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時給増加率が映すバブル崩壊後の日本を私の経験をもとに考察

こんちは!副業社労士まさゆきです。


「バブル崩壊後の日本の凋落」と聞く度、私は複雑な思いになります。1991年~2020年の間、私は会社員でした。自らの経験を振り返り「何がいけなかったのだろう」と自問自答します。今日はそんな話です。

3月26日の日経朝刊に、「日本の賃金「時給」は増加」が掲載されました。2013年から22年の間、日本は、給与は増えていないが、時給は増えている、という記事です。この何が問題なのか、私の会社員の経験から考察してみます。


1)日経記事が指摘した数字

厚労省の「毎月勤労統計調査」によると13年⇒22年比較では
①    実質賃金は+4%しか増えていない
②    ところが、時給は+12%伸びている
③    原因は労働時間の減少。22年は13年に比べ△132時間減少している。
経済協力機構(OECD)によると、日本の労働生産性変化率(13年⇒21年比較)は
④    会社員1人あたりだと△0.2%(先進7ヶ国最下位)
⑤    時間あたりだと+0,8%と4位に浮上

2)賃金増加率、労働時間削減率と時給増加率;欧米との比較

欧米各国の賃金増加率と労働時間削減率を元に時給増加率を算出しました。

時給増加率=実質賃金増加率÷年間労働時間減少率

OECDデータを元に1991年⇒2020年の変化率を計算しています。日本のデータは、サービス残業も含めた実質労働時間を反映するとされる「総務省労働力調査」を用いています。

実質賃金増加率;厚労省ホームページ「OECD.statのAverageAnualWagesより作成」
年間労働時間;社会実情データ図鑑「年間実労働時間の国際比較」
(ブログの最後に使用したデータを掲載しています)

3)数字が示す日本経済の停滞

日本以外は「実質賃金増加率」と「時給増加率」は比例して増加しています。同じ労働時間働いて、実質賃金と時給が比例して増加する普通の姿です。日本だけが、「時給は125まで増加したが、実質賃金は103と据え置き」…「実質賃金は増えず仕事が減り労働時間が減少、結果的に時給が増加」したのです。健全な経済状態ではありません。この1991年~2020年はバブル崩壊後日本経済が停滞した期間です。

4)バブル崩壊後なぜ時給は増加したのに賃金は増加しなかったか、私の経験を振り返る

[デジタル化による省力化で人員削減]
1988年に私は入社しました。当時は携帯電話もメールもありません。営業の私は、外出したら1日3回会社に電話する以外、会社は連絡出来ません。今では信じられないでしょうが、当時普通でした。
2020年、営業は携帯・メールですぐ連絡が取れます。出張中でもTeamsで会議に出席可能。効率は上がり、感覚では、1991年に100の時間かかった仕事が今は60の時間で出来ます労働時間は減り時給は上昇します。
デジタル化による省力化の余力を、欧米はビジネスモデルの変革・新技術の開発に費やしましたが、日本はバブル崩壊から立ち直るため人員削減に使いました。1991年の5名分の仕事が省力化により3名で出来、2名人員を削減し利益を確保、という事業再構築を進めました。

[業務の定型化により短時間・派遣労働者が増加]
受注部門を例に話します。
1990年代、受注担当は取引先と納期交渉等交渉能力が必要でした。外出した営業と連絡が取れないので自分で交渉するしかない。携帯・メールが浸透すると、営業に連絡が取れ、営業が取引先と交渉します。受注担当には定型業務が残ります。  
私の入社時、受注部門には、受注状況で計画を調整する課長がいました。営業が外出して連絡が取れないため、必要な役割でした。
携帯・メールで営業活動が効率化されると、会社は「生産調整も営業の仕事」と言います。受注部門の仕事は更に定型化します。
定型業務の増加は、時給が比較的低い短時間・派遣労働者の増加に繋がります。実質賃金が上がらなかった要因です

結果、日本は変革の余裕がなく欧米企業に遅れを取りました。DA革命で同じ轍を踏んではいけません。DX合理化の余裕はビジネスモデルの変革・新技術の開発に費やすべきです。

ではまた次回


社会実情データ図鑑より
厚労省ホームページより「OECD.statにおけるAverageAnualWagesより作成」


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