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8/31 夜スク「子どもの学びと育ちのために大人たちは何ができるのか」開催レポート

8/31に、夜スク「子どもの学びと育ちのために大人たちは何ができるのか」を開催しました。

当日は、保護者・PTA役員・学校関係者・教育行政の方々など様々な立場から、また多摩地域全域の市町村から、さらには茨城や長野や熊本など遠方の地域からもご参加いただき、総勢65名の方々で参加者同士の対話を楽しみました。

地域や立場を超えて、子どもを中心に対話をすることで、つながりが生まれ、励まし合い、小さな動きを大きな動きにつなげていく。
そんな時代の変化のうねりを感じるイベントとなりました。

イベント当日の詳細をレポートしますので、御覧ください。

イベント趣旨

まず最初に、実行委員会の2名から、趣旨説明がありました。

主催者

不登校が20万人(33万人)と言われていて、学校は子どもが一番多くの時間を過ごすところなのに、なんで行けない子がこれだけたくさんいるんだろうという、単純な疑問からこのイベントは始まりました。学校に行けないことで悩む子どもと、その子どもとどう向き合ったらいいのかと悩む親。みんな、どうやったらもっと楽しくなるんだろう?そう考えていた時に、小金井市の取り組みを知り、これをさらに地域を超えてやったら何かおもしろいことになりそう!と、声をかけていったらどんどんと広がっていきました。」
「PTAがつらいという声も多く聞き、改革しようとしてもそれも大変で嫌になってしまうという声も聞き、なんでPTAもこんなに楽しくないんだろう?と思っていましたところに、小金井市の取り組みを知って、一緒に始めました。
今回の実行委員会のメンバーも、様々な地域から参加しています。立場も、保護者・P連会長・地域住民・教師・行政関係者など様々。みんなで、どうしたら子どもを中心に大人が手を取り合ってやっていけるんだろう?と、たくさん対話を重ねてきました。その中で、意見を出して聴き合っていくことの素晴らしさや面白さに、改めて触れることができました。
今日も、みなさんと一緒に、子どもを中心に楽しい深い対話ができ、そこからみんなで手を取り合っていくということができればと思っております。」

事例紹介

その後は、事例の紹介が行われました。

◆小金井市PTA連合会「ワールドカフェ」 前田薫平さん
年に1回、市内の各校のPTA本部役員が一堂に会するPTA連合会の総会後の懇親会があります。そこに前年に参加した際に、地区ごとに分かれて交流が行われていなかったんです。その時に、小金井市内の小学校の先生方の研修会でワールドカフェをやったのを知り、これをPTA総会でやったらどうなるだろう?となり、やってみました。
最初は、やり方を知っている人もいなかったので、先生方に教えてもらいました。さらに、テーマをどうしようか考える中で、教育長・校長・先生方に相談し、どんどんと巻き込んでいきました。そうやって皆さんに内側に入ってもらって巻き込んでいくと、不思議と不満が出ず、みなさんにご協力いただけた。そういった形でうまくできたのかなと思います。
ただ、来年はどうなるかわからない。今回は、反対意見があっても前会長が「やります!」と言い続けたので実現できました。

事例紹介

国分寺市「かたぐるまの会」 小山廣司さん
国分寺6小をホームグラウンドとして、子どもたちと遊ぶ活動をやっています。せっかくなので少し活動をご紹介します。
(火打石から火おこしをする様子を実演)
こういうのは、イベントとか大きなとこでじゃなくてもできます。家の近所の子どもをあつめて、「ちょっと火起こししよう」と。そうすると、子どもは面白いことがあると、すぐに友達を連れてきて集まってきて、遊びの輪が広がっていきます。そうやって、子どもたちと遊ぶ活動を行っています。学校との関わりという部分では、地域をつなぐという意味で、年に2回大きなお祭りを学校で行っていたり、PTAの中の遊びのグループのサポートをしたりしています。

8/19 「こんな学校だったらいいいな!ワタシは、ボクは、こんな学校へ行きたい!」 当日ファシリテーター 幡野雄一さん
「子どものためっていうけど、子どもの声は子どもに聴いてみないとわからないじゃん」ということで、今回のイベントに先駆けて、子どもの声を聴くイベントを実施しました。大人立ち入り禁止の当日の様子をご紹介します。

<当日やったこと>
・「学校の楽しいところ」「学校の嫌なところ」を出してもらう
・「嫌なこともたくさんあるのになんで学校に行くんだろう?」というテーマで30分ほど対話
・「どんな学校だったら行きたいか?」自分たちで校則を3つ考える

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子どもたちも、普段一番多くの時間を過ごしている場所なので、いろいろと思うことはあるんだということはわかりました。
印象に残った言葉として「学校でしか学べないこともあるし、学校外でしか学べないこともある。どっちもぼくたちには必要。だから学校に行くのも行かないのも自分で選べたらいい。でも、学校に行かないというのは勇気がいることで、それを選択するのはすごく難しいことなんだ」という発言があった。
彼らも、学校だけでは学べないことがあるということにも気が付いていて、地域の大人の人たちと話したり、普段触れ合うことのないような人たちと一緒に過ごす場所を、彼らも必要としているのではないかと感じます。
だとすると、彼らが学校に行くのも行かないのも、自由に選択できるような土壌をつくることが、大人にできることなのではと感じました。

そこで、参加者の方から質問がありました。
「今の教育は、大人たちが良かれと思ってやっていること。本当に子どものためなのか?というところに疑問がある。その中で、大人にできることは何なのか?」
「まずは、子どもたちの声にちゃんと耳を傾けていくということ。それ以上に、子どもたち自身が自分で必要だと思うものをつくっていけるようにしていくことが大切なのでは?ただ、子どもだけではできないこともあるので、大人がサポートしていくのがいいのでは。」
「今の学校の中で、それは果たしてできるのか?」
・・・と対話が始まり、全体での対話の時間へと移行しました。

ワールドカフェ

司会の小平からワールドカフェの説明がありました。

ワールドカフェとは

本日のワールドカフェの問いはこの3つ。
◆ラウンド1:今、子どもたちに必要なことやものは何?
◆ラウンド2:そもそも、「子どものため」って何だろう?
◆ラウンド3:それぞれの地域や現場で、これから何をしていく?
この問いについて席替えを重ねながら、対話を深めていきます。

ラウンド1「今、子どもたちに必要なことやものは?」
<挙がったキーワード>
余白・自由・時間・からっぽ・何もない時間・空き地・道草・ふるさと・
・自然・遊び・楽しさ・わくわく・大人同士が遊ぶ・教員との遊び時間・自分で考えること・自分で選択すること・受け入れてもらうこと・自己肯定感・リラックス・安心できる場・気持ちの余裕・大人たちの余裕・親との会話・放っておいてくれる大人・サードプレイス・つながり・異年齢の関わり・失敗・挑戦・自信・自立・生き抜く力

ラウンド2「そもそも子どものためって?」
<挙がったキーワード>
何もしない・子供が決める・自律した大人になるため・選択肢を増やす・自分のものさしをつくる・子供のための失敗・体験を人生につなげる・大人はフォロー役・安心で自由な環境を整える・子供と関われる時間は短い・大人が楽しむ姿を見せる・人生の生き方・幸せになってもらいたい・大人も幸せ子どもも幸せ・あるがまま生きなさいと伝えたい・
子供は望んでいるのか?・子どもにとっては迷惑では?・子どものためは誰が決める?・あなたのためとは何が違うの?・~~のためは便利で危険な言葉・子どものためは上から目線では?

ラウンド3「それぞれの地域や現場で何をしていく?」
<挙がったキーワード>
何もしない・多様なものにつながる・自分が楽しむ・一緒に楽しむ・みんなで考える・みんなでつくる・環境をつくる・しばりのない居場所をつくる・自由な場所をつくる・安心できる場をつくる・遊ぶ場をつくる・放課後カフェをつくる・子どもを支える人材づくり・信頼する・子どもに問いかける・まずは受け入れる・話し相手になる・子どもに聴いてみる・世の中のことにつなげる・大人の仕組みを変える・学校や役所にはたらきかける

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シークレットゲストによる対談

そして、ここで各グループから内容を共有してもらう予定でしたが、​時間のため割愛し、最後に全体を統括して、シークレットゲストのお二方からコメントをいただきました。

シークレットゲストは、このお二人。
◎世田谷区桜丘中学校校長 西郷孝彦さん
◎小金井市教育委員会教育長 大熊雅士さん
校則を全廃したことがメディアでも取り上げられている西郷さんと、PTA連合会総会の懇親会でワールドカフェをしかけるなど、新しい取り組みを生み出し続ける大熊さん。今、話題のお二人が、参加者の中から登壇しました。

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大熊さん(以後敬称略)「まだまだみんな話を続けたいと思うんですが(笑)。今、学制発布依頼の大改革をしないといけないときに、教育委員会がこうやれというのでは、先行き危ないと思っています。だから、PTAの人とかにも話を聞いて、これでいいかな?と選択肢を出させてもらって、それに対する意見を聴きながら先に進んでいくことということが重要だろうと思っています。もうトップダウンはきかない。みんなで話し合いたいなと。今日もすごく勉強になった。これからの未来はみんなでつくっていきたい。その思いが今日のこのカタチになったと思います。」
西郷さん(以後敬称略)「不登校の話が最初に出ました。隠れ不登校も入れると30万人。子どもたちが学校に行きたくないと苦しんでいる。これは、学校のあり方が問われていると思います。例えばe-learningなどお家で勉強もできる中、なんのために学校に行くの?という話ですよね。この前、アフリカのケニアの教育関連の人と話して、日本の学校ではなんで若い人が自殺するのか?と聞かれて、答えに窮しました。なんて説明したらいいのか。同調圧力とか、一回外れたら元に戻れないなどの話をしたが、不思議がっていました。なぜ楽しい子どもたちが死ななければならないのか、と。外国からみても不可思議な日本の状況があるんです。みなさんの力を借りて変えていかないといけないと思いました。今日、ボードを見させていただくと、皆さんの考えが私とまったく同じ。皆さんの考えをどんどん世の中に発信していって、楽しい学校をつくっていきたいなと思っています。」

参加者の方からご意見がありました。
「校則をなくしたということはすごいと思っていて、今まで日本の学校は、いい学力で結果を残した子たちだけが、校則がないような学校に行けて、自由さは選ばれた人しか得られない。それは子どもにすごく失礼なことをやっている。能力的に優れた子しか自由は与えられないということこそが、メッセージになっていて。そんなくだらないことを許してはおけないと思っている。なので、感動しました。」

大熊「今の話ですが、学校がめちゃめちゃ荒れた時代が80年代。学校が荒れたから、校則がめちゃめちゃ厳しくなった。その後に、「不登校・いじめ・自殺・虐待」が増えたんです。この4つ全てが、校則が厳しくなった後に増えている。その前の80年代に学校が荒れたのはなぜかというと、学校を輪切りにして中学の成績で高校が決まるということにした。そんな成績じゃ高校に行けないと子どもたちに圧力をかけた。その圧力が子どもたちを荒れさせて、それを止めるために校則があって、その校則で今の4つの悪がはじまったんです。このことは本気に考えないといけないと思う。」
西郷「(先ほどの参加者の意見と)まったく同じ発想から力をもらっている。もともとは校則のある公立学校だった。私立行ってキラキラした子がいる中、昔ながらの公立は暗くて。かわいそうだなと思った。収入で、チャンスがある子はそういう自由なところに行けて楽しそうで。うちの生徒は、公立学校でいろな環境の子がいて、古臭い校則があって。そういう学校に負けない楽しい、環境によって差別されないように、というところでがんばってきた。なので、今おっしゃっていただいた悔しさはよくわかる。子どもたちに、そう感じて欲しくない。」
大熊「でも、校則なくしちゃったとき、子どもたちはどうなったの?」
西郷「今、うち校則はないんですけど、子どもたちは「そういえばないんだね」みたいな感じ。他の学校でスカートの長さとか聞くと、「そんなのあるの?おもしろいね」という反応。空気みたいな。最近話題になって初めて知ったと言っている。」
大熊「それで学校がうまくいくためには、何かあると思うんだけど?」
西郷「それは子どもと先生たちの関係です。これは違う。先生が子供を管理している学校だと校則が必要なんです。うちは管理しない。何もしないというのが大事。子どもに対して何もしない。生活指導もない。」
大熊「学校を運営していくときに、ルールみたいなのはないの?」
西郷「ない」
大熊「なんで学校が組織として動いていくの?」
西郷「それは、法律はあるんです。学校も国内なので、日本の法律はある。」
大熊「日本の法律はある。そうだよね。授業が始まるの時間とかは?」
西郷「ない。それは日本の法律にはないから。授業が始まる時間はあるけれど、何時に教室にいなさいというルールはない。」
大熊「どうやって授業がはじまるの?」
西郷「いつのまにか生徒たちが集まっていて、先生が来る。大学みたいなもんです。最近の大学はチャイムもなりますけどね。」
と、まだまだ話を聞きたいところでしたが、ここでお時間が終了となりました。

私たちは、これから何をするのか?また、何をしないのか?
今回のイベントは、たくさんの問いが生まれる機会となりました。

こういった機会を、毎年1年に1回、続けていくことに意味があるのではと思っています。今後も継続的に取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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イベント後に寄せられた声

・こんなに一生懸命に子どもの側から考えようとしている面白い大人が沢山いるのは希望です。
・連鎖的に学校教育が変わっていくムーブメントを感じました。
・ワールドカフェは小金井の市議会でもやっていたようですが、ブーム?面白かった!
・対話の力を感じました。対話が教育を力強く動かしていく。うねって、巻き込んで、広がっていくことが未来に繋がると思います。
・皆さま初対面なのにも関わらず熱く語りだす方が点在。志や思い、そういったものが似通った人たちと対話する時間は本当に楽しく幸せな時間でした。それをまた勇気に変えてそれぞれの学校、地域、社会で影響を広げていければ。有意義な濃厚な時間でした。
・教え諭すことと自分の価値を押し付けることは紙一重。だから教育は難しい。でもその葛藤のあしあとは確かに子どもの心に刻み込まれる。
・民の場所に行政の方々が能動的に参加しているのが印象的でした。吸収したい、変えたいという気持ちはみなさん一緒なのだと思いました。
・みんなで楽しむというのはこんなにパワーになるんだなと思いました。
・楽しかった!また来年も是非開催してください。

東京新聞が取材にいらしてくださいました

2019年9月4日 東京すくすく


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