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10/9_執筆制限時間10分小説_【275 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く

「ワテの人生はここに流れつくまで波乱万丈や。おとんが関西大学受験するさかい、北海道から上京したはずが、ヤクザの組長の娘と運命的な出会いを果たして電撃入婚。物心ついた時から、頭がたりん奴らに囲まれてドンパチやら拉致監禁やらのオンパレード。身内の構成員も頭足りんから、報告・連絡・相談(そうれんそう)もできんし警備もガバガバや。こりゃいかんと、まともな生活をさせんとあっちこっち転校したせいで、ワテの関西弁がおかしゅうなった。西日本はほぼ、全部制覇したんやないかな。そんで、今回で初めて関東進出。オトンとオカンは遠縁の親戚の知り合い頼って、この学校にワテを入れさせたんやさかい。だから、ワテの素性をしっとるから寮長(チュー)はワテに強くでれん。いざとなれば、ワテの名前を使ってくれや」

 そう、去年は早瀬くんが僕たちの味方をしてくれたから、ミニヒマワリが荒らされた事件は、なんとか決着がついた。花壇が荒らされたことで、傷ついた生徒の心情が汲めない大人を、なんとか権力で組み伏して形だけの謝罪させたにすぎない。

……キャハハハハ。

 事務所で聞いた若い女性の声に、神経がざわついて、僕は眠りたくても眠れない状態だった。脳裡によぎる【援助交際】という可能性に、嫌な予感で寒くないのに鳥肌が立つ。

 先日、僕たちに見せた神妙な態度は演技だったのか。

 いざとなれば早瀬くん……。

 僕は気持ちを落ち着かせようと、心の中で何度も唱えるが、中学の僕は知らなかったんだ。安易に縋れば、代償を払うことに。

投稿時間:9分55秒

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