#152 老朽化する核の棺

太平洋のマーシャル諸島共和国にあるエニウェトク環礁には、直径約100mのコンクリ―製のドームがある。ドームはアメリカの核実験によってできたクレーターに放射能による汚染物質を閉じ込めてコンクリートを被せたもので、「核の棺(ひつぎ)」と呼ばれている。

かつてアメリカはマーシャル諸島で1946年から58年にかけて、67回の核実験を行った。実験場となったのは、第五福竜丸の被ばくの原因となったブラボー実験が行われたビキニ環礁と、核の棺があるエニウェトク環礁だ。

ビキニ環礁に比べて放射能汚染のレベルが低かったエニウェトク環礁は、退去させられた住民の帰還が可能であるとされ、環境整備のために土などの放射性廃棄物を1979年にクレーターに投棄し、厚さ約45㎝のコンクリートの蓋を被せた。

しかし、近年では放射性物質の流出が危惧されている。
2019年に国連事務総長がコンクリートドームから放射性物質が漏れ出ているとの懸念を表明した。コンクリートドームは設置40年が経過し、コンクリートにはひび割れが目立つようになってきている。
また、地球温暖化によって海水面が上昇すると、ドームに海水面が直接接する可能性がある。そうすると、放射能が海へ直接流失してしまう危険性がある。

核実験による被害は今でも残り続けている。

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【参考】


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