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2023.3.26 ロシアできつい酒を飲む理由 − 同化(侵食)・異化(吸引)の観点から。

 「ロシアなどの寒いところではアルコールを入れなければ“やっていられない”ところもある。ところが変われば効果も変わる(井上敬康. (2022).『求道』 p.35)」という、ふわっとした表現が非常に気になる。この点は、私も今まで何度も考えたことがあって、いま組み立てている「陰陽の同化と異化(侵食と吸引)」にまつわるんじゃないか。

 極寒のエスキモーが肉を食わなければいけない、つまり極寒という極陰の地域で、極陽(陽性)の肉を摂取することで、体が陰に引っ張られて行くのを止めて中庸にするというのは、非常に分かる。逆に赤道直下のアジアなど、熱帯地域の陽性が強い地域で陰性の果物(パパイヤ、マンゴー、バナナ、パイナップルなど)を摂取して陽性に体が引っ張られそうになるバランスをとる、というのも分かる。

 それにも関わらず、極寒の陰性(極陰)とされるロシアで、さらに陰性のアルコールをぶち込むというのが、前述のロジックでは説明がつかない。この点に関して、最初にも述べたように『求道』の著者・井上さんの師匠であった沖ヨガの沖さんも、「ロシアなど寒いところでアルコールを入れなければやっていられない」というふわっとした表現に着地している点は、腑に落ちない。これに関して、私なりのいくつかの考え方がある。

 一つ目は、陰陽や東洋的な発想ではなく、シンプルに体温上昇など、西洋医学的な観点からアルコールがもたらす効用によるところである。こちらも、大切である。

 二つ目は、陰極まって極陽に成った(もしくは成っている、ないし域値を彷徨っている状態)、それがロシアのケース。要は、極陰から極陽へポンと転化する・転化してしまっている、それをアルコールで引き止めようとしている。

三つ目が、これが最初に書いた陰陽の同化・異化の話であるが、エスキモーの極寒(極陰)や熱帯地域の陽性というのは、人間の体をそっち側に引っ張ろうとする。つまり、同化しようとする働きを持っていて、それを真逆の性質の食物で止めようとしている(これは上記の2点目の視点である)。しかし、ロシアのケースだけは、何故か環境が異化(引き出す)側になっているのではないか。つまり、極陰の地方・地域の気候性が、人間体内の陽性(極陽)を引っ張り出している。それを、アルコールをもって中和しようとしている、この考え方ができるんじゃないか。

 まとめると、陰性気候のロシアで陰性のアルコールを摂取するというマクロビオティック的には一見して矛盾に思える行為の理由は

  1. アルコールの持つ西洋医学的な働きが、東洋医学・東洋哲学的な作用よりも優先されている。

  2. ロシアの極寒が、極陰から転じて極陽になり、それに当てられたヒトが中庸を求めて陰性のアルコールを摂取する。

  3. 陰陽の同化・異化(侵食・吸引)の考えに基づき、ロシアのケースは異化(吸引)の力が働いている。したがって、人体の極陽性を引き出す構造となっており、これを中和するために陰性のアルコールを摂取する。

この3点が、仮説として考えられる。


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