仕事が続かないのは忍耐力の問題ではないかも知れない その2
前回に引き続き、『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』の感想
前回はいかにブラック企業が若者を潰してきたか書いてきた。
「そうは言っても今の若い人は忍耐力がない」とよくいう人がいるが、時代が違う。
高度成長期の日本にも過重労働は存在していたが、現在と大きく違うのは働いただけの対価があり、終身雇用などでしっかりと守られていたということ。
しかし今はどれだけ頑張っても賃金が上がらない
目標となる先輩像がない
将来性が見えない
正規雇用されずに社会保険に入れない
最初から使い捨て要因で採用されている
など、とにかく先が暗い。
学生の就職活動から個性を徹底的に潰す洗脳は始まっている。
就活以外では絶対に着る機会のないダサいリクルートスーツに身を包み、皆と同じ鞄とパンプス、トレンチコート、同じ髪型で面接に向かう学生達を見ると胸が痛む。
あの状態で採用担当達には一体何が見えているのか?
あれを是としているのであれば、本当に個性や能力を必要としてるようには到底思えない。
結局は使いやすいロボット、なんでも言うことを聞く従順な人材が欲しいだけだ。
それを裏付けることが本書にも記されている。
私が過去に見た面接対策では「福利厚生について質問することはNG」だという。
まだ雇われてもいないのに、待遇のことを聞くのは失礼だとか。
しかし雇用された後の生活について誰だって気にして当然だ。
皆が皆、仕事中心で生きていきたいわけじゃない。
質問してはいけないのであれば、求人欄に記載しなければいいのに。
面接の際、企業のことを包み隠さず説明してくれる採用担当者は少ない。
離職率、離職理由、嫌な奴はいるのか、などちゃんと隠さずに教えてほしい。
そうでないとフェアじゃない。
とにかく採用する側が絶対的に偉い。
労働者は意志など持つな。
文句のある者は問答無用で不採用!クビ!
(基本的人権とは…)
うっかり「違法だ」「パワハラだ」なんて会社に言ってしまった日には、お抱えの弁護士やら社労士を連れてきて「むしろ法を冒しているのはお前だ」なんて脅しを平気でやってくる。
昨日まで談笑していた上司は完全な敵になり、誰もまともに取り合ってくれなくなる。
このようにして労働者は法に訴える権利も意欲も奪われる。
私もうっかり上司をパワハラだと言ってしまったものだから、現在やり合っている。
あることないこと言われ、味方が1人もいない状態で心をすり減らしている。
こんなにも人は醜くなれるのか…と驚く。
弁護士様もかつては高収入の崇高な職業だと思われていたが、今や人口が増えてしまい食いっぱぐれてる人が多いらしい。
ブラック弁護士事務所で心をへし折られた弁護士は、食べていくためには正義だなんてキレイごとをいってる場合じゃないようだ。
それはそれで同情する。
ブラック企業につぶされた被害者が、また新たな被害者を生む。
いじめと同じループだ。
街や電車で遭遇する「嫌な奴」というのもきっと劣悪な会社で働いていて、その鬱憤を誰か別の他人にぶつけているんだと思う。
そういった行為が重大な犯罪になってしまう。
そういえば秋葉原無差別殺傷事件の犯人加藤死刑囚もブラック企業の被害者だったとか。
まっとうな会社に出会えてさえいれば、もっと違う道が開けていた人はたくさんいるのだろう。
なぜそこまでして私たちは摩耗されていかなければならないんだろうか…?
その仕事に耐えた先に一体何が待っていると言うのだろう…?
リーマンショック以降に社会人になった若者は忍耐力がないから、自ら非正規雇用の道を選ぶと分析されているらしい。
でも多くは正規雇用でまともに働ける会社に出会えないだけだ。
働き方改革なんていって、フリーランスを薦める風潮になったが、それはさらにブラック企業が都合良く働ける人材・いつでも切れる人材を増やしたいというヨコシマな下心が透けて見える。
フリーランスになったところで、企業と対等に働けるなんて思ってたらそれは大間違いだ。
契約が業務委託になると、額面では正社員より多くもらえてリッチな気持ちになるかも知れないが、消耗品、必要経費、保険や税金など全て自持ちになった分、実際はたいして変化がないどころか下がっていることもある。
労働基準法で守られなくなるので、ブラック企業のやりたい放題になる。
最低賃金にも満たない、就業時間という概念なんてものは完全にない、そんなことはよくある話だ。
ただ、企業に振り回されて生きていきたくないが
生活できるだけのお金を稼ごうと思うと、
それに従わざるを得ないという現実を突きつけられる。
自分らしく生きるってなんだ?
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