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雪国 川端康成~読書記録355~

国境の長いトンネルを抜けると・・・で始まる川端康成の名作である。


ほんとうに人を好きになれるのは、もう女だけなんですから。
雪に埋もれた温泉町で、芸者駒子と出会った島村―― ひとりの男の透徹した意識に映し出される女の美しさを、抒情豊かに描く名作。
親譲りの財産で、きままな生活を送る島村は、雪深い温泉町で芸者駒子と出会う。許婚者の療養費を作るため芸者になったという、駒子の一途な生き方に惹かれながらも、島村はゆきずりの愛以上のつながりを持とうとしない――。冷たいほどにすんだ島村の心の鏡に映される駒子の烈しい情熱を、哀しくも美しく描く。ノーベル賞作家の美質が、完全な開花を見せた不朽の名作。

執筆は昭和12年だ。
舞台は新潟県越後湯沢。長いトンネルは、昭和6年に開通した群馬県と新潟県を結ぶ清水トンネルだ。
現在では、新幹線なら東京駅から1時間ほどで着いてしまう。



なんと言っても、文体が綺麗だ。情景が目に浮かぶように描かれていて、もう芸術の類だ。
例えば、群馬県と新潟県の県境の谷川岳の紅葉の様子とか。 紅葉と雪が同じ時期とかだ。


こちらが、川端康成が「雪国」を執筆した宿だ。


川端康成が雪国執筆で宿泊費した宿・高半は、ガーラ湯沢駅が近い。 駅員さんに聞くと、スキーシーズンに新幹線で行く路線しかないとのことであった。越後湯沢駅から川端康成は歩いたのだろう。
宿の近くにある諏訪社も作品の舞台の重要な場所だ。

女はふいとあちらを向くと、杉林のなかへゆっくり入った。彼は黙ってついて行った。
神社であった。苔のついた狛犬の傍の平な岩に女は腰を下ろした。
島村は杉の梢を見上げた。
その杉は岩にうしろ手を突いて胸まで反らないと目の届かぬ高さ、しかも実に一直線に幹が立ち並び、暗い葉が空をふさいでいるので、しいんと静けさが鳴っていた。
島村が身を寄せている幹は、なかでも最も年古りたものだったが、どうしてか北側の枝だけが上まですっかり枯れて、その落ち残った根元は尖った杭を逆立ちに幹へ植え連ねたと見え。なにか恐ろしい神の武器のようであった。
(本書より)



茅の花

茅の花が山を覆う情景。などなど。私的にはストーリー性を追うよりも、ここに行きたい!というイメージを抱かせるそんな本だ。
多分、書というのは個人的な感想が大きく、人それぞれの読み方で良いと思うのだ。


私が雪国の舞台を訪れたのは、紅葉のシーズンであった。
雪は苦手な私だ。絶対に滑って転ぶからだ。だが、雪の季節に来てこそ、越後湯沢はいいのだろうなと思うのだった。
というか、今度は高崎から水上に行き、上越線で越後湯沢に行こうと思うのであった。


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