屁ッセイタイトル2のコピー__9_

自転車と一眼レフは僕の先輩です。

奴隷が板についてきた。

先日のセミトリエンナーレでも気が付くとランチに入った蕎麦屋で店長に言われるがまま薬味を作っていた。奴隷が染み付き過ぎている。

そんな私は朝から走っていた。今日リリースしたイベント「EXPO STUDY MEETING vol.03」のプレスリリースを大阪市役所の「市政記者室」まで届けなければならないのだ。

オフィスからはギリギリ徒歩圏内なのだが、優しい先輩佐々木さんが「人間号使っていいよ」と言ってくださった。

人間号とは社用車の別名である。
ライトも自動点灯、荷物もたくさん乗る大容量で排ガスも無いエコな自転車だ。

こいつを見るたびに採用面接の時に「君は奴隷ね」「奴隷はチリの一個下」「そこにある三輪車より下やから」と言われたことを思い出す。二輪車なんて更に上だ。

確かに、これまで私がもらった給与に比べて、明らかにこの人間号の方が値段が高い。単純に言えばシャニカマより価値が高いのだ、社内だけでなく、資本主義市場においても。

「今日もお世話になります」

そうお辞儀をしてからサドルにまたがる。
3段変速も付いていて、乗り心地は抜群。
そりゃ自分より上なわけだ。

漕ぎ出せば一切の抵抗をすることなくスムーズに走り出す。
文句も言わず、快適な走りを提供する。
素晴らしい。

「俺もこうあるべきだ」

不意にそう思った。

文句を言わず、どんな扱いを受けたって望まれた価値をひたすらに出す。
そして、必要なくなった時には潔く捨てられる。
人間号先輩は偉大な奴隷なのだ


夜になって、デストロイヤーことトミモトさんに「イベント中に撮影してくれるカメラマンがいないんだけど」と言われ、迷わず手を挙げた。
自慢では無いが、私は誰とご飯に行っても毎回ご飯の撮り方を褒められる。

「あ、ほんと?じゃあこれでよろしく」

そこで手渡されたのはこれだった。

「え、一眼レフですか?」
「当たり前でしょ」

おどおどしていると佐々木さんが微笑みながら「シャニカマは一眼使えないの?」と優しく声をかけてくださる。素直に懺悔すると花岡さんが「そんな事もできないのか。」と罵ってくださる。ありがたい、まさにそうだ。

人間号先輩はどんなところへも連れて行ってくれる。
歩くよりも何倍も早く。何倍も強い力で。
荷物だって自分1人より何倍も多く。
使い勝手がいい。

それに比べて自分はカメラ1つできない。
使い勝手が悪い、質の悪い奴隷なのだ。

佐々木さんに教えてもらいながら、なんとか一眼で写真を撮れるようにしてもらう。10分ほど手ほどきをいただき、なんとか撮影できるようになった。

120分にも及ぶイベントでひたすらにシャッターを切り続けた。
元々下手な鉄砲なのだから、数打つしかない。

一眼は何枚撮ってもクオリティを下げない。
常に最高の画質を提供し続ける。
最高の奴隷だ。奴隷の鑑だ。

私は今日お世話になった2人の奴隷先輩に大いなる敬意をはらいたい。
文句を言わず、常に求められた価値を提供し、愚弄されても顔色一つ変えず、言われたことを淡々と素直にやってのける。そして捨てられる時まで笑顔を絶やさない。

私もこうでありたい。
素晴らしい奴隷になりたい。


サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。