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ママのクリスマス ジェ−ムズ・ヤッフェ~読書記録316~

安楽椅子探偵ママの第3弾。


いかにクリスマスだとはいえ、連日深夜までお祭り騒ぎをしてもよい、ということはないだろう。教会の騒音に悩む老夫婦は困り果て、ラビの勧めに従って、デイヴたちのところへ相談にやってきた。これが謎のダイイング・メッセージとユダヤ人差別を巡る難事件の幕開けだったのだ! 黄金時代を思わせるママの鮮やかな名推理!


主人公のデイヴィッド、その母はユダヤ系アメリカ人である。この作品はユダヤ教、キリスト教を少しばかり知らないと理解出来ないものかもしれない。
アメリカに於けるユダヤ系の人たちの置かれている立場が特にこの作品には表されていた。なんと理不尽なことだろう。
アングロサクソン民族でないと生きにくいという国でもあろう。
作者のヤッフェ自身もユダヤ系アメリカ人でないと、ここまで登場人物の気持ちを書けないだろう。

不動産取引で犯罪者となった女性は無神論者であった。
彼女のセリフには
「ビジネス上の駆け引き。その原理がアメリカを強くて自由な国にしている」
とある。
実に的を射ていると思った。
本当の資本主義はアメリカだけではないだろうか。と、時たま思う。政府が国民皆保険を保障するわけでもなく、お金のある人は素晴らしい治療が受けられ、貧しい者はあまり病院には行かない。
夫の転勤でアメリカに行った知り合いが「アメリカは熱が出ても病院には行かず、ドラッグストアで薬を買っている。日本人は病院にすぐ行くううう」
と言っていたが、彼女は日本に帰国すると、すぐに歯医者に行くのだ。
アメリカのようには日本はなれないだろう。

ママの推理により、最後には真犯人がわかり、無実の罪に陥れられてしまったユダヤ系アメリカ人のロジャーも晴れて、念願の就職先に。
そして、最後のママの独白により、キリストの額が倒されていた意味がわかる。

ジェームズ・ヤッフェのこの作品は順番に読んだ方がいいと、次の作品でわかるのであった。




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