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【1/2エッセイ】レシピを覚えられない私は、記憶の宮殿に入る。

✍️1/2エッセイ とは、エッセイ(私の体験、思い)にコラム的要素(リサーチ)、もしくは自作小説を足したもの。私の造語です。


つくづくアプリは便利だと思う。
何より、アメリカにいながらにして、日本のレシピ投稿サイトを見られるのが有難い。

よく見るレシピはすぐにチェックできるし、本当に重宝している。

ただ、それだけ有能なアプリなのに、
そのタップすら面倒臭くなってしまう時がある。

そんな時、すぐに頭の中にレシピをパパっと思い浮かべる事ができていたら……。

そして数十年毎日キッチンに立っている私なのに、なかなかレシピを丸暗記できない自分に落ち込む。

目分量で作れば、味が濃かったり、その逆も然り。無駄にカロリーを摂取するのは控えたい年齢。

そもそもどうしてレシピを覚えられないのだろうか。これがもし好きな名探偵コ〇ンに出てくる登場人物と年齢なら喜んで覚えられるのに……

いやはや、もしかしたら私の記憶を司る脳に問題があるかも知れない。
それならと、記憶に関する本や記事を探す。

すると、世界の記憶力トーナメント(そんな大会があるのか)のチャンピオンでもあるEd Cookeが掲げた5つの記憶力向上法が、TIMEの"The 5 Best Ways To Improve Your Memory"にて書かれていた。

そしてその中の"Think spatially"という項目が妙に気になり……spatiallyに考える、空間的に考えるってなんだ?と、何だか未知の領域を感じてしまうその言葉に、更に私は追求を重ねた。

すると、memory palace(記憶の宮殿)という言葉に辿り着いた。

「なんだなんだ記憶の宮殿って」と、おとぎ話にしか現れないような「宮殿」という空想的な響きに、memory palaceへの興味がマシマシになり。。。

そこで分かった事は、「記憶の宮殿」とは古代ギリシャのSimonides(シモニデス)という詩人が考えた記憶術で日本では「場所法」とも呼ばれていると。

先述の記憶力チャンピオンのEd Cooke氏のみならず、他のチャンピオンも使用している脳科学的にも理に適った記憶法であることも分かり、

脳の海馬を刺激する空間記憶を使って、記憶したい対象物と場所を関連付けて覚える記憶法らしい事も分かりました。

さてさて、私たちの記憶。
常日頃から情報を五感でキャッチしていますが、余程それに意味やインパクトがない限りすぐに忘れてしまいます。

電話番号がいい例ですもんね。

ですが、繰り返したり、そこに「場所」というエッセンス加えると記憶したい対象物が長期記憶に移動するそうです。

記憶のプロセスとは、

Sensory Memory(感覚記憶
 聴覚情報は3-4秒留まる。視覚情報は0.5秒ほど。必要な情報は短期記憶へ。
Short-Term Memory(短期記憶)
↓ 20秒から30秒留まる。繰り返される事で長期記憶へ。
Long-Term Memory(長期記憶)
一か月以上留まる。その間も繰り返すことで、記憶の定着化が図れる。

ですので、記憶の宮殿こそ、この長期記憶に移動するための記憶法でもあるという事。

さて、気になるその方法ですが、ざっくりいうとこんな感じ。

  1. 記憶したい対象物を決める。

  2. 馴染みのある場所を想像する。

  3. その場所に記憶したい対象物を関連づける。(あり得ない発想でOK)

  4. 対象物を順番に回る。繰り返し。(物語を作る)

❓はぁ、って感じでこれだけじゃよく分かりません。そこで買い物リストで例をあげてみました。記憶したいもの↓

・ベーグルパン
・トマト
・ベルペッパー
・きゅうり
・人参
・ほうれん草
・キャベツ
・くるみ
・ハワイアンチップス
・牛乳

とりあえず、後日買わないといけないものをいくつかピックアップ。

そして早速記憶の宮殿へ。
私は、自分の家を想像してみました。

以下、私の記憶の宮殿ストーリーです。突飛ですが悪しからず。はじまりはじまり。

『私は「ベーグルパン」型のドアを開けた。防犯上、真ん中の穴は塞がれている。

ベーグルパンのドアを開けたら「トマト」型のシューケースがあったので靴を入れた。トマトのヘタが蓋になっていてそれを開けて上から靴を入れないといけない非常に使いにくいものだ。

下を見ると「ベルペッパー」の形をしたマットレスがいくつも敷かれている。とりあえず、そのマットの上を進んだ。ああ、なんと踏み心地がよいマットなんだろう。

すぐに台所にたどり着いた。しかし真っ暗だ。だんだん暗闇に目が慣れてくると、奥に何かを発見。それは「キュウリ」と「人参」の懐中電灯。

私はその二本を使ってすぐに明かりを照らした。その瞬間、天井から何かが落ちてきた。

ギャーっと叫んで恐る恐る床に懐中電灯をあててみると、そこにはしなびた「ほうれん草」が……

一体誰がこんな事を、と天井を照らすと……
そこには、小さなキャベツ王子が顔を覗かせていました。

小さなキャベツ王子は聞けば遊び相手が欲しいとの事だった。そしていきなり、戸棚から「くるみ」と「ハワイアンチップス」を出してきた。

さらにコーヒーメーカーでコーヒーを作り、「ミルクいる? 」と私に聞いてきた。

タメ口が気になったが、そこは黙って首肯しました。

途端、キャベジーン、と叫んだかと思うと、小さなキャベツ王子の頭にいつの間にか「牛乳」が現われていた。

そしてキャベツ王子は何事もなかったかのように、私のコーヒーにミルクを注いでくれた。そうして私はキャベツ王子と午後のティータイムを過ごしたのだった。完』

というストーリーが出来上がりました。。。

なんなんだこれ、と思いながら想像のままに手を止めず文字を打っていたら、確かに買い物リストが頭に入っています。物語ってすごいですね。

ただ、忘れてはいけない。
私の命題は「レシピを覚えること」
思考を巡らせ、最近子供に良く作るバタークッキーのレシピをチョイス。

・無塩バター 100g
・砂糖    60g
・バニラエッセンス 気持ち
・卵黄    2個
・薄力粉   200g

材料はたったの五つ……ですが、問題は「量」です。
とにかく私は心の中の宮殿に入ります……
今度の設定場所はお風呂場。

『まずお風呂場のドアを開けて、「1スティックバター」石鹸でお顔を洗った。贅沢に1スティク分使った。もうお顔がドロドロだ。

そしてオーガニックの「砂糖」を「60秒」お肌に刷り込んだ。ただひたすら60秒間、お肌と対話する。

そして顔を洗う。あぁ、スッキリ。さて、バスタブのお湯には「バニラエッセンス」を垂らそうか。そうほんの気持ちだけ。 

お湯に浸かれば「パパっと卵黄パック」を。
そして体を洗って、お風呂上りには保湿効果の高い「薄力粉を200回」体にぶっかける。

エイヤッと普段のストレスをここでぶつけるのだ。これで今日も私は優雅なお風呂タイムはを過ごせた。完』

と、これまたあり得ない、いやあり得なくもないストーリーに仕上がりました。
ただ作ってみて分かったのは、覚えたい対象物と場所は関連付けられても、数字は手強い。

だからこそ、普段よく使うシチュエーションと組み合わせたりしました。

バターは単純に1スティック(1スティック約100グラムなので)で分けられているので、それで覚えれば良し。

「砂糖を60秒」の60秒は筋トレでよく使う馴染みある数字。

卵黄2個の2個は「パパっ」という破裂音二回でクリア(無理矢理)  

「薄力粉を200回」は、なかなか想像し難い状況を修飾する数字として。

こんな風にあり得ないと思うような物語を作る事が意外に楽しく、予期せぬところで童心に戻ってしまいました。

そして、記憶法としては手軽で万能でありながらも、答えをすぐに確認できる状況がある場合には、特段必要ではないのかも、という答えにも至りました。

逆に、試験を受ける時やしっかり長期的に覚えたい物事がある場合は、記憶の宮殿を使う方が効率的かと。

 と、今後も時と場合によって、私は記憶の宮殿に入る事にしました。
 さて、みなさまの宮殿はどんな宮殿ですか?

キャベツ王子。。。
キャベツ太郎がきっと、
いや絶対に頭のどこかにいたはず。。。

参考文献:参考:Psych 101: Psychology Facts, Basics, Statistics, Tests, and More! (Adams 101 Series)P91, PAUL KLAINMAN

画像:Canva生成

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