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「このシステムいくら?」と聞かれたWebプロデューサーの動き方を考察する

フリーランス、もしくは小規模な会社をやっていると、唐突に「こういうシステムを作ったらいくらかかる?」と聞かれることがあります。

とりあえずその「こういうシステム」を詳しく聞いてみると、夢が詰まった壮大なシステムであることが多いです。
おそらくテレビやネットのニュースかなにかで、「最先端の技術ではこういうことができます」というのを見聞きして、「そんな技術があればこういうサービスができるじゃん!」という発想のもとに構想を抱いて聞いてくるのかなと思います。

もちろん、サービスを作るために夢を描くことは非常に大切で、その夢がないと今ある様々なサービスが日の目を見ることはなかったかもしれません。

ただ、「awsって最近すごいらしいね?あれいくらで作れる?1000万くらい?」みたいなノリでこられることもあるので、その辺りはうまい具合に現実を見せながらやっていくことが、その窓口にいる人間(Webプロデューサー)には求められるのだと思います。

本記事では「このシステムいくら?」と聞かれた後のWebプロデューサーの動き方について考察していきます。

要件・予算を確認する

ここからは「こういうシステムを作ったらいくらかかる?」と聞かれた時の具体的なアクションを考えていきます。

お題がないと具体的に考えづらいので、次のような例題を設定して考えてみましょう。(もちろん架空の設定です)

例題
あるおもちゃメーカーの方
「ECサイトを作ろうと思うんだけど、ログインに生体認証を入れて欲しいんだ。そんでAIを使って売れる商品を自動的に選定して、ワンクリックで購入できるようにしてほしい。あと商品ごとの動画も作って、購入意欲を掻き立てるのもいいよね。」

ECサイトの開発は業界内でもある程度ノウハウが溜まっているので、それほど費用をかけずに作れます。ただ、生体認証とかAIを使うとなると、既存のECサイトフレームワークだけでは解決しません。なので外部APIを使ったり、機械学習系のサービスを使う、もしくはその分野の開発者に依頼することも考えられ、通常のECサイト開発よりも費用が高くつきそうだなということがわかります。さらに動画も作るとなると、商品の点数によってはかなり高い金額になるかもしれないと頭の中でそろばんを弾くことができます。

そこまで考えたところで、予算について先方に聞いてみると、

「え、予算?100万くらいあればできるでしょ?」

と気軽に返してきます。
この100万円という数字。制作会社によって制作コストは異なりますが、上記の要件を100万円で満たすのはかなり難しいと思われます。(逆に上記を100万円でちゃんと作れる会社様は、ぜひお近づきになりたいです)

「なぜ作るのか」を確認する

実際、ここで「うちの会社では厳しいな」と思うWebプロデューサーの方は多いと思います。私も上記の返しを受けたら、一旦アホづらをかましてしまう自信があります。

ただ、こういう相談をされてくる方は、基本的にその相場がわかっていません。ECサイトを作るためにはいくらくらいかかるのか、AI開発を行うためにはどれくらいかかるのかといった知識がないために、Webプロデューサーに相談をしているのです。

なので、Webプロデューサーが次にすべき行動は「そのECサイトを使って何がしたいのか」と質問することです。
ECサイトなので「売り上げを増やしたい」という回答が返ってくる可能性が高いと思われますが、その「売り上げを増やすこと」に対し、生体認証やAI開発が必要なのかを確認します。

超概算見積をする

費用を底上げしてしまう機能の必要性を確認した上で、外せそうな機能は一旦外して考えます。先方がどうしてもこの機能は外したくないと主張してきた場合はそれらを残したまま、この案件を受注のまな板に載せるかどうかを考えます。

先方との人間的な関係性や、現在の会社の売り上げ状況、そのほか諸々の営業的な要素を勘案して、この案件を受ける可能性を0にしないでおくかどうかを考えます。その上で受けられると判断を下したならば、その時点で知り得た数少ない情報をもとに、そろばん勘定をして見積金額を算出します。
(絶対に受けたくないと判断した場合は、うちでは無理なんで他の会社に聞いてみましょうか?みたいな感じでお茶を濁すか、率直にできない旨をつたえます)

この時は自身の持てる全ての知識・経験をフル動員して、できるだけ根拠のある数字をもとに工数を積み上げます。ECサイト構築費用○人月、生体認証API初期費用○万円、及び開発工数○人月、AI開発費用○人月、動画作成費用○万円/点数といった具合です。
ただ、この時点ではまだ仕様も何も決まっていない超概算見積です。
この簡易的なヒアリングを通して、先方が上司と掛け合って予算を捻出し、次のステップに進むことがあれば、もう少し詳細に要件を整理して概算見積を作成することになります。この時の見積金額と、超概算見積はかなりの乖離があるものとして考えることになります。

超概算見積を出した後に

先方が「どうしてもこの機能は外したくない」といって機能を盛った結果、先方が思っていた以上の金額になってしまうことがあります。
ここからのアクションは見積もりをした会社の営業的なスタンスによっても異なりますが、待つか攻めるかの2択になると思います。

そもそも提出した見積が予算上限を超えているので、案件化する確度が低いと判断し、これ以上の出血を防ぐために何もしないという選択をする(=待つ姿勢)。
顧客に対してマーケティング方面からの提案を行い、予算超過となっている機能のそぎ落としを図ったり、売り上げ予測の数字から予算を増やしてでも実施すべきという提案を追加するなど、後追いでアプローチをしていく(=攻めの姿勢)。

これらの戦略以外にも、各社独自の攻め方があると思います。その辺りはいわゆる「営業ノウハウ」という企業秘密になってしまうのかなと。
(受注CVR(受注数/ヒアリング数)が高い会社さんは、こういう「営業ノウハウ」が豊富なんでしょうね。)

ここからさらに先方の検討が進んだ場合、先方はもう少し要件を具体的にする&現実的な予算を設定して見積作成を依頼してきます。
この段階になると案件の確度はぐっと上がってくるため、受注に向けた具体的な提案・要件定義のフェーズに移っていくことになります。

総論

ここまで「このシステムいくら?」と聞かれた後のWebプロデューサーの動き方を考察してきました。ざっくり流れをまとめると以下のようになります。

1. システムの要件を確認する
2. 予算を確認する
3. 作る目的を確認する
4. 不要な機能は落とす
5. 超概算見積を作成する
6. 受注確度を上げるためのアクションをするorしない

社会が長い停滞から抜け出し始め、ようやくいけた場末の居酒屋で、飲み相手からいきなり「このシステムいくら?」と聞かれた時の参考になれば僥倖です。

それでは良い週末を。

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