書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 11
「おおぉっと、すいません」
まるでティアが名刺を見たタイミングを見計らって、プルートス警視総監が上体をよろけさせた。自分の前に置かれた紙コップが太い腕に薙ぎ払われて、テーブルに勢いよく渋茶色の飛沫と液体が広がる。
飛沫がティアたちにかかろうとした瞬間だった。
「いま、テーブルをふきますからね。―――――っ」
声とは別の大気を震わせる低い音が聞こえた。
ティアたちにかかろうとしていた飛沫が、他にも空中を舞う飛沫がぴたりと止まって、軌道を変え、テーブルに出来た渋茶色の小さな池に集合する。
水音を立てずに静かに集まって動き、やがてリボンのように滑らに動く水は流麗なメッセージとなった。
『盗聴の可能性あり。話を合わせていただけると助かる』
水属性の魔法だった。飛沫に至るまで緻密にコントロールできる芸当は、さすが警視総監といったところだろう。
「あの、二階建てのバスを見かけたのですが、どういった内容のツアーなんですか?」
『監視の可能性がないと確信したから、このような方法をとっているのですよね?』
ティアも意識を集中して水の流れに含まれる魔力を読み取り、プルートスの魔法に干渉(ジャック)する形で新たな水文字を作る。
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