書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 07

 王家の丘とは儀式を行う場所だ。
 とはいえ、ティアは本気でバスに乗ろうとは思っていない。暗殺の危険性がある以上、目立つ行動は控えた方がいい。

 時間がかかるけど、徒歩で移動した方がいいかしら。

 ここから王家の丘までかなり歩く。三時間近く海岸沿いに歩いて、目的地の場所まで何度も坂道を行き来するのだ。ティアもカーラも体力には自信があるが、今履いている黒のロングブーツよりも、もっと歩きやすい靴に代えて、海からの強い風に長時間あおられるのだから、ワンピースドレスの上に羽織る上着を買った方が賢明だ。
 自分の記憶が確かならば、ここから商店街に出れば服屋も靴屋も容易に見つかるはず。あくまでも、五年前の情報であるのだが。

 そんなことを考えながら、やっと二人がロータリーまで移動すると、ロータリー中央に設置された拡声器からアナウンスが聞こえてきた。

『こちらコイオス観光でーす。カルティゴからお越しのティア・ロード様。カーラ・ラン様。ただいま、お迎えに向かいますので指定の場所まで来てくださーい』

「「…………」」

 ティアとカーラは、微妙な表情を浮かべてお互いの顔を見た。
 出迎えにしては遅れていることに、嫌な予感を覚えた。

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