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正月エピソードの鉄板パターン2種/お正月だよ!ドラえもん祭り 2日目

藤子F作品は、とにかくお正月をテーマとした作品が多い。

その中でもいくつかの頻出パターンがあって、お年玉が少ない、という話題で始まる話や、お正月ならではの遊び、すごろくや凧揚げにまつわる話などは、よく見かける。これを①お年玉パターン ②お正月遊びパターン としてみよう。

前回に引き続き、「ドラえもん」の中からお正月作品をみていくが、この①②のパターンに沿ったものを抜粋してみたい。
まずはパターン②から。

『もしもボックス』
「小学四年生」1976年1月号/藤子・F・不二雄大全集5巻

ドラえもんの中でも繰り返し登場する有名なひみつ道具「もしもボックス」は、意外にもお正月に関する話で初登場する。

「もしもボックス」は、「もしも○○の世界だったら・・・」という思考実験を具現化してくれるひみつ道具。短編SFの名手・藤子F先生にとって、次々と思考実験を試みることのできる、特にお気に入りの道具であったように思う。

そしてその第一回目のもしも世界は、「凧揚げと羽根つきのない世界」という極めて小さい実験なのであった。本作を読む限り、この段階でもしもボックスが、大長編の「魔界大冒険」のような世界を作り出す道具になるとは、F先生も想像してなかったのではないだろうか。

本作のもしも世界では、お正月向きの子どもの遊びが無くなっていて、みんな暇を持て余している。そこにのび太が凧揚げと羽根つきを持ち込み、やったことのない皆に対して優位な立場を作ろうとする。

ところが当然のことながら、この世界でものび太は凧揚げや羽根つきは苦手なままで、初めて凧揚げと羽根つきをするみんなに、あっと言う間に越されてしまい、やっぱり悔しい思いをしてしまう、というオチ。

本作は、ちょっと世界のルールを変えても、結果的にこれまでの立場は変わらないという、案外深いメッセージを受け取ることが可能だ。さらに深読みすれば、例えばコロナ禍で業界のルールが多少変わったとしても、自社の業界内での立ち位置に変化はない、というようなものも読み取ることができそうである。

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さらに②パターンを見ていく。

『雲の中の散歩』
「小学二年生」1976年1月号/藤子・F・不二雄大全集7巻

『もしもボックス』と同じ月に掲載された『雲の中の散歩』は、のび太が生まれて初めて雲に届くほど凧揚げを成功させているところから始まる。先程とは逆の始まり方である。


スネ夫から借りていたそのタコは、糸が切れてしまい雲の中に入ったまま落ちてこない。

そこで、雲の中まで探しに行けと責められてしまい、泣きながらドラえもんに頼ると、「ふわふわぐすり」という、飲むと体が空気より軽くなる薬を出してもらって、雲の中へと飛び上がっていく。

タケコプターと違い、ふわふわと自力で浮かんでいく様子は、子供ながらにトキメク描写となっている。このF先生の作り出す浮遊感覚は、「パーマン」や「エスパー魔美」などでも出てくる美しい夢のある表現で、F先生の飛ぶことへの憧れが感じ取れるものとなっている。

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なお、凧揚げがうまくいかない話は、他にも『空高くたこを落とせ』などがある。

次にパターン①を見ていく。

『出てくる出てくるお年玉』「小学四年生」1979年1月号/藤子・F・不二雄大全集7巻

いつものようにお年玉を思うように貰えなかったのび太に、ドラえもんは「お年玉ぶくろ」というひみつ道具を出す。

松・竹・梅の三種類あって、何らかの行為をするとお金が出てくるという、一攫千金も夢ではない道具。もちろん、そんな簡単な話ではないが…。
以下に3種類をまとめてみる。

梅→「ごほうび型」・・・人のためにいいことをして、「ありがとう」と言われると10円が出てくるが、しかられるとご褒美が取り消される。
松→「なぐさめ型」・・・叱られたり痛い目に遭った時お金が出る。ちなみに半年以上入院するような痛い目に遭った場合でも1284円しか出てこない割りの悪さ。
竹→「せつやく型」・・・無駄を省くと省いた分お金が出てくる。

この中で一番盛り上がるのは「せつやく型」である。例えば、一度使ったチリ紙を広げて乾かしまた使える状態にすると 3円出る。のび太は調子に乗って次々鼻をかんでティッシュを広げていくが、これが逆に無駄使いと判定されて、お金が消えてしまう。

実はこのエピソードは、個人的に思い出深い作品である。
というのは、この「せつやく型」の一例で、短くなった鉛筆二本を根元でホッチキスで一本に止めるとまだまだ使える、というワンシーンがあって、これは31円も出てくるヒットアイディアであった。

これを見た少年時代の僕は、何を思ったか夏休みの自由研究・発明の宿題で、実際に短くなった鉛筆をくっつけて提出するという暴挙に出た。そうしたら驚くことに、理科の教師がこれは凄いアイディアだと、優秀賞を付けてくれたのである。

この教師が「ドラえもん」の読者だったらどんな反応だったのか? と考えてしまう他愛のない思い出でした。

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★お正月特集、まだまだ続くよ!

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