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学校生活の閉塞感がリアルに描かれている『かがみの孤城』

とてもおもしろいと評判をよく聞く辻村深月さんの『かがみの孤城』を読んだ。

辻村さんの作品を読むのは『盲目的な恋と友情』『傲慢と善良』『琥珀の夏』に続き4冊目だ。

『盲目的な恋と友情』『傲慢と善良』では官能小説かと思わせるくらいの濡れ場がありちょっと苦手な作家かも…と思ったものの、『琥珀の夏』と『かがみの孤城』は子供がメインのストーリーだからそういう場面もなく、終始落ち着いて楽しめた。

それにしても辻村さんは心をえぐるような人間の生々しい感情の動きを描写するのがうまい。


今回、『かがみの孤城』を読んで学生時代の鬱々としていた記憶が鮮明に蘇った。

そうそう。
大人になると学生時代って美化しがちだけど、実際は悩みや辛いことが毎日たくさん起きて、生きるのが辛かったんだよなぁ。

スクールカースト上位者が学校を牛耳っている感じ、
大人は「みんな仲良く」とかきれいごとばっかり言う感じ、
教師のとりあえず形だけ問題解決したことにしたい無責任な態度にさらに傷つけられる感じなどなど、ものすごくリアルで共感できた。

あのときは本当に毎日生きるのが辛くて、だるくて、イライラしてた。
学校でも家でも、自分の居場所を常に探してたような気がする。
逃げたいけど、逃げたら負けたような気になるから我慢してしまう気持ち、
学校に行くのが嫌で毎朝必ず体調が悪くなるけど実際休んだら罪悪感に苛まれる感じ、とてもよく分かる。

でも大人になった今は「そんなときもあったなー」って振り返ることが出来ている。
学校という小さな世界から飛び出すと、大きな可能性はたくさんある。

外の世界ではスクールカーストなんて気にする必要がない。
イケてるチームに所属していなくともそれぞれ自由に生きることができる。
居心地が悪い場所からは自分の意志で離れていくことができる。

今こうして思えることが素晴らしいと実感できた。


ストーリーの謎については、喜多島先生が紅茶をくれたところで察しがついてしまったので、自分の中では大どんでん返しとまではいかなかったけど、オオカミ様の謎がわかった時にはものすごく込み上げてくるものがあった。

とても面白くて、めちゃくちゃ良い話だった。

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