藤子F先生の作家史を、10期に勝手に区分!
藤子・F・不二雄先生の連載作品を中心に、先生の辿った漫画史を簡単にまとめてみた。詳細は下の方の一覧を見てもらうとして、このまとめの作業の中で、F先生の作家活動の大まかな区分が見えてきたので記しておきたい。
藤子Fこと、藤本弘先生は盟友・安孫子素雄とコンビを結成し、手塚治虫先生から借案した足塚不二雄として活動し、1953年「UTOPIA 最後の世界大戦」を書き下ろした。この時F先生まだ19歳。いよいよ漫画家としての産声を上げたところである。ここまでを藤子史の第一期としたい。
翌54年、藤子不二雄と合作ペンネームを改名し、上京。主に読切漫画を中心に描いていく。いくつかの連載も担った。しかし、オファーを受けすぎたため、パンクし、多くの原稿を落とす事件を起こす。この頃の浮き沈みは、A先生の傑作「まんが道」を読むと痛いほどによくわかる。当然ながら仕事の依頼は激減するが、56年からまた少しずつ再起を図っていく。このアップダウンの時期を第二期とする。
本格復帰後、特にF先生は児童向け雑誌での読切を書きまくる。そして59年、週刊少年サンデーの創刊と共に、大ヒット作「海の王子」を生み出すことになる。この読切量産期を第三期。
サンデーで「海の王子」を連載しながら、小学館・講談社の学年誌・児童雑誌に、「てぶくろてっちゃん」「すすめロボケット」などの連載を次々に発表していく。そしてアニメ活動などの中から、64年代表作となる「オバケのQ太郎」が生み出される。この連載多作時代を第四期としたい。この時まだF先生30歳。
64年~66年はオバQ時代と言っていい。これを第五期としたい。
67年から69年まで、つまり「ドラえもん」登場前夜までを第六期とする。ここでは後にさらなる脚光を浴びることになる「パーマン」「21エモン」「ウメ星デンカ」などが生まれる。しかし、漫画界は、青年漫画・大人向け漫画に力を入れていく時期となっている。
70年から76年くらいまでは、「ドラえもん」の大ブレイク直前期に位置し、これを第七期とする。「ドラえもん」を中心としながらも、この時期はとにかく多作。「新オバケのQ太郎」「バケルくん」「キテレツ大百科」「ジャングル黒べえ」などに加えて、SF短編も次々と発表していった。
そしていよいよドラえもんブレイク期。単行本が爆発的に売れ、藤子専門雑誌とも言える「コロコロコミック」も77年に創刊。79年に2度目のTV化され、国民的アニメへと成長していく。ここを第八期としたい。
80年に映画「のび太の恐竜」が公開、ここから毎年のように新作映画が作られていく。合わせてA先生の作品も含めて著作が次々とアニメ化されて、80年代は藤子アニメ黄金期。しかし体調を崩し(胃がんだったらしい)、87年頃に一旦著作がストップとなる。藤子不二雄もコンビ解消となり、藤子・F・不二雄となる。ここまでを第九期とする。
病気後は、新作マンガや短編などの発表はなくなり、ドラえもんの新作も月3本程度までとなった。しかしドラえもんの大長編は毎年書き続け、これがライフワークとなる。そして96年絶筆する。この最期の時期が第十期となる。
乱暴なまとめ方となるが、藤子Fマンガ史の10期を改めて羅列する。
第一期:デビュー~「最後の世界大戦」発表(~53年)
第二期:上京・トキワ荘入居~干される(54~55年)
第三期:読切集中発表(56~58年)
第四期:「海の王子」+低学年向け作品多数連載(59~63年)
第五期:「オバケのQ太郎」時代(64~66年)
第六期:ポスト・オバQの模索(67~69年)
第七期:「ドラえもん」+多作の時代(70~76年)
第八期:「ドラえもん」大ブレイク期(77~79年)
第九期:藤子アニメ全盛期(80年~87年)
第十期:藤子・F・不二雄時代(88~96年)
以上の大まかな歴史を頭に入れておくと、藤子作品を読み解いていく上での理解がしやすくなるものと思われます。是非参考まで。
★主な連載マンガ(連載スタートの年と代表掲載誌のみを記載)
1959年「海の王子」(少年サンデー)*合作
「やじさんきたさん」(たのしい一年生)
1960年「ロケットけんちゃん」(小学一年生)
「てぶくろてっちゃん」(たのしい一年生)
「名犬ラッシー」(たのしい三年生)
「しゃぼんだまぽんちゃん(たのしい幼稚園)
「ぴろんちゃん」(幼稚園)
1961年「すすめピロン」(小学一年生)
「かばんのぱっく」(たのしい一年生)
「ロボットロボちゃん」(たのしい一年生)
「かけろセントール」(たのしい三年生)
「チイちゃん」(幼稚園)
1962年「ロケットGメン」(小学二年生)
「すすめロボット」(小学一年生)
1963年「スーパーじろう」(よいこ・幼稚園)
「とびだせミクロ」(幼稚園・小学一年生)
「ろぼっとたろう」「すぴーどたろう」(よいこ)
1964年「オバケのQ太郎」(少年サンデー+学年誌)*合作
1967年「パーマン」(少年サンデー+学年誌)
「チンタラ神ちゃん」(少年ブック)
1968年「21エモン」(少年サンデー)
「ベラボー」(まんが王)
1969年「ウメ星デンカ」(少年サンデー+学年誌)
「モジャ公」(ぼくらマガジン)
1970年「ドラえもん」(学年誌)
「ぽこにゃん」(ようじえほん)
1971年「新オバケのQ太郎」(学年誌)
「ドビンソン漂流記」(こどもの光)
「仙べえ」(少年サンデー)*合作
1973年「ジャングル黒べえ」(学年誌)
「パジャママン」(講談社幼年誌)
1974年「バケルくん」(学年誌)
「みきおとミキオ」(学年誌)
「モッコロくん」(学年誌)
「キテレツ大百科」(こどもの光)
1975年「4じげんPぽこ」(学年誌)
「ポコニャン」(希望の友)
1976年「バウバウ大臣」(学年誌)
「きゃぷてんボン」(てれびくん)
1977年「エスパー魔美」(マンガくん)
「中年スーパンマン佐江内氏」(漫画アクション)
1978年「T・Pぼん」(少年ワールド)
1979年「ミラ・クル・1」(別コロ)
1980年「大長編ドラえもん」(コロコロ)
1983年「パーマン」(第二期)(学年誌)
「宙ぽこ」(別コロ)
1984年「宙犬トッピ」(別コロ)
1985年「チンプイ」(藤子不二雄ランド)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?