見出し画像

青春のルビって、アイドルなのかも



アイドルが最高であることは重々承知しているつもりだったけれど、わたしが思っているよりもアイドルって最強で最高なんだな、と改めて思った。




額に張り付く前髪も、
どれだけ振り乱しても崩れない前髪も、
綺麗にカラーされた金髪や派手髪も、
艶々に濡れたドールのような黒髪も、
全てがステージの上で色とりどりの照明を浴びて輝いていて、綺麗だった。


弾ける笑顔や輝く汗は、どんなハイライトを顔に乗せるよりもキラキラと彼女たちを魅力的に映す。目が合うだけで、指をさされるだけで、もしかしてこれが恋なのかしら、と錯覚してもおかしくないくらい、胸がきゅ!と飛び上がってドキマギした。楽曲や観客に合わせてくるくる変わる表情はきっと徹底的に管理しているんだろうけれど、その中にもあどけなさや懸命さを感じ取ってしまって応援したくなった。


キャッチーで踊りやすい、初めての人でも真似できちゃうような振り付けの中に、積み重ねられた揺るぎない鍛錬が垣間見えた。
その可愛く飾られた爪の先の先まで、ぴ、と神経が張り巡らされていて、息を呑むほど美しい。きらきらした特別な衣装から伸びる細く華奢な腕からは想像できないほどの力強さで、わたしを彼女たちの世界へ引き込んでくれた。


振りまかれる確かな愛らしさとキレのいいダンスとのダブルパンチが、彼女たちが内包している他に代え難い日々を想像させる。一体どれだけの練習をかさねて、どれだけの苦悩を乗り越えてきたのだろう。



ブレない体幹と真っ直ぐな歌声は、彼女たちの信念みたいだった。




客席に笑いかけ、メンバーに笑いかけ、常に笑顔で、時に真剣な表情でパフォーマンスをするアイドルたちを浴びた私の頭には、何度も『青春』の文字が浮かび上がってきた。



歳を重ねれば重ねるほど、青春ってどんどん遠いものに感じる。学校の帰り道であろう学生たちを見かけるだけで、何故だか眩しくって羨ましくって目を背けたくなる。だけどやっぱり美しいから、いつまでも見ていたい気持ちも出てきてつい見てしまう。けどそうやって目にしてるとだんだん自分もその中に戻りたくなり、そんな思考回路の気持ち悪さこそがまた青春とは程遠いのだということを自覚してヘコんだりする。ていうかそもそもその子たちは見世物ではないので、誰かのために青春をやっているわけではないので、じろじろと羨望の眼差しを向けることすらお門違いなわけです。うう、ごめんなさい。




だけどアイドルって、そんな私の屈折した卑屈を丸ごと、引っ張りあげてくれる。


『でもさ、ほら、やっぱり青春って最高だから!』って笑いながら、私を引き連れていってくれる。



“自分”をコンテンツ化する形って昔よりずっと増えたけれど、その大変さが薄れた訳では決して無い。受け取り手の消費方法が増えた分、むしろアイドルたちは文字通り身を削って私たちに“自分”を届けてくれている。


だから、例えどんなに綺麗な姿が眩しくっても、楽しそうにパフォーマンスする姿が羨ましくっても、幼い頃のように安易な『ずるい、私もなりたい』だなんてことは口にできない。そこにはきっと、想像もできないような覚悟と努力が含まれているから。アイドルが楽しくてキラキラしてるだけじゃなくって、ちゃんと『お仕事』で『職業』なんだ、ってことを昔よりは分かってきているつもり。


それでもやっぱりアイドルは、青春のひたむきさと眩しさと切なさとを同時に届けてくれる貴重で大切なお仕事のひとつだ、と私は思う。今この瞬間が楽しくって仕方ない!みたいな笑顔を見ると、こっちまでじんわり胸が熱くなって、ああ、私もいま青春の中にいる〜〜って気持ちを体験させてくれるから。



もしかして青春は、アイドルって読むのかも。


そう思えるくらいに、今日出会ったアイドルたちは青春そのものでした。いやー、アイドルって最高だね。



2023ねん6がつ25にち

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?