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日常の中に“伝統”を【シェア街きょてん紹介】『dentou庵』つよぽんさんインタビュー!

シェア街にはオンライン上にさまざまな「きょてん」があります。今回はそのうちのひとつであり、最近新しいきょてん名が決定した「dentou庵」を紹介します。立ち上げ人の一人であるつよぽん(松本津世志)さんに、活動内容や立ち上げに至った思い、今後の展望などをお伺いしました。

もともと伝統に興味や知識があった訳ではなかった

まずはつよぽんさんのプロフィールを教えてください。
つよぽんさん:出身は群馬県伊勢崎市、現在は神奈川県横浜市に住んでいて、都内の海洋地質調査会社に勤めています。シェア街に入ったのは、ゲストハウスのLittle Japanがきっかけでした。(シェア街やLittle Japanを主宰する柚木理雄さんたちのやっている)ゲストハウスサミットなどのイベントに参加したことを通してLittle Japanを知り、そこが母体となってやっている活動ということで、シェア街に興味を持ちました。シェア街設立のクラウドファンディングにも参加して、初代関係住民になっています。

あとは練馬の“Neriba”というバーで日替わり店長や、教育関係のNPOの活動など、いろいろなことをやっています。趣味は本当にたくさんあるのですが、最近特にはまっているのは写真とキャンプとドライブです。

deotou庵とはどんなところなのでしょうか
つよぽんさん:「誰もが気軽に日本の伝統を知り、伝え育む文化を作る」ということをコンセプトにしています。身近な伝統を知ったり体験したり、現代の人でも気軽に楽しんだりできるように活動をしています。

どんな経緯でdentou庵を立ち上げたのですか?
つよぽんさん:もともと伝統が好きという訳でも、特別知識がある訳でもなかったです。仕事柄なかなか横の繋がりが少なかったのですが、そんなときに異業種交流会に友達と参加しました。そこで、それまで自分が知らなかった世界と繋がって価値観が変わる経験をして、コミュニティの可能性を探りたいと思うようになりました。

2,3年前にゲストハウスサミットに参加して、いろんな人が自分の地域のことをPRしているのをみて、改めて僕の地元には何があるのかと旅をしていたら、絹織物の「伊勢崎銘仙」に出会いました。調べていくうちに関係者ともつながりができて、素敵なものがあるなと思ったのですが、外に目を向けるとあまり知られていませんでした。もっと多くの人に知ってほしい、自分自身も深く知りたいという気持ちから、伝統に興味を持っていきました。

シェア街の“engawa”でそんな話をしていたときに鶴田昌和さん、里真由美さんと盛り上がって、きょてんを作ろうという話になっていき、始めることになりました。なので、この3人が立ち上げメンバーです。

現代人に合わせて伝統をアップデートしたい

今までどんな活動をしてこられましたか?
つよぽんさん:昔ながらの伝統的なものを遺していく活動をすることに加えて、それを見ていたい人、イベントに参加したいだけの人もいると思うので、そういった人たちを段階分けして、活動をやっていきたいと思っています。

この前オンラインでやった新年の書初めイベントは、シェア街に入っていない人でも、誰でも参加できるものにしました。さらに昔ながらのやり方に縛られず家で用意できるもの、例えば筆ペンを使って、書く紙も何でも良いという具合でやりました。ルールに縛られず、好きなように伝統を書き換えていってくださいというスタイルにしました。

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あとは節分に浅草橋と両国のリアル拠点で豆まきイベントをしたり、2月中旬にオンラインで和紙づくりイベントをしたりしました。伝統を現代人が気軽にできるかたちにアップデートしていけたらと思っています。

きょてんの楽しみ方を教えてください。
つよぽんさん:カレンダーをみると、毎日何かしら〇〇の日と書いてあります。まずはそれを知るといった、ちょっとしたことから始めてみるのがおすすめです。そういう〇〇の日をみんなで共有したり、もしくはシェア街独自で〇〇な日を設定したりするのも面白そうです。そうして身近にある伝統を体験したり、新しい文化を作ったりしていきたいです。

家庭の行事で伝統的なものを探してみたり、学校や地域のイベントに興味を持ったりすることもいいと思います。できればそこに入ってみて、自分で調べてみたり、プロジェクトを立ち上げたりといったステージまで行けると面白いと思います。

どんな人に来てほしいですか?
つよぽんさん:日本に興味を持っている、もしくは好きだという人に来てほしいです。文化や工芸品に関心がある人、日常生活に日本らしさを取り入れたいと思っている人、シェア街で新しい文化を作っていきたいと思っている人などもいいな、と思います。日本の伝統が抱えている課題、問題に主体的に取り組める人と活動ができたら嬉しいな、という考えもあります。

街歩きやマンスリーテーマで取っ掛りをつくる

dentou庵のなかで、今後やっていきたいことや展望を教えてください。
つよぽんさん:今はメンバーが20人くらいで、そこまで活動はできていないのですが、今後は外に出て実際に体験できるイベントを増やしたいと思っています。近々街歩きをスタートする予定です。浅草橋周辺には伝統が息づいている場所がたくさんあるので、そうしたところを訪れていきたいです。2月に開催したオンラインの和紙づくりイベントに携わっていただいたショップは浅草橋からすぐ近くなので、訪問して本格的な機械で体験させてもらうことも考えています。遠くて来られない人のために、ライブ配信をするのも良いですね。あと、個人的にカメラが趣味なので、街歩きでは伝統というくくりにとらわれず、広い切り口でやりたいです。

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あとは、マンスリーテーマを作っていきたいです。いろいろな伝統があって何から手を付けていいかわからないという人も多いと思います。毎月きょてん会議のときに一つのテーマを決めて、それについて自分達で調べたり体験したりして、そのことをSlackなどで報告していきたいです。「こんなイベントに参加したよ」「こんな情報を見かけたよ」といったこともみんなで共有したいです。もちろん見ているだけでも全然問題ないです。

あとは1,2か月に1回くらいは外部から人を呼んで、登壇イベントをやりたいです。3月5日に、前述の僕の地元・群馬県伊勢崎市の伝統産業である「伊勢崎銘仙」という絹織物を用いたアパレルブランドを立ち上げた方を、ゲストに迎えたトークイベントを開催予定です。和紙づくりではイベントのあとに、今後に繋がるようなお話をさせてもらいました。そうしたつながりを作っていくのも重要だと思っています。

今後取り扱いたいテーマとしては、ゲームやアニメや漫画の文化を掘ってくれる人がいないかな、と思っています。日本の伝統文化になりつつあって、海外にも浸透していますし。あと、怪談や妖怪、昔話や伝記、都市伝説などを調べていくのも面白いのではないかと思っています。あとは花見や花火みたいな季節のイベントもやりたいです。それもただやるのではなく、歴史や文化などにも触れながらできたらいいと思っています。

「いただきます」の意味を深掘りする

3月5日のイベントについて詳しく教えてください。
つよぽんさん:群馬県で、伊勢崎銘仙をリメイクやアップサイクルして、アパレルブランドを立ち上げた方をゲストに呼びます。群馬県は織物が盛んな地域で、かつては日本の生糸産業を支えていました。そのなかでも安価でありながらモダンで華やかなデザインとして庶民の普段着、お洒落着として親しまれた織物(銘仙)を生産していた地域のひとつが伊勢崎です。最盛期には日本人女性の10人に1人が伊勢崎銘仙を着ていたと呼ばれるほどの産業であり、手織りで織られたきめ細かでかつ、奇抜な色とデザインになっているのが特徴の織物で、イギリスの博物館(V&A)ではその高度な生産技術が評価されて永久保存が決まっています。しかし近年では職人さんも高齢化や材料の生産終了、洋装化が進んでいて、分業制であった高度な技術の継承も難しく、産業としてはほとんど成り立たなくなってしまっています。

今回のゲストの方は、銘仙を復活させる糸口のための活動をしていて、クラウドファンディングもやっています。イベントを通して、伝統に興味がある人やシェア街に興味がある人に、伊勢崎銘仙のことやdentou庵のことを知ってほしいと思っています。

つよぽんさんにとって“伝統”とはどんなものなのでしょう?
つよぽんさん:伝統は、見ているだけも良いですが、実際に触れて体験したほうが楽しめます。僕も以前、草木染めと平織りを体験したのですが、時間を忘れて夢中になってしまいました。同じような工程で作業をしたはずなのに、できあがったものは作った人によって全然違ったりして、予想に反したものが出てくる面白さや、思い通りにならない世界観を体験できます。

単純に技術を継承するとか、職人さんの思いを知るということだけでなく、実際に手を動かすことは、自分の内にあるものを表現(アウトプット)する機会になります。そして自分自身をまじまじと見つめる時間にもなります。

最後にdentou庵に興味を持っている、“伝統”に触れてみたいと思っている方々にメッセージをお願いします。
つよぽんさん:伝統に触れることを通じて、当たり前と思っていることが覆されることがしばしばあります。身近なところだと、挨拶を深掘りすると面白いのではないか、と思っています。当たり前すぎて意識しないけれど、「いただきます」って「何をいただいているのだろう?」などと哲学みたいな問いを持つのもいいです。

伝統と聞くと堅苦しいものとか、凄いものだから遺さなければいけないという思いがあったりしますが、それでは一般の人たちにとって遠い存在になってしまいます。伊勢崎銘仙を復活させようと活動している方も、着物を洋服にアップサイクルしています。着物は高価だし、着る頻度も高くない。着方も分らないという人も多いです。洋服という身近なものにすれば、手が届きやすくなります。そうやって、身近な日常の中に伝統をいかに見つけられるか、取り入れられるか、が伝統を遺すカギになるのでは、と思います。

dentou庵というきょてんについてだけでなく、つよぽんさんの“伝統”への熱い思いを伺うことができました。普段見ている景色でも伝統という側面で見ることで、違った風景が見えてくるのではないかと思います。そんな新しい発見をしたいという方は是非、dentou 庵に参加してみてください!

【クレジット】
編集:Atsushi Nagata  Twitter / Note / Youtube
執筆:早川英明 Note
写真:提供写真


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