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病院のスケッチ~読書記録224~

若草物語で有名なルイザ・メイ・オルコットの作品。谷口由美子先生が訳されている。


これは、小説ではなく、ルイザ・メイ・オルコット自身の体験を元にしている。主人公の名前は変えてあるが、若草物語に登場する姉妹たちのことだな、とわかるものである。

この本が書かれたのは、1863年。
当時のアメリカは、リンカーン大統領が奴隷制度反対を唱え、南北戦争の中にあった。


熱烈な奴隷制度廃止論者であったルイザは、自ら志願して従軍看護婦に。
病院で働き始めた。
けれども19世紀の病院は現代では考えられないほど不衛生で、オルコットはチフスにかかり、自宅に帰され療養することに。わずか、1か月ほどの勤務であった。

経済的な事情から収入が欲しかった彼女は、病院から家族への手紙を新聞に掲載することとなった。
それが反響を呼び、編集され単行本となったのがこの本になる。

ルイザ・オルコットの真剣な心が伝わってくる作品であった。
彼女が他者をどのように観ているのか。
本書にあるが、傷ついてベッドに横たわっている兵士にとり、看護婦は、母である、妻であり、姉妹である、と。
そのような気持ちで愛情深く看護にあたっていた様子が窺えた。

19世紀だから仕方ないことなのかもしれないが、30歳で、医学的知識も経験もなかった女性が看護婦勤務というのは・・・と考えてしまった。
又、不衛生な野戦病院のような状態では、やはり、感染症などのリスクは高いだろう。亡くなった人間がどういった菌を持っているかわからない。
キリスト教的な、聖書的な愛に基づいて、亡くなった人にキスをするとか、今の時代なら医師や周りのスタッフが止めるであろう。

黒人をどのような目で観るのか。この時代は、それを画策するアメリカ社会だったのだろう。

素晴らしい本であった。



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