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読書感想文 #27 『ノーベル文学賞を読む ガルシア=マルケスからカズオ・イシグロまで』
みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
今日は晴れて、夏のような暑さでした。晴れると蒸し暑くなりますね。
今日はちょっと変わった本の感想です。
ノーベル文学賞を読む
ガルシア=マルケスからカズオ・イシグロまで
橋本陽介著
目次
1980年代 1章めくりめく勘違い小説『眩暈』エリアス・カネッティ2章ラテンアメリカと魔術的リアリズム ガブリエル・ガルシア=マルケス 3章アラビア語圏のリアリズム ナギーブ・マフフーズ 1990年代 4章「黒人」「女性」作家 トニ・モリスン 5章「情けないオレ語り」と日本文学 大江健三郎 2000年代 6章中国語としての表現の追求 高行健 7章ワールドワイドで胡散臭い語りV ・S ナイポール 8章「他者」と暴力の寓話 J ・Mクッツエ 9章非非西洋としてのトルコ オルハン・パムク 10章共産主義体制下の静かな絶叫 ヘルタ・ミューラー 2010年代 11章ペルーあるいは梁山泊 マリオ・バルカス=リョサ 12章中国語版「魔術的」リアリズム 莫言 13章 信頼できない語り手 カズオ・イシグロ
と、まぁ目次のタイトルだけでも、バラエティに富んだグローバルな内容になっているかと思います。
また、歴代の受賞者を紹介しているのではなく、1980年代以降と比較的最近のものを紹介されています。
先日ツイートでもつぶやきました。
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受賞の傾向として、偏らないように世界のいろいろな地域の作家ラテンアメリカやアフリカ、中国等としていたり、越境ですね、ナイポールや高行健、カズオ・イシグロといった人たちが選考されやすいそうです。
それぞれの作者の人物像や時代背景等だけでなく、独特な文体や表現についても実際の文章を元に解説されています。
一つ例にとってみます。
ナイポールのミゲル・ストリートの説明です。
小説では語り口調をどうするのか選択する必要がある。語り口調は全体のトーンを決めるため、これを個性的にすれば、全体的に個性的になる....では、ナイポールの場合はどうか。一言でいえば、胡散臭い語りである。.....『ミゲル・ストリート』が採用しているのは、子供の「僕」の目線である。.....例えば歯ブラシを加えながらゴミ収集車の運転する姿がかっこいいと映る。そうした目標から下町ミゲル・ストリートの大人たちが一人づつ描かれていく....
ストーリーが子供の目線で書かれているのが肝になっています。しょーもない大人をカッコいいと思ってしまうとか、確かにありますね。
ではトリニダード・トバゴ版「三丁目の夕日」らしき本著はどうか。...この小説が面白いのは、「古き良きあのころ」を懐かしんでいるからではない。「古き悪きあのころ」を懐かしんでいるのだ。....本書の登場人物たちは語りての少年に対して自分を大きくみせようとする...発展性のない生活をしている人たちがちょっと誇大なほら話をするのは、ごく普通のことなのだろう。
読者があー、そうそう、あれは良かったよなぁ、という郷愁を味わうのはよくありますが、思い出したくもないような汚い部分を出し、大人が子供にほらを吹くという話が随所にでてきます。
このように作品の分析がされているので、なんだろうこれは、ちょっと面白そうだなぁ、読んでみようかなと思える内容になっています。唯一日本人を紹介されているのが大江健三郎ですが、名前は知っていても、作品は全然知りませんが、なぜ彼が受賞したのか、村上春樹がとれないのに、そのあたりもなんとなくわかります。ノーベル賞は商業的に成功した人を選ぶという方針ではないようです。
せっかくなので、これまで全く手にとることのなかった大江作品でも今度は読んでみようかなと思います。
以前2作品ほど、読書感想文を書いていたので、お知らせします。
V・Sナイポール ミゲルストリート
高行健 霊山
それではまた。
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