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旅立ちの季節

年度末の3月。多くの施設では門出の季節だと思う。

年齢超過での退所、家庭復帰をするにしても学年の変わり目が都合が良いということもあり、毎年数人の児童が新たな生活に向けて旅立ってゆく。

児童養護施設には障害者手帳を持っている児童が一定数いる。知的や精神が多く、その児童は就職にしても障害者枠で決まることが多いうえに生活の場にしてもグループホームなど福祉の枠に収まるケースがほとんどで、皮肉なことにそういう児童の方が退所後の心配が少ない。

なぜならこれまで在籍していた施設と今後在籍する施設との連携がきちんと出来てさえいれば、施設での生活や生育状況などが共有され、所謂「途切れない支援」を行うことが可能なのだ。

問題は措置解除になった後、生活の基盤がぜい弱な児童だ。例えば、帰るべき場所がない児童。本当の意味で天涯孤独となってしまった、もしくは法律的には親も親族もいるのだが、一緒に生活を営むことを望まない(出来ない)場合。福祉から外れてしまう場合。こういう子どもたちにも途切れない支援が必要だと言うことがようやく認識されてきた。

児童養護施設の年齢撤廃である。現在の制度では措置延長と言う方法もあるが、学生などに限られる。もう一つは、自立援助ホームに入所するという方法があるが、自立援助ホームの定員は少なく十分とは言えない。では、これまで過ごした施設で引き続き暮らせるようにしたとして、どのような問題があるだろうか。

そもそも児童養護施設は3歳から18歳までが対象だ。ただでさえ、年齢の幅が広く、それ以上の年齢の者を引き続き一緒にとなると職員の対応が追いついていかない。

施設自体の形態もある。現在、時代の流れは地域小規模だ。「家庭的養護」の名のもとに、昔ながらの大舎制の施設は少なくなりつつあるが、もし18歳以降も年齢的にある程度関係なく生活できるようなシステムにするのなら、その時は大舎もしくは中舎制の施設でないと無理だろうと考える。

現在、養育の中心に里親制度がクローズアップされている。大きな施設(所謂、箱)や専門職員も必要がなく、誤解を恐れずにいえばコスパが良い。そのうえ、子どもは家庭的な環境で育てられるべきと言う理念には共感するが、里親は責任や負担も少なくなく、善意だけで成り立つとは言い難い。里親でうまくいかなかった児童の受け皿として、大舎の果たす役割はまだまだあると考えている。

里親に移行を進めている社会の現状を鑑み、児童養護施設の在り方が問われている。しかし社会的養護を担うのは、やはり専門職であると改めて感じている。