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インディーゲーム開発者から見たSteam Deckレビュー

はじめに

ValveのポータブルゲーミングPC「Steam Deck」が遂に2022年12月17日に手元に到着しました。まだまだ日が浅いので使い込めているわけではありませんが、ファーストインプレッションを記録しておきたく、ここに記事として作成します。
スペックやベンチマーク等はその道の強い方々がたくさんレビューされていますので詳しくは語らず、私からはPCゲーマーとしての視点と、インディーゲーム開発者の視点からSteam Deckについて話をしていきます。

自己紹介

私は離水ひつじと申します。インディーゲームデベロッパーを自称する同人サークル「221GAMES(プニヒゲームズ)」にて主にデザイン面でゲーム開発に携わっています。

弊サークルは
代表(ソフトウェア開発等):かにひ(https://twitter.com/KaninoYokonov)
副代表(各種デザイン制作等):離水ひつじ(https://twitter.com/K_SheePlane)
の二名で運営しており、友人・知人たちから都度様々な協力をいただきながらゲーム開発を進めております。

現在は2023年中にWindowsPC(Steam)向けシングルプレイ専用メカカスタマイズシューター「プニヒローダー2」をリリースするために開発や宣伝活動を精力的に行っています。

「プニヒローダー2」は一頭身の謎生物である「ぷにひ」が個性的なメカに乗り込み戦うメカカスタマイズシューターです。
作中の舞台となる「ネオアサヒカワ」では、ぷにひ達がメカに乗って戦う競技が大流行しています。
プレイヤーは「ぷにひ」となり、仲間を集め、活動資金を稼ぎ、メカパーツを買い揃え「ネオアサヒカワリーグ」の頂点を目指します。

せっかくなので下のURLからSteamストアページに飛んでいただきウィッシュリストへ登録してもらえるととても嬉しいです。体験版をプレイしてもらえるともっと嬉しいです。

動画も見て…


この記事の要約

・特段ハードウェアとして心配になる部分はいまのところありません。サポートは不明ですが…。
解像度が720pであることに目を瞑れば、Steam DeckはPCゲームの入門機として充分な性能を持ち、かつコストパフォーマンスが極めて高いです。
・Steam Deckを購入することで世の中に出ているWindows向けのPCゲームはほぼ全てプレイできると思います。
・Steamでゲーム出してるデベロッパーはUIのフォントサイズを大きくしてくれ!!!!!
・Steamでゲームを発売したいインディーゲーム開発者は開発機材として購入必須級です。
・今までPCゲームをやったことがなく、PCゲームをやるために新品最安値で調達する機材としては良い選択肢の一つだと思います。
・ゲーミングPCを既に持ってる人は正直いらない機材だと思います。
・23/1/15 浜松町で開催予定の東京ゲームダンジョン2にプニヒローダー2の試遊機としてSteam Deckが登場予定です!

ファーストインプレッション

64GB版を予約購入しました。選定理由は一番安かったからです。
予約した後に気づきましたが上位グレードと性能差がなく、SSDが簡単に換装できるそうなので64GB版が一番オススメかもしれません。

ウオ…デッカ…
携帯機としては最大級の大きさを誇るSwitchと比較するとポータブルの概念が揺らぐデカさです。あまりにデカイので持った感じは正直重さは数字ほどには感じませんでした。
プレイする際の筐体の取り回しは、
テーブルに向かっている時:テーブルに筐体下面を接触させてプレイ
椅子に座っている時:太ももの間においてプレイ
寝ている時:うつ伏せでプレイ
みたいな感じになるため、重量を何処かに預けてゲームをプレイすることが殆どだと思います。その為あまり重量感は感じませんでした。

排熱口は上部についており、吸気口が下面にないため、冷却不足で基盤が焼損するリスクは少ないように思えます。
筐体中心部はゲームプレイに伴いかなり熱を持ちますが、筐体があまりにデカすぎるためグリップ部まで熱が伝わってきません。これはSwitchクラスの小型筐体と比較した際に良い点だと感じました。

新幹線や飛行機の中でSteam Deckをプレイするのは余りオススメできないと思います…。(デカすぎるため)

パッド部分の操作感ですが、可もなく不可もなくと言った印象です。
DUALSHOCK4やProコンには劣りますが、Joy-Conよりは遥かに良いです。
ただ角型のトラックパッドは…正直いらないかも…。背面パドルの必要性はまだよくわかっていません。
各スイッチの耐久性についてはこれからの話になるかと思います。
外部入出力はオーディオジャックと給電を兼ねたUSB-C1口、microSDカード差込口だけですが、USB-Cからハブを通して色々繋ぐことが可能です。Bluetoothも繋がります。
ただし、HDMIの出力は一癖あるようで、普通に外部ディスプレイと接続すると720pのまま出力されます。(外部ディスプレイの解像度に応じてスケーリングされる)色々とやれば1080pで出力できるみたいですが、よく調べていません…。

ゲームプレイについて

SteamストアのUIは充分作り込まれていて、不自由なく操作ができます。無線LANの接続・速度も問題ありません。しかしながら、

64GB版を購入した者に訪れる試練、「PCゲームはメチャクチャゲーム容量がデカイ」を失念していました…。プレイしてみたいタイトルは概ね50GBクラスの大飯食らいばかりです。慌てて512GBのSDカードを購入しに行きました。(1万円ぐらいでした)

重点的にプレイしたタイトルは「MechWarrior 5: Mercenaries」です。Steamでメカアクションをプレイするなら是非オススメしたいタイトルです。と思ったんですがPS4/PS5でも英語版は出ているみたいですね…。日本語化MODを入れたいなどの需要にはSteam Deckは答えてくれると思います。(未検証)
SDカードにソフトを入れてプレイしましたが、起動時の待機時間、ゲームプレイ中のロード時間はそこまで気になりませんでした。元々ゲームはHDDに入れるタイプの人間だったせいかもしれません。

設定はMedium近辺で40~60fpsほど出ていました。この性能がどのあたりに位置するかなんですが、競合相手となる廉価なゲーミングノートPCに対して解像度が劣る(1080pに対して720p)代わりにフレームレートがほぼ同等と言った感じです。フレームレートのボトルネックは完全にGPUになっていました。

Steam Deckでのプレイ。

Lenovo Ideapad S540(15)ゲーミングエディション(販売終了)でのプレイ。

Steam Deckの性能がざっくりどのあたりに位置するかなんですが、「Steamを使ってPCゲームをしている一般的なゲーマーが使っている機材」とほぼ同一であると言ってもいいと思います。
今年発表されたSteamのハードウェア調査で、先に紹介したゲーミングノートPCにも搭載されているGTX1650がシェア1位となっています。

つまりSteam Deckは、ほぼ全てのPCゲームがプレイ出来る水準の性能であると言えます。
(要注意:Steam DeckはLinux系独自OSで動いているためWindows版しかないゲームはProtonと言う互換ソフトを通しての稼働となります。非対応のオンラインゲームなどはアンチチートの兼ね合いで動作しない可能性が高くなります)

PCゲームはグラフィックが注目されて要求性能が高く思われがちですが、ほとんどのPCゲームはグラフィックを設定から調整する事ができ、そうすることでフレームレートを高く保つことが出来ます。
特にSteam Deckは意図的に解像度を落とした液晶ディスプレイを採用しています。そのため、必要となるグラフィック性能を下げることができ、この筐体サイズで十分な性能を確保できたのだと思います。

因みに1080p最高画質でAAAタイトルのゲームを60fps以上安定でプレイしたい場合はPCだと20~30万の出費は必須になると思います。

ゲームをプレイしての感想は、「液晶サイズに対してUIのフォントサイズがとにかく小さすぎる!」点が挙げられます。恐らく老眼が始まると全く見えなくなると思われます。

ゲームによってはUIサイズが変更できる優しい物もありますが、UIが小さいゲームに限ってUIサイズが弄れなかったりするのはあるあるです。
ただこれは15インチクラスのノートPCでゲームをプレイしても同じような状態になったりするため、Steam DeckがどうこうというよりはPCゲーム全体が抱える問題の一つです。なんとかならないものでしょうか。PCゲームデベロッパーはみんな50インチモニターで開発でもしてるんでしょうかね???

バッテリーの持ちについては、ゲームをやっていれば1時間半程度といったところだと思います。ただこれは同じようにPCゲームがプレイできてバッテリーを搭載しているゲーミングノートPCも大差がありません。とにかくバッテリーをドカ食いするので給電しながらのプレイが前提だと思います。

EV回りの技術革新で電池のエネルギー密度が100倍ぐらいに上がってくれることを祈っています。爆弾では?

自作ゲームを早速プレイしてみた

特にSteam Deckへの対応はしていませんでしたが、Protonと言う互換ソフトでWindows版のゲームがSteamストアから何もせずにそのまま起動できると聞いていたので現在開発中のゲーム、プニヒローダー2体験版をプレイしてみました。因みに筆者は3Dモデル等の制作が開発のメインであるため、ゲームプログラムそのものについてはあまり詳しくありません…。

ゲームは起動したものの、アリーナモードをプレイ開始するとゲームがクラッシュしてしまう症状が発生しました。原因はまだ不明ですが、恐らくアリーナのワールドで使用しているSkybox回りがなにか悪さしているのかもしれません。
暫定解決策として、使用するProtonのバージョンを5.0-10に変更することで、Skyboxは暗転したままですが、正常にゲームがプレイできる状態となりました。

最高画質でも特にゲームが重たいとかはなく、普通にゲームがプレイできていました。これなら最悪Steam Deck対応を想定して別にビルドを組まなくてもなんとかなりそうです。

インディーゲーム開発者にとってのSteam Deck

PCゲームを制作していると、「自分が使用している機材以外の動作環境や操作デバイス」に無頓着になる傾向があると個人的に感じています。
私はPCゲームを好んでプレイしているため特にその傾向が強く、コントローラでの操作感や低解像度でのプレイにおけるUI等を余り気にしていませんでした。
以前の東京ゲームダンジョンでの試遊展示の際に感じた点でもありますが、
実際のプレイヤーを想定した動作環境、コントローラでの操作感や画面に対するUIの適切なサイズ感はしっかり考えて制作しないとゲームの快適性に直結します。

上記の問題に対してSteam Deckは極めてコストパフォーマンスの高い開発機材と言えると感じています。
Steam Deckで快適にゲームがプレイできるようにゲームを制作していけば、
動作環境の下限、画面解像度の下限、UIの適切なサイズ感、コントローラー操作対応等、異なる環境について確認することができると思います。
その機材が6万円台で手に入るのはとてもお手頃だと感じました。
更にイベント会場での試遊展示でも簡単にハンドキャリーで持ち込むことが出来るのでその点でも良いです。
またSteam Deckにソフト側が対応すると、ValveがSteam Deckのストア上で優遇措置を取ってくれるみたいです。今のところはそのようなメリットも発生しています。
Steamでの展開を想定するなら1台は持っておいて損はないのでは?と思います。

総括・Steam Deck購入の目安

「ハードはソフトを遊ぶためにしかたなく買ってもらう箱」と言う言葉があります。

その言葉をPCゲームに当てはめた場合、やりたいPCゲームをするために仕方なく買う箱が、本当にそのゲームを思った通りの状態でプレイできるのかわからない上にその箱の金額がコンシューマ機と比べて数倍高いと言う大きな問題をPCゲーム(ゲーミングPC)は抱えています。
そのアンサーとして、Steam DeckはValveの意図通りその役目を果たせる性能・価格設定が出来ていると感じました。
解像度が720pとは言え、PCゲームが充分に動くスペックのオールインワンPCを6万円台でリリースしているのは極めて大きいです。この金額で素人が新品で買えるゲーミングPCを私は知りません。精力的に開発されている中華製のゲーミングUMPCを皆殺しにするような価格破壊設定で可哀想になりました。

今までPCゲームをやったことがなく、PCゲームをやるために新品最安値で調達する機材としては良い選択肢の一つだと思います。

一方で既にゲーミングPCを所持しているオタクにとっては余り魅力的な機材ではないと感じています。「PCでゲームをプレイする」ことに慣れている場合は逆に微妙に思う点が満載です。20~40万円ぐらいのバカ高いゲーミングPCでデッカいディスプレイを複数使いながらゲーミングマウスとゲーミングキーボードを振り回すゲーム体験がSteam Deckの魅力を終始破壊して回ります。唯一良い点は寝ながら好きなPCゲームが出来るぐらいでしょうか。ガジェットが大好きなオタクはValve/Steamグッズだと思って買うのが良いでしょう。

最後にSteam Deckについて少し悪く言ってしまいましたが、ガジェットオタクの私としては今のところかなり気に入っている機材です。

2023年1月15日に開催される東京ゲームダンジョン2でも出展者側として参加し、こちらのSteam Deckで開発中のゲーム「プニヒローダー2」の試遊展示を行いますのでよろしければお立ち寄りください。

ここまで見てくださりありがとうございました。

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