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夏になると思い出す、【東京の山】の話

GWになりましたね。
円安、物価高騰で世知辛い世の中ですが、それでも休みはいいもんです。
気候もめっきり暖かく、というより暑くなって来ましたね。

暑くなってくると私はいつも、「山」を思い出します。

長いこと足が離れてしまっておりますが、実は私、20代中盤頃までまあまあの「アルピニスト」でした。
寒いのが苦手なアツい漢ですので、冬山はやりませんでしたが、夏山はかなりの数をこなした自信があります。
週末や連休シーズンの度に、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳、関東近郊の山々(奥多摩、奥秩父、谷川連峰…etc)へ、テントを担いで単騎、繰り出したものです。

夏山専門の私にとっては、GWの訪れはシーズン開幕の狼煙のようなものでした。
この時期はまだ高山には雪が残っています。
北アルプスなんかの高峰に不用意に踏み込むと、気まぐれに溶けた雪崩の洗礼を受けかねません。
そのため、自称アルピニストである当時の私は、いつもGWは奥多摩に行っていました。
特に、奥多摩は東京都最高峰、雲取山(2017m)が大好きでした。

奥多摩町は東京都の西のはずれ。
新宿から1時間半、都民の水瓶である奥多摩ダムが位置し、東京都とは思えない程、のどかな町です。水源地だけあり、実は本わさびの生産量が全国市町村第3位という意外な顔もあります。

電車に揺られ辿り着いたゆっくりと時が流れるこの町で、適当に調達したカロリー源をザックに押し込み、バスに乗り込むところから山旅は始まります。
登山口の標高は約840m、そこからコースタイム5時間をかけて、ゆっくり2,000mまで登っていくのです。

この季節の雲取山は新緑の季節です。
裾野の村には山桜が咲き誇り、雑草も色とりどりの花をつけています。
ミツ蜂やクマ蜂が気になるのはご愛嬌です。

中腹に差し掛かる頃には、いつの間にか杉木立に呑み込まれていることに気が付きます。
間伐の行き届いた林の中には、真直ぐな、垂直の陽光が差し込みます。

杉木立を尚も登ると、突然視界が開けます。
尾根筋に開かれた防火林帯に出るのです。この山域は山火事の延焼を防ぐ目的で稜線に沿って木が伐採されており、それがそのまま道となっています。
数時間木々の中を彷徨った後の登山者は皆、突然開けた空の青さにハっとさせられることでしょう。
ここまで来れば雲取山の頂はもうすぐです。
更に尾根筋を進むこと小一時間、雲取山の山頂に辿り着きます。

雲取山は見晴らしが兎に角、素晴らしい。
南には、丹沢山系、その向こうには富士山がその雄姿を惜しげもなく横たえます。
西には、青梅市を起点に遠く長野県・八ヶ岳まで伸びる、自然の万里の長城、「奥秩父主脈縦走路」が霞みます。
北には奥秩父山塊、うっそうと深緑が広がります。
そして、東にはこれまで歩いて来た尾根筋がどこまでも伸びています。

私の場合は、ここで秘蔵のビールをプッシュっ!
勿論帰りも油断禁物ですが、まあ何とかなるもんです。

書いていてまた行きたくなって来ましたが、何だか早起きとハードワークが億劫な今日この頃です。
まだまだ私も「若者」の端くれのつもりですが、確実にあの頃より歳を食ったみたいです。

でも近いうちに、体力任せに山に登ったあの頃よりも思慮深いアルピニストとして、山に復帰したいもんですね。

狭い部屋でそんなことに想いを馳せるGWの前半戦でした。

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