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藤子Fマニアが見た「新解釈・三国志」

★ 本文途中、多少のネタバレが出てきます。
★ ただし、ほとんどが個人的な三国志の思い出話となります。
★ F先生の視点で、映画を少しだけ論じてます。

中学生くらい、思春期に差し掛かって、ちょうど藤子不二雄マイブームが終わろうとしていた頃、特に前触れもなくハマったのが「三国志」だった(正確に言えば「三国志演義」)。

義で結ばれた劉備玄徳・関羽・張飛のデコボコトリオが、時に劣勢になりながらも、民衆のために漢王朝の復興を目指すという分かりやすいストーリーが、抜群だった。

特に魅力的だったのは、一騎当千の活躍を見せる武将たちである。特に関羽は、一度曹操の元へ行き、戻ってこないのでは? という心配をよそに、忠義を果たして劉備の元へ帰還する。呂布が乗っていた赤兎馬を受け継ぎ、颯爽と野を走る姿を想像した。個人的に一番好きだし、世間的にも人気もあるキャラクターである。

そして、三国志のもう一つ好きな部分。それは劉備が建国した蜀が、劉備亡き後に衰退へと向かっていくもの悲しさである。劉備の息子、劉禅の愚息ぶりや、諸葛亮孔明をもってしても魏の圧力にじりじりと押されていく感じが切ないこと。

そして孔明が、泣いて馬謖を斬ったあと、死んで生ける仲達を走らせるあたりでは胸が張り裂けそうになる。軍師を継いだ姜維はいかにも小物で、蜀の劣勢は覆らず、国の衰退が決定的となっていく…。

一方で魏は、軍師・司馬親子が盤石で、順調に版図拡大にまい進していく。この栄枯盛衰の対比は、国作り・組織作りには人材が必要なのだということが、嫌というほどわかる(あと地の利も)。


ところで、「三国志」と言えば、光栄(現コーエテクモ)のシュミレーションゲームがすぐに思い浮かぶ人が多いだろう。

三国志を読み始めた中学生の頃、その存在を知って凄く欲しかったのだが、他のソフトと違って高額だったため、中坊の僕には手が届かなかった。代わりに購入したのが、ナムコ(現バンダイナムコ)が出していた「三国志 中元の覇者」というファミコンソフトだった。

僕には弟がいるが、僕が兄の特権を使って劉備をプレーし、弟はしぶしぶ曹操を選らんだ。ところが、史実通り、魏は戦力・国力が優れているので、ゲームでも優位なのは、弟の選んだ曹操軍だった。

「三国志で好きな武将は?」と質問すると、たいていの人は劉備軍の中から選ぶことが多い。ところが不思議なもので、大学生くらいになって、弟に聞くと、三国志では圧倒的に曹操と司馬懿が好きなのだという。三つ子の魂百までも、ということで、若い頃に肩入れしたキャラクターは、そのまま好きであり続けるのだということがわかるエピソードである。

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ここからやっと映画「新解釈・三国志」の感想が入ります!!

映画「新解釈・三国志」を観た。

三国志を題材にした豪華なコントといった風情で、福田雄一監督のパロディ精神が十分に発揮された作品だった。アメリカと違い、日本ではパロディの映画の文化は育っていないのだが、本作は、きちんとお金をかけた真っ当なパロディ映画であった。

実績も集客力もある今の福田監督でなければ、本作は生み出されなかったように思う。もっとも、芸達者の俳優(メンツ)を揃えた(ツモッタ)ばかりに、全編騒がしい感じだったのが、観客のえり好みを招くかもしれないとは思ったが…。

また、三国志の名前に釣られてきただろうご高齢の方が、本作のノリに付いていけたかも心配してしまう点。でも場内はマスク越しにみんな良く笑っていた。

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Fマニアの視点からすると、パロディ精神という部分はとても高く評価できる。例えば、劉備は酔わないとカッコいいことを言わず、シラフでは憶病で情けない男である、というような部分。

実はヒーローは気が弱かった、などというような「新解釈」はF先生が得意としてきたパターンである。「スーパーマンは実はあわてんぼうだった」とか、「人気漫画家は、未来の自分が書いた漫画を元にして書いていた」、といった感じである。

おそらく本作を観たら、F先生もきっと褒めたのではないだろうか。


それにしても、本作や「レッドクリフ」などの三国志の映画では、クライマックスは常に「赤壁の戦い」ということになっている。圧倒的に強い曹操軍に対して、互いの思惑がすれ違う蜀と呉が、諸葛孔明を媒介に手を結び、巧みな計略をもって大軍を敗走させるという痛快さが、映画的・物語的なのだろうと思う。

でも僕は、先ほど書いたように、滅びゆく国への哀愁にたまらない魅力に感じる派である。あの人材がどんどん細くなっていく感じを、映像でみたいものである。

三国志ファンの中には、蜀を勝たせたかったと本気で考えている人も多いらしく、一時期「反三国志」なる作品も出回っていた。劉備・関羽・張飛が最後まで健在のまま、みごと中国統一を果たすという、凄まじいフィクション具合であった。パラパラっとで良いから、もう一度読んでみたい本ではある。

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