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朝井リョウ『何者』を読了

朝井リョウの作品を読んだのは、これで三作目だ。

初めて読んだのが『正欲』。

私の敬愛する中瀬ゆかりさんが激しくお勧めしていたので、当時全然小説を読まなかった私がKindle版を購入して読んだ。

この作品は、多様性の実現が不可能であること、いかに気持ち悪い偽善かを見事にストーリー仕立てで表現した作品だと感じた。

現代人の課題図書として読んで欲しい(特に政治家に)と強く願うほどの読み応え抜群の作品だった。


次に読んだのは『世にも奇妙な君物語』。

『世にも奇妙な物語』調に5話の短編で構成されてる作品だ。

それぞれの話が現代の社会問題に絡んであった。
多様性、SNS、モンペ、ネットニュース…

オチはパズルのピースがカチッとハマるようでとても気持ちがよかった。


そして今回読んだのが『何者』。

読書を始める前に映画化された作品の予告版を観てしまったせいで、オリジナルの人物像を想像出来なかった。
一度映像化されたものを観てしまうと、想像力は怠けるらしい。
それがちょっとした発見だった。

ちなみにこれは就活中の大学生の男女達の苦悩を描いた作品で、Twitterを使った表現がとても面白かった。

冷ややかな目で他者を観察している人物、世の中を渡り歩くのがうまい人物、意識高い系の人物、高飛車な人物…
それぞれの人物像の描き方がリアルで面白い。

自分が思い描く理想像と他人から見えてる姿の落差が滑稽でもあり、全く他人事に思えなくてグサグサ突き刺さった。

この物語に出てくる痛々しい人物代表の4人、たくと、りか、たかよし、ギンジ、全てを足して割ったのが私だ。
第三者目線で見ると完全にイタイ、イタスギル…

私自身は大学に行ってないので、新卒の就職活動はしたことがないが、こんなにも大変なことをあのリクルートスーツを着た若者達はやっているのかと思うと、心底お疲れ様ですと声を掛けたくなる。

社会に出て一通りスキルを身につけて即戦力になったところで就活というのは本当に大変だが、真っ新の状態で同級生と同じスタートラインに立たせられるのはとても大変なことだと感じた。

必死で勝ち抜いた内定も決して人生のゴールではなく、入社した後に更なる試練が待っている…。

社会人になるってなんでこんなにも大変なんだろうか。
そしてそれを続けることはもっともっと大変だ。
一度レールを外れると戻ることは難しい。

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