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12/2_執筆制限時間10分小説_【353 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く

 歪んだ写真を見て、体中の血液がどくどくと嫌な音を立てて、僕の頭の中を引っ掻き回す。
 本当じゃないのに、本当のように加工された写真。奥行きがおかしいパステルカラーの部屋が、どくどくしい空間にかわり、可愛らしい女の子たち二人は、不自然な体勢があたりまえの醜い妖怪に見えてくる。

 僕はマスク越しに自分の顔を撫でて、目の前のおかしい現実に、小さな虫が無数に体中を這いまわるような、嫌悪感が沸き上がった。

「どうして、こんな写真を掲載したんだろう?」

 僕がぽつりと呟くと、大川くんは怪訝な顔で僕を見る。僕が不快に感じているのが分かっているけど、その理由が分からないという感じに。僕の反応はみんなからしたら、大げさなのかもしれないけど、醜い顔を四六時中マスクで隠して、自分の身を守っている僕としては、こんなことは許されないと思った。

 このパンフレットの写真を信じて、この合宿所を選んだ人の気持ちを、このパンフレットを作った人間は全然考えていないんだ。その人が感じた痛みも苦しみも、なにもかも。

投稿時間:9分53秒

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