちの生き方を中心に選択肢を持っているが、少なからず親(もっというと、親の財産や将来的な支援)には利害関係が生じるため、現実的なメリットデメリットを話し合った。数十年後の自分たちがどうなるかもわからないから、その時どんなことが起きるかも調べて議論した。
結婚した時に、私たちの意思と関係なく法的に発生する権利と義務について確認する必要があった。結婚契約というのは、婚姻届を出した瞬間にこれらの権利と義務に同意するということで、契約内容を細かく見ずに契約をする/しないを決めるというのは私たちの慎重な価値観に合わなかったのだ。
▼ネットで調べたらいくらでも情報は落ちているが、私たちは手書きでまとめて考えた。2020年に調べたものなので、今は変わっているところがあるかも(いや、ないような気がする。)
A.結婚すると発生する義務と権利だが、事実婚でも契約書作ればカバーできそうなもの
・同居、扶助
・費用負担
・日常の家事・債務の連帯
・貞操(離婚の事由にできる)
・未成年の子の監護
・財産分与請求
・相続(1/2~3/4)
・相続の法定代理人
・親権を持たない子の公的手続き(これは調べてもちょっとよく分からなかったので保留してた、委任状があればOKなのか、詳しい人いたら教えてください)
・父親の親権と姓(認知&変更許可を家裁に出せば母親とトレードオフ。)
・養育費の請求・子供の相続(認知でできる)
B.結婚すると得られるが、事実婚だと頑張っても無理そうなものだが、別になくても困らなそうなもの
・同氏(そもそもこれが我々には必要ない)
・年金3号(※年収130万円以下という要件なので、共働きの私たちは今いま必要ない)※国が関わるのでどうしようもない
・配偶者控除(※年収要件があるが以下同文)※国が関わるのでどうしようもない
・婚姻費用、別居期間中の生活費(経済的に自立していれば大丈夫そう)
C.結婚すると得られるが、事実婚だと頑張っても無理そうなもの
・戸籍上の公的な証明(住民票、公正証書、パートナーシップ証明書などどれだけ効力があるかわからないので。逆に左記がOKであれば問題ない。)
・不妊治療の補助 ※国が関わるのでどうしようもない
・相続税控除 ※国が関わるのでどうしようもない
・共同親権 ※国が関わるのでどうしようもない
ということで、子供が生まれようが可能な限り共働きでいく予定の私たちにとってボトルネックはCとなった。意外と少ないな、という感想と、万が一の時に相当金を持っていかれるな、という感想。
まあ相続は歳をとってから考えればいいし、事実婚家庭もあるのだから親権は家庭崩壊しなければなんとかなりそう(そして何故だか共同親権でも離婚したら8割程度は母に親権が渡る/渡されるそうなので父親から見た共同親権であることのメリットは離婚した時もあまりないのかもしれない)、不妊治療は必要になったら考えればいいし…という形で、いますぐ名前変えてでも結婚制度に守られるメリットには感じられなかった。
断っておくが、これらはあくまで機能的価値の話であり、家族の一体感とか嫁入り先で生まれる一族の絆(この理屈だと嫁元の実家との絆は薄れるらしい)とかの主観的な情緒的価値は考えていない。
情緒は人によって変わるし変えられるが、国の制度である以上、機能は本人の意思どうこうで変えられないので、検討する必要があると思ったのだ。
そして私たちは事実婚を選んだ
こうして、少なくとも当人同士の間では「名前を変えるデメリットが結婚で得られる権利のメリットを上回る」という検討ができたことで、私たちは事実婚を選んだ。
本当に幸いにして、互いの親からの反対はなかった。反対ではなく心配はされたが(検討事項は抜け漏れてない?とか子供のことはどうする?とか)、ここまで調べたことを伝えて、それを理解してくださる親世代に恵まれたのは、自分たちではどうしようもないところで助けられたと思う。対話をしてくれて本当に感謝してます。ありがとう。
今回は、
・なぜ事実婚を選んだのか
・どういうメリット・デメリットがあるのか
について書いてみた。個別のケースもあるし、自分たちの基準で考えたことなので、参考にならない部分も多々あったかと思うが、誰か同じような状況で悩んでいる人がいたらそっと読んでもらえたら。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。
もし法律的に調べ残しているところがあればそっと教えてください。
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