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シェアの支援に誇りを感じました!3年間の事業を終えて聞こえてきた住民の声

日本の皆さん、こんにちは!東ティモール事務所スタッフのロジーニャです。2019年2月~2022年5月まで実施した「住民参加によるプライマリヘルスケア強化事業(※1)」が終わりを迎えました!事業に関する詳細な情報はこれまでのブログを読んで振り返っていただければ幸いです。今回は、3年間の事業を通して私が感じたことを中心にお話できればいいな、と思います。
※1:この事業は外務省日本NGO連携無償資金協力や民間助成金による資金や皆さまからのご寄付をいただいて実施しました。 

東ティモールでのプライマリヘルスケア強化事業報告会の様子 


自信のない中で始めたプライマリヘルスケア事業

「プライマリヘルスケア強化」事業を実施する前、シェアはディリ県において学校での保健教育事業を実施していました。2019年から、これまでと違うプライマリヘルスケア強化事業に挑戦することになったとき、私はとても不安でした。学校保健を実施していたスタッフの中に、保健のことを学校で学んだことのあるスタッフはいなかったからです。学校保健を実施していた私たちスタッフのバックグラウンドは、法律、化学、農業、パソコン技術です。事業活動当初は、何から始めたら良いのか、専門性もない私たちに何ができるのかと不安な毎日でしたが、自分でインターネットを開き、情報を探すほか、新しく雇われた医療従事者のスタッフ(助産師1名、看護師1名)から話を聞くなどしました。また、カウンターパートである保健局、保健センターやヘルスポストのスタッフからも多くのことを学びました。現在は、自信を持ってプライマリヘルスケア事業を行うことができたと言うことができます。医療従事者のスタッフも現在は3人に増え、保健のバックグラウンドがない私たちのことを支えてくれる、とても大切な仲間です。

学校保健教育事業時の私と生徒たち


ブレないシェアのアプローチ

シェアは必ず自分たちの活動が政府の国家戦略計画に沿っているか、東ティモール保健省の考えと呼応しているかを確認してから事業を行います。特に今回の事業では保健施設や船舶などのハード面の支援が多く、持続可能性を考え、供与後の管理とメンテナンスについて詳細に話す必要性を感じました。そのため、保健省や保健局、保健センターと何度も何度も会議を行い、保健省と覚書を結ぶ前に、シェアの責任はここまで、保健省の責任はここまで、と明確にしました。現在は、保健施設も船舶も保健省の管轄下におかれ、保健省が医療者や船頭との雇用契約を結び、メンテナンス費用も保健省へ申請、承認されて運用がなされています。

施設、船舶の未来について話し合う会議

また、医療者の能力向上に関しては、シェアのスタッフが医療者に対してトレーニングを行うことはせず、必ず政府の研修機関であるINS(国立保健研修機関)と技術契約書を結び、彼らからトレーニングを実施してもらうことにしています。INSからトレーニングが受けられると、国からの公式な修了証が受講者へと発行されます。例えば、シェアのスタッフが医療者に向けてトレーニングをしたのでは修了証は国から発行されません。INSが発行した修了証は、医療者が今後自分のスキルを上げたい場合や職場を変更したくなった場合などに使うことができます。

保健センターや保健ボランティアが地域の中で活動を行う上で決して忘れてはいけないのが、自治体リーダーとの関係性です。彼らとの繋がりを疎かにすると、村の中での保健活動の実施に支障が生じます。そのため、自治体リーダー、医療従事者、保健ボランティアを集めた会議を開催し、村の中での健康に関する問題点は何か、そのために医療者や保健ボランティアから住民に対して情報提供をすることの重要性、情報提供を行うために自治体リーダーへ協力関係を強化するお願いをしました。事業の最後には、村の中での母子保健に関する指標(完全予防接種率、妊婦健診受診率、住民の知識など)がどれだけ変化したかを公表しました。事業実施前と比べて、数値が各段に変わっている村、今後の変化に期待する村、いろいろありましたが、村の自治体リーダーからは揃って「シェアのこれまでの支援に感謝している」との言葉をいただくことができました。

保健ボランティアには健康保健促進活動を行う意欲向上を働きかけました
自治体リーダーと築いた協力関係は今後の事業でも重要になってきます

いつでも相手との対話を忘れずに行うこと、これは私たちがいつも忘れないでいるアプローチ方法です。 


事業の中で見えた変化と課題

 次の表をご覧ください。

 事業の中で、シェアが増加を目指したものが左側に記載されているものです。妊婦健診は、東ティモールでは最低4回の受診が推奨されています。シェアの3年間の事業によって、基礎的な保健医療サービス(完全予防接種率、外来、妊婦健診、施設出産)数はアタウロとメティナロ、それぞれで、2020年までは少しずつ増加していたと言えると思います。特に、2020年にはメティナロでは事業目標であった完全予防接種率90%の値を超えることが出来ました。2021年には、東ティモールも新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、基礎的な保健医療サービスの値は一部の数値を除き、それぞれの地域で低下します。これは、施設へ行くとコロナのPCR検査をされる(しかも痛い)、防護服を着た医療者が待ち構えているなどの噂が立ち、施設へ行きづらくなってしまったのだと思います。 

本来であれば、このような噂も、正しい知識と情報が提供されていれば防げたことです。「新型コロナウイルス感染症ウイルスのワクチン接種キャンペーンに行かねばならず、ヘルスポストをお休みにしなければならなかった」という医療者もいました。遠い道を長時間歩き、ヘルスポストが開いてなかったとしたら、たとえ1度でも住民の信頼を失ってしまうでしょう。そのようなことが新型コロナウイルスのために起き、再び関係性を創り直す必要があると思います。次の事業では、医療者と住民の強い関係性つくりが重要になります。

メティナロ保健センターでの会議の様子。誰でも自由に話せるような雰囲気つくりが大切です。

 

嬉しかった住民からの声

事業終了の際に行った村での会議で、住民から伝えられたシェアへのメッセージを紹介します!

「私たちは施設へアクセスすることが非常に困難な場所に住んでいます。シェアの保健センターへの船舶支援は非常に利益のあることだと感じます。あなたたちのおかげで、医療者が私たちのエリアを訪問してくれ、移動診療を実施し私たちが受診することができるようになりました!」(アタウロ島マキリ村住民)

「マンテロラオ村にヘルスポストを建設してくださったシェアに感謝したい!私たちのような年寄りは近くにある保健施設しか利用することができない。雨期には雨で川が氾濫し、道も悪いために遠くの保健センターへ行くことはできなかった。これからは近くに施設があることで安心して暮らすことができる 」(高齢者住民 メティナロ)

「シェアのトレーニングによって、能力向上をしてくださったことが嬉しい!これから自信を持って住民に対し情報提供をすることができる。特に、人前でたくさん練習させてくれたことが嬉しかった。」(保健ボランティア)

住民からの声を聞き、私はシェアの支援に誇りを感じることができました。プライマリヘルスケア強化事業が、特に遠隔地に住む住民に貢献していると知ることが出来たからです。3年間の事業の中で、わたしたちのアプローチを通して、住民たちの基礎的な保健医療サービス利用を促進することができた、と感じています。

シェアスタッフたちと共に


新たな事業を始めました!

シェアは2022年3月から、母子保健サービスを強化する「ハクベシック(HAKBESIK)」という事業を開始しました。この単語には「近づける」という意味があります。医療者側、住民側双方にアプローチし、母子保健サービスを住民に近づけ、健康になってもらいたい、という願いを込めて、この事業名を付けました。現在進行しているHAKBESIK事業も皆様からの変わらぬ応援をよろしくお願いいたします!

※この事業は、皆さまからのご寄付と、外務省日本NGO連携無償資金協力や民間助成金の資金をいただいて実施しています。
シェアは20年にわたり、東ティモールで保健ボランティアの育成や保健教育の普及などに取り組んできました。新型コロナを含んだ感染症の予防対策や、現地の人々の健康で平和な暮らしのためには、継続した活動が必要です。皆さまからの温かいご支援に感謝いたします。

*応援よろしくお願いいたします*
東ティモール事業支援

文責:シェア東ティモール事務所 プロジェクトマネージャー
ロジーニャ・デ・ジェズス・ソアレス

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