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12/21_執筆制限時間10分小説_【381 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く

 ねぇ、教えて。高校生だった僕たちになにができたの?

「うわっ! この部屋、やっぱ狭い! 詐欺だ!」
「へー、いいじゃん。ある意味、良い思い出になりそうだよね」
「お前のそういう所、ホントイヤ!」

 僕は、余計なことをいちいち言う園生くんにヘッドロックをかけて、横で物部くんが「いーち、にー」とカウントをとる。五代くんは呆れて、早瀬くんはゲラゲラ笑う。大川くんは助けた女の子と始終デレデレと合宿はそんな調子で進んでいた。

 初日で教官が言っていた廃墟は、自由時間の時にすぐ見つけられた。寄宿舎から、適当に川のあたりを歩こうという話になった時、緑の隙間から建物の壁が見えて、興味を覚えた僕たちはそのまま廃墟を見つけてしまった。

 僕はてっきり、長奈村の療養所みたいなホテルを想像していたんだけど、見つけた廃墟は、門扉に和風の意匠が凝らされていたり、お香の匂いがしていたり、大鐘がとりつけられた尖塔が取り付けられていたりと、この時点で中に入っていなかったけど、なんだか宗教施設みたいな趣があった。

「あ、ここ、知っているかも」

 と、口を開いたのは園生くんだ。本当に君、ムダに良くしゃべるよね。

投稿時間:9分57秒

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