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フライパンをもった猫③

「いただきまーす!」
ちょうどお腹が空いたころに猫が目玉焼きを作っていた。なんてよくできた夢。まぁ夢だから、都合がよくて当たり前かな。

ひとりじゃないご飯はどれくらい久しぶりだろう。
しかもこんなもふもふしてかわいい子と食べられるなんて最高かも。
あぁ、ずーっと居てくれないかなぁ。一生懸命に食べてる姿もかわいいなぁ。

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はじめてのパン。いつもいつも目玉焼きだけだったから。
ちょっと勇気を出して食べてみた。ふんわりして噛むとすぐつぶれる。なのに遠くにほんのり甘い匂いがする。お醤油を吸い込んで、目玉焼きも包み込んで、とってもやわらかい気持ちになる。おいしい。…かもしれない。

なんてうれしそうな顔でみてくるんだろう。久しぶりの感覚が胸に広がっていく。でも、この感覚を暴れさせちゃいけないって知っているんだ。あとからくるさみしさをぼくは知っている。だから何にも気にしない、気にしない。

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もうすこしここに居ようかと迷ったけれど、ぼくは行かなくてはいけないんだ。
それがぼくがやるべきことだし、それをやることがぼくの自信になっている。ってぼくは知っている。

今度こそ気づかれないように、コソっと出ていく。
一度入ったことのあるドアは簡単に通れるんだ。

さようなら、パンの人。


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