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読書感想文 #33 『国家はなぜ衰退するのか (上) 権力・繁栄・貧困の起源』

みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。

今日で7月も終わりますね。明日からはいよいよ8月です。

今日は下記の本の感想です。

国家はなぜ衰退するのか (上) 権力・繁栄・貧困の起源

ダロン・アセモグル&ジェイムス・A・ロビンソン 著

鬼澤忍 訳

目次

第一章こんなに近いのにこんなに違う 第ニ章役に立たない理論 第三章繁栄と貧困の形成過程 第四章小さな相違と決定的な岐路-歴史の重み 第五章「私は未来を見た、うまくいっている未来を」-収奪的制度のもとでの成長 第六章乖離 第七章転換点 第八章領域外-発展の障壁

感想

 一章 アメリカのアリゾナ州ノガレスという街と数メートル離れたメキシコソノラ州ノガレスは基本的には同じ都市だったのが半分にして違う国が統治しているが、片や裕福で平和、片や貧困で治安悪いのはなぜか。スペインがアメリカ大陸を支配しようとし、 中南米征服、金銀の採掘に先住民を労働力として使い、搾取した。 スペインの無敵艦隊に運よく勝ってイングランドが遅れて進出したときには北米しか残っておらずスペインと同じやり方はできなかった。入植者を支配したり、荘園社会を目指したりしていた。イギリスで産業革命が起き、アメリカでも工業化、銀行業が盛ん特許制度もあった。メキシコは銀行は少数が寡占し、競争はなく特権階級と富裕層にのみ融資していた。

フェンスの両側にある元々同じ町で両極端な富裕と貧困の差があるという現実とその背景について書かれており、衝撃的でした。アメリカ側の人たちが極めて優秀で、メキシコ側が怠慢で劣っているということではなく、過去から現在の中で制度や国の発展でこのようになったわけで、人の優劣とか地理とか全く関係がないというのがよくわかりました。


二章 世界の不平等を理解するには、一部の社会が極めて非効率かつ社会的に望ましくない仕方で構築されるのはなぜかを理解しなければならない、...本当に必要なのは貧しい国が「間違いを犯す」理由を説明することである...無知や文化とはほとんど関係ない... 貧しい国が貧しいのは権力を持っている人が貧困を生み出す選択をするからなのだ。彼らが間違いを犯すのは...故意なのである...繁栄の達成はいくつかの政治問題にかかっている。

大変重要で、でも知らない人が多い事実ではないでしょうか。市民が怠慢とか民族的に劣っているとかが貧困の原因でもなく、地理的に資源に恵まれたり、農産物に恵まれた国が裕福で、そうでない国が貧しいというのがあてはまらないわけで、歴史の中で、植民地の先住民を搾取して支配してきたことを政府が引き継いでしまったのが今日まで貧しい国であるのだそうです。政治の問題を見て、その上で経済学が必要なのだそうです。こういったことはもっと教育して広める必要があると思います。


四章 十九世紀に日本がたどった制度的発展の道筋から...明らかになるのは、決定的な岐路と、制度的浮動の生む小さな相違との相互作用だ...日本における徳川家の統治は絶対主義的で収奪的だったが、有力な藩主に対する支配力はわずかしかなく、挑戦を受けやすかった....中国がアヘン戦争のあとも絶対主義の道を歩み続けたのに対し、日本では合衆国の脅威のせいで徳川家の統治に対する反対勢力が結束し...明治維新という政治革命を引きおこしたのだ...こうした政治革命のおかげで、日本では包括的な政治制度とさらに包括的な経済制度の発展が可能になり、その後の急速な成長の礎が築かれた。

欧米のアジア侵略の影響から徳川家の支配脱却する明治維新を政治革命として表現しているところが興味深いですね。その後国会ができ憲法制定し近代の日本ができたことから、戦後焼野原からでも高度な成長を実現したと考えるのは自然で、日本の経済成長が単に敗戦から必死に頑張っただけではないということがよくわかります。この詳細は本の下巻十章でも書かれているそうです。


このような切り口は日本では珍しく、目からウロコで読みやすかったです。経済学者等が誤った情報や偏見で貧富の差が誤解されているということがよくわかりました。ちゃんとした原因を教育していくことで、多くの人に理解されて、将来の改善につながっていくものだと思いました。



それではまた。



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