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さっそく読んでみた、岸田奈美さんの「海を隔てバズった母」です。

 下半身麻痺で車いすを使われるお母様の、車を運転される動画が国内外で話題になっているとの随筆。改良された車での事だそうですが、その乗り降りはどうされているのかと、私はさっそく動画を拝見。

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 不思議なほどに、自然ですね。運転席へ移った後の車いすをどうされるのかが気になっておりましたが、車への乗車後、まず背もたれを後ろへ倒しこんで上体を起こされ、車いすをたたんでは抱えて膝の上に乗せます。そして上体を後ろへ反らせるかたちで車いすを見事に後部座席へ積み込まれておられました。この車いすを抱えるお母様の事を、岸田奈美さんは《敬意をこめて「母ゴリラ」》と呼んでいたそうですが、この動画が500万回以上も閲覧されたという事に、私は、ああ、そうか、と思えました。”女性が車いすを抱え上げる” ”母ゴリラ” ”500万閲覧”とあるのを見て、まだ動画を見ていない人は、どんな動画かと思われるかもしれません。見てください。違った意味で衝撃的です。この動画へのコメントに《エレガント》という言葉が含まれていたそうですが、私もそう思いました。お母様はまず、膝の上に敷物をチャッチャと広げ、サッサと車いすをたたんで膝上へ持ち上げます。その一連の所作がまさに”エレガント”な雰囲気を醸しておられるのです。思えばこの動画に写っているのは、ちょっと車で買い物へ出かけた女性の姿でありました。ショッピングモールの駐車場でいつでも見かけそうな光景です。
 私が、そうか、と思ったのは、国内外で障害を持たれた方々のその理想の一つが、このような姿なのではないか、というものだったのです。

 障害を持たれた方々の生きやすい社会とは、どのような社会なのでしょう。例えば、バリアフリーや優先駐車場のような物質的な環境が整っていたとしても、記事に載っているような《前世で悪い事をした人たち》というような事を信じる人がいたら、外へ出られなくなるのは当然の事ですね。反対に物質的な環境が未整備でも生きやすい社会はあると思います。記事の後半で岸田奈美さんが書かれている、嬉しく思われた事。お母様が《なにやら使命感を持って、意気込んでいる》事が何か、ぜひ読まれてみてはいかがでしょうか。

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