書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 13

 だが、ティアの方も負けてはいない。魔法に干渉して意のままに操る能力――ユニークスキル【月の女神(トリウィア)の手】により、プルートスが自分に害をなす場合はカウンターパンチを叩き入れることが可能なのだ。プルートスの手の内を明かしたからこそ、ティアも牽制として自分の手の内を開示して見せた。

「え……と、この時期はウニですかね。魚ならコリオススズキのアクアパッツアが美味しいです。けど一番のおすすめは牡蠣なんですが、牡蠣は……その、時期が過ぎてしまって味がちょっと落ちてますね。あ、その生牡蠣に酢と塩レモンをかけて一緒に食べると美味しいし、疲れが取れますよ。そこのお連れさんは、お酒は好きですか? うちの国では牡蠣にシングルモルトのウィスキーをかけて食べるのが通なんです。とてもおすすめです」

 小突かれたファウストは青白い顔ながら、必死に観光業者の見習いとして、それらしいことを話して見せた。あとどうやら、牡蠣が好きらしい。話していて少し目が輝いている。

「そうなんですか、王位継承の儀式を観てみたい野次馬根性と、シーズンオフの半額旅行を選んで少し後悔してしまいました」
『町で不穏な雰囲気を感じました。なにかあったのですか?』

 声を落として残念そうに話すティアは、水文字を操作させて到着時に感じた町の違和感を問いかけてみる。

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