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人的資本投資で企業もクールジャパンを目指そう

こんちは!副業社労士まさゆきです。
人的資本への投資が話題です。東証プライム市場では、PBRを1倍以上にすることが求められ、企業は次々「人的資本への投資」を表明しています。海外投資家の評価を得て株価上昇を狙ったものですが、大部分の企業はまだ人的資本投資に懐疑的です。
他方、日本ほど人的資本が生み出す価値で世界中から評価されている国はありません。手塚治さん以降培われた人的資本が開花したアニメは世界を席巻しています。洗練されたおもてなしを基礎にした観光は日本の重要な産業です。料理人が生み出す個性で日本の料理は世界中を虜にしています。クールジャパンの大半が無形資産であり、人的資本に立脚しています。
日本企業も人的資本投資でクールジャパンを目指そう、今日はそんな提案です。

《人的資本に投資しない国日本》
人的資本は無形資産の一部です。無形資産は情報化資産・革新的資産(研究開発・著作権・デザイン・ライセンス等)と経済的競争力(ブランド資産、人的資本・組織改革)に分類できます。
無形資産への投資額は日本と欧米で大差ありませんが、日本は研究開発投資の割合が高く(約40%、欧米は15~20%)人的資本への投資割合が低い(4%、欧米は10~15%)。欧米が人的資本投資に注力する一方、日本の投資は進みません。

日本企業の人的資本投資の障害となっている原因は下記です。
◎費用対効果が明確でない
◎製造業の割合が高く、無形資産に対する認識が低い
◎無形資産の財務的評価方法が定まっておらず資金調達に理解が得られない
◎企業の横並び意識が人的資本投資を躊躇わせる。
詳細に見ていきます。

《費用対効果》
最新の研究で検証されつつあります。

①人的資本と企業価値の相関検証
PwCコンサル社が欧米グローバル企業300社の人的資本の指標より分析したところ、「社員1人当たり育成時間」と「女性管理職比率」の増減がPBRの増減と相関性が強いことが確認されたそうです。PBRとは株価純資産倍率のことで、株式時価総額(会社の価値)÷純資産で求められ、投資効率がいい会社は倍率が高いことになります。
この300社の社員育成コストは2013年⇒2021年比で北米5倍、欧米3.7倍です。エンゲージメントスコア(社員の貢献意識を測定)にも気を配っており、北米では4倍、欧州では2.4倍です。欧米では人に投資して企業価値を上げようとしています。

グローバル企業300社への独自調査で見えた「人的資本」が企業価値向上に与えるインパクトと人的資本開示の急速な拡大 | PwC Japanグループ

②日本の検証例;労働生産性と教育訓練ストックの相関性
独立行政法人経済産業研究所の森川正之副所長「企業の教育訓練投資と生産性」によると、日本の教育訓練ストック(過去5年の能力開発費を元に算出)が1%上昇すると、労働生産性が0.027%上昇するそうです。上昇率は製造業では低く(0.013%)、サービス業では高い(0.039%)結果です。

企業の教育訓練投資と生産性 (rieti.go.jp)

《製造業の割合が高く、無形資産に対する認識が低い》
欧米ではサービス業が経済の中心ですが、日本はまだ製造業が中心です。製造業は企業価値における有形資産の割合が高くなります。下の円グラフは各国の有形資産と無形資産の割合を示していますが、日本は有形資産の比率が高いため、無形資産に対する認識が低く、人的資本への関心も低い。先に示した通り、教育訓練投資に対する労働生産性の伸びは製造業で高くはなく、関心が低い原因です。

第3節 無形資産と経済成長:通商白書2022年版 (METI/経済産業省)
《無形資産の財務的評価方法が定まっておらず資金調達に理解が得られない》
マクロ経済では無形資産に対する会計基準や評価方法が拡がりつつありますが、企業単位ではまだです。ただ、「人的資本開示」が2023年3月期の有価証券報告書から上場企業に義務化されます。欧米では「人的資本開示」が企業評価に繋がっており、今後変化が見られるでしょう。

《企業の横並び意識が人的資本投資を躊躇わせる》
日本人の同調性がここでも見られますが、人手不足が否応なく風穴を開ける気がします 

アニメ・観光・おもてなしの心・料理…人的資本が生み出す価値は「人に依存するため模倣が難しく、高収益が持続」します。投資の価値はあります。

ではまた次回

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