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【シェア街住民インタビュー】香りとおいしさに包まれるカフェバーを運営 レンタルキッチンを卒業する平賀なお美さん

今回は東京・浅草橋のゲストハウス「Little Japan」のシェア街キッチンでアロマをテーマにしたランチを提供されていた、「アトリエ リクト」の平賀なお美さんにお話を伺いました。「アロマに馴染みのないお客さんのために工夫したことは?」「シェア街キッチン卒業後の活動は?」などを聞いてみました。

アロマと食を組み合わせたカフェバー

ご自身の活動内容を教えてください。

平賀なお美さん(以下 平賀さん):いろいろなジャンルのことをしているのですが、アロマ関係で言うと「香りをつくる」こと、具体的に言うとルームフレグランスをオーダーメイドで作ることが多いです。コロナ禍になる前はレッスンもしていましたが、こういうご時世なのでいまは休止中です。

対面が難しい時期なので、調香のオーダーをいただく方にはイメージをすり合わせるために、サンプルの郵送などやりとりを何回かしてお作りしています。

Little Japanで活動されるきっかけになったことは?

平賀さん:アロマをやる前から、カフェを運営してみたい、という願望がずっとあって、飲食の場で香りを楽しむ「アロマ喫茶」という取り組みを5~6年前からちょっとずつやっていたんです。
定期的に安く借りられる場所を探していたら、知り合いがLittle Japanを教えてくれました。
問い合わせしたら、第1火曜日がたまたま1席空いていて。それが2年前の秋で、香りをテーマにしたランチを出していました。

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イランイランのカレー (ミントライス添え)

いまの「アロマと食」にいたる経緯は?

平賀さん:料理やお菓子を作るのは、ものごころつくころから好きだったんですよね。明るいカフェよりバーカウンターのような暗がりの中の方が子どものころから惹かれるところがあって。
出身の北海道根室市は漁師町で田舎なので、飲み屋のような雰囲気のお店が多いのですが、バーカウンターがあって喫茶もやっているお店に親に連れて行ってもらうとご機嫌でした。5歳いっているかいっていないかのころのことです。おぼろげに、家で値段を決めてメニューを作って遊ぶのが好きだったのを覚えています。

小中学校時代は飲食につながることは特にやっていなかったのですが、中学、高校くらいから詩(ポエム)を書いていましたね。友達が書いた詩に曲をつけて喜ばれたのがきっかけでしたが、そのうちに曲だけでは物足りなくなり、自分で詩を書くようになりました。
高校を出たあとは看護学校に進み、看護師に。積極的になりたいと思っていたわけではないのですが、資格を持っていれば働いたお金で好きなことができる、という考えでした。
看護師をやりながら音楽をやったり、デザイン学校に行ったりして、2本立ての生活をしばらくしていましたが、29歳くらいのときにデザインをやりたい気持ちがたかまって、勢いで一度看護師を辞めてしまいました。
そのときにちょうど、「ボランティアでよければやってみませんか」というご縁があり、それがきっかけでデザイン会社に半年くらい勤めました。そこで人との付き合いが広がったので、行ってよかったと思っています。
デザインのことはそれきりですが、子供の頃から写真を撮ったり何かを作ったり工夫するのが好きでそれは続いています。結局、クリエイティブなことが好きなんですね。

そこからどうしてアロマの道に進んだのでしょう?

平賀さん:カフェでもアロマでもない時期が長くて、なんでアロマだったんだろう、というのは自分でもよくわからないんです。
でも、強いて言えば、きっかけは看護師時代。ずっと循環器病院に勤めていて、その専門分野を極めたくて32歳で上京しました。その病院で看護研究をする際、メンバーから「いつも固いことばかりだからアロマはどう?」と話があって、アロマで痛みをやわらげることができるかという看護研究をしたことでしょうか。

そのあと2~3軒の病院で勤め、38歳で辞めるときにリラクゼーション/ヒーリング系のことをしようと考え、アロマ空間デザイナーという資格を取りました。アロマ空間デザインは最近知られるようになってきましたが、当時はあまりなかったですね。
リラクゼーション系に進んだのも、看護師をずっとやってきたからケアというものが嫌いではなかったし、違うアプローチでやったらどうだろう、と思っていたのかもしれません。それを活かしつつ、ヘッドマッサージの資格も同時に取って、それをメインの仕事にしていました。

アロマにしぼったのは最近です。
リラクゼーションとアロマでやっていましたが、アロマというとセラピーを求められるんですよね。
でも、これにはこれが効く、というような薬みたいな使い方はあまり好きではなくて。アロマは「いい香り」と感じるだけでいいのではないか、と思うんです。
それで、3~4年前からアロマ(香り)にしぼりました。
「アトリエリクト」をつくったのもそれくらいの時期ですね。「リクト」とはアイスランド語でにおいという意味です。生活のにおいという感じの意味あいで、リクトという響きが好きで、つけました。

アロマ喫茶は具体的にはどんなものですか?

平賀さん:アロマ喫茶を始めたのは5~6年前、レンタルカフェが流行ったころです。場所を借りて月に1回、夜の喫茶店を始めました。「小さなころやりたかったことがやっとできた!」という感じでした。

アロマ喫茶の内容は当初とはかなり変わってきているのですが、最初は喫茶店メニューにプラスしてアロマドリンクがある、という感じでした。嗅覚と味覚って関わりがあって、香りをかぎながら食べると味が変わる、という体験をしていただいていました。でも、当時はあまりわかってもらえず、いまはやり方を変えています。

アロマセラピーをわかっている方にはどのアロマがどんな香りかわかるのですが、知らない方にとっては触れるきっかけが必要なので、その香りを思い浮かべるような言葉をメニューにのせています。
たとえばラベンダーだったら、「清楚なシスターのように」とか。「今日は『森の中で息をする』にします」というように、イメージでお客様に選んでもらっています。

香りを体験してもらうためには石膏の石に希釈したアロマをたらし、ふせたグラスに入れておくと香りがたまる、という方法で体験していただいています。Little Japanでも最後の3~4回は、このやり方で料理の提供までの間に香りを楽しんでいただきました。この方法はシンプルですが他でやっていそうにないんですよね。ですのでこの方法は私が勝手に「aroma_bar」と名付けました。

「アロマ喫茶」がひとつのジャンルになったら面白い

どんなことを大切にして取り組まれていますか。

平賀さん:私が大切にしているのはクリエイティビティ。真似をしたり、流行りものを取り入れたり、ということはしたくないと思っています。ほかには、香りが強くなりすぎないことですね。やはりカフェですので、香りが強すぎて食べられない、では本末転倒ですから。

平賀さんのお店が他と違うところは?

平賀さん:香りをかぎながら飲食をするというのは、他にはないカホリトの特長です。アロマ喫茶というネーミングがキャッチーなのか、初めて来てくださる方は「どんなところだろう?」と勇気を出してきてくださるようですね。
最初はハーブのお店かと思っていらっしゃるようで「ガチにアロマなんですね!」と驚かれます。
まだあまり知られていないのでそういう認識になってしまうのかなと思います。

今後、どのようなことをしていきたいですか?

平賀さん: 「アロマ喫茶」というのがひとつのジャンルになったら面白いですね。aroma_barは香りが広がらずに楽しめるので、カフェ以外、例えばコワーキングスペースなどでも使えるのでもっと広まって欲しいですね。
アロマ喫茶自体がもっと広がって、「こっちのアロマ喫茶の方が好き」などと話せるようなカテゴリーができたらと思います。

おすすめのお菓子はありますか?

平賀さん:ゼラニウムの精油をいれたパウンドケーキが人気です。バラのサプリのように、食べるとゼラニウムの花のいい香りの息になりますよ。甘酸っぱいクランベリーが入ったケーキで、カホリト自慢の一品です。

渋谷のスペースは菓子製造許可付きキッチンがあるので、月に1回、営業時間に合わせてケーキを焼いて、予約注文いただいている方に通販や店頭渡しでご利用いただいています。カフェでもお出ししていますが、2切れで330円、1本では1,760円です。バターはそのものの香りが強く、他の香りを消してしまうためバター不使用なので、乳製品アレルギーの方も大丈夫ですよ。

ドリンクはラベンダーコーヒーが男性にも人気です。
飲むときはコーヒーの香りなのですが、飲んだ後にラベンダーの香りを感じられます。こちらは精油ではなく、ハーブに使われる乾燥ラベンダーをコーヒーと一緒に抽出しています。通販でも取り扱っています。

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花の香りの吐息になれる「ラトビア産クランベリーとゼラニウムのケーキ」

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口の中でふわっと香る「ラベンダーコーヒー」

最後にシェア街の皆さんに一言お願いします。

平賀さん:アロマ以前に香りは消えるもの、というのをわかって欲しいです。これはレッスンの時にもよくお伝えしていました。消えるからこその印象や魅力もあるものですが、「ずっといい匂いを続けたい」という要望へ答えて工夫してきた結果、一部「香害」と言われる状態になってしまいました。香り自体の問題よりも香りを留める成分に問題があってのことなので、そこは誤解して欲しくないですね。
あとは、香り、アロマは「いいな」とか「あっ」とかいう感覚を一番持ちやすいと思います。嗅覚を研ぎ澄ますと他の感覚も磨かれると言われていますので、ぜひ精油でなくとも自然の香りで、日々の「あっ」を増やしていただけると視点も変わっていくかもしれません。

Little Japanをご卒業されたあとはどこでお会いできますか?

平賀さん:実家のある根室市と東京を行き来するようになって、決まった曜日にキッチンをお借りすることが難しくなり、残念ながらLittle Japanを卒業することにしました。この期間、「アロマ喫茶」としていろいろなことを試すことができ、使わせていただいてよかったと思っています。

今後は月に1~2回、渋谷のbluebutterfly(http://bluebutterfly.tokyo/)というお店にいますので、ご興味のある方はのぞいてみてください!

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平賀さんの出店情報はInstagramをご覧ください。
https://www.instagram.com/kahorito_aroma/


【アロマ喫茶カホリト】
http://kahorito.lykt.blue/sweets/
【カホリト オンラインストア】
https://kissa-kahorito.stores.jp/


【クレジット】
編集:Atsushi Nagata Twitter / Note / Youtube
執筆:岩瀬友理
写真:提供写真

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